処方箋1回量併記、わずか15%‐現行ルール未だ遵守されず
厚労科研で中間報告
内服薬の処方箋記載方法について、厚生労働省保険局の通知でにもかかわらず、実際に処方箋に併記している医療機関は14.5%にとどまることが、厚生労働科学研究班「内服薬処方せんの記載方法標準化の普及状況に関する研究」(研究代表者:土屋文人国際医療福祉大学薬学部特任教授)の中間報告で明らかになった。既に病院情報システムやレセコンのベンダー企業は、1回量と1日量を併記するシステムを開発済みで、ほとんどの医療機関が通知を認識していたが、実際には対応が進んでいないことが分かった。研究代表者の土屋氏は「まず現行の保険上のルールを遵守することが必要」と話している。
調査は、処方箋の記載を1回量と1日量を併記する方法の普及状況について、全国の臨床研修実施病院1018施設、小児専門施設20施設を対象に実施した。回答率はそれぞれ57%、65%だった。その結果、2009年にまとめられ、処方箋への1回量記載を提言した「内服薬処方箋記載のあり方に関する検討会」の報告書を知っているか尋ねたところ、91.6%の医療機関が知っていると回答したが、処方箋の書き方に関して職員に周知活動を行っていない医療機関が63.7%に上った。その理由については、「実施する期限が定められていないから」との回答が38.5%と最も多かった。
ただ、既に厚労省の通知により、1回量と1日量の併記が義務づけられているのが現状。しかも、この事実を80.7%の医療機関が知っていたものの、実際に1回量と1日量を併記していたのは14.5%と1割強にとどまり、通知が遵守されていないことが明らかになった。8割以上の医療機関は、依然として1日量のみを処方箋に記載している実態が分かった。
その理由として、「システムが対応できていないから」との回答が76.2%と最も多く、今後1回量と1日量を併記する予定があるか尋ねたところ、「予定はない」と回答した医療機関が72.0%と7割以上に上った。その理由について、システム改造に費用がかかること、院内が混乱すること、周りの医療機関も実施していないこと、エラーが増加しないか不安であることなどが多く挙げられた。医療安全につなげるための処方箋記載方法の標準化が、かえって院内の混乱を招き、エラーが増えると危惧する声も多かった。
一方、1回量と1日量を併記している医療機関で、併記の仕方については「1回○錠(1日△錠)」との記載が81.9%と大半を占めた。1回量と1日量の併記のメリットについて尋ねると、80.6%が「確認しやすくなった」ことを挙げ、デメリットについては「1行が長くなり見づらくなった」が54.2%と最も多く、次いで「数字が混在するので間違いやすい」ことが挙がった。
これに対し、システムベンダーへの調査結果では、1回量と1日量を併記するシステムを開発済みの企業が56%に上ることが判明した。ただ、システムにおいても厚労省の通知を遵守している企業が25%あった一方、遵守せずに1日量のみを記載している企業が38%に見られた。
その理由について聞くと、「通知を知っているが、ユーザー(医療機関)から要求されたことがないため特に対応しなかった」との回答で、医療機関へのシステム開発状況についても、「医療機関から聞かれた場合のみ開発状況を知らせている」との回答が多く、ベンダー側は通知を遵守したシステムを開発しているものの、医療機関に知らせていないことが判明。医療機関側も通知を認識しているにもかかわらず、システムの開発状況を知らないために使用していない実態が浮かび上がった。
これら中間報告を受け、土屋氏は「通知で義務づけられている現行のルールが守られていない。まず通知を遵守することが必要」と求めている。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
厚労省の通知で内服薬の「1回量」と「1日量」を併記することが義務づけられている処方箋。実際にこれを併記している医療機関は、現状では14.5%に止まるということがわかりました。6割の医療機関が通知を認識しながらも、職員へ処方箋の書き方に関しての周知を行っていないなどのことが明らかになっています。