第55回 鶴原伸尚 先生
近年、かかりつけ薬局が地域の患者さんの服薬情報の一元的管理を行い、医療費の適正化に寄与することが求められています。多剤・重複投薬の防止や残薬解消への取り組み、患者さんの薬物療法における安全性・有効性を保つなど、地域のなかで薬剤師が活躍する機会はますます増えるでしょう。
今回は「地域に根差した薬局」の薬剤師として患者さんに寄り添い、健康維持や改善に貢献している鶴原伸尚先生にお話をうかがいました。全5回のシリーズです。
諸々の手続きや在宅医療に伴う日常業務が増えて、大変ではないですか?
日本薬剤師会が提供している「在宅服薬支援マニュアル改訂版」によると、在宅医療を実践するにあたって必要な書類は①届出関係、②薬局で必要な書類等、③その他、の3つに分類されます。
「①届出関係」に関わる書類は4種類あります。
届出内容 | 提出先 | |
---|---|---|
1 | 在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出 | 地方厚生(支)局 |
2 | 介護給付費の請求及び受領に関する届出 | 国保連合会介護保険係 |
3 | 居宅療養指導・介護予防居宅療養管理指導事務所の指定に係る記載事項 | 都道府県等の 介護保険担当部署 |
4 | 生活保護法等指定介護機関及び中国残留邦人等支援法指定介護機関指定申請書 | 都道府県等の 生活保護担当部署 |
「②薬局における書類等」は大きく4つに分けられます。
- ・運営規定の概要
- ・介護保険サービス提供事業者としての掲示
- ・訪問薬剤管理指導の届出を行っている旨の掲示
(患者さんと薬局がそれぞれ1通を所持する)
- ・重要事項説明書
- ・契約書
- ・訪問薬剤(居宅療養)管理指導の記録
- ・医師への報告書
- ・身分を証明するもの(名札など)
- ・運営規定
- ・薬学的管理指導計画書
- ・居宅療養管理指導サービス後の領収書
「③その他」の書類は2点あり、いずれも医師や歯科医師に発行してもらう書類です。
・訪問薬剤管理指導依頼書・情報提供書
・「訪問指示」が記載された処方箋など
このようにリストアップすると非常に数が多く見えますが、日々の業務で記載・記録が必要なものは②-3)にある「訪問薬剤(居宅療養)管理指導の記録」と「医師への報告書」のみです。
しかも、「訪問薬剤(居宅療養)管理指導の記録」は薬歴と分ける必要はないとされていますから、日々の業務においてデスクワークが大幅に増えたという実感はありません。
「①届出関係に関わる書類」は、届出先の管轄がそれぞれ異なるので少し大変かもしれませんが、在宅での薬物療法がうまくいかずに困っている患者さんは、今目の前にいます。まずは“やらず嫌い”を克服して、患者さんのために一歩踏み出してみませんか。
在宅医療というと、しばしば話題にのぼるのが「多職種連携」です。
多職種の方とうまく連携し、業務を遂行していけるのかが心配だという薬剤師の方も少なくないようですが心配は不要です。
どの職種の方も、胸に抱えているのは「患者さんのために」という思いです。私たち薬剤師も患者さんの健康維持と改善のために、来局では難しくなった薬物療法を在宅でフォローしていこうと立ち上がったチームの仲間です。たとえば当薬局の場合、訪問看護師さんやケアマネジャーさんに患者さんの様子、状態でわからないことがあれば、確認のためわざわざ薬局まで足を運んでくれています。
「患者さんのために、患者さんが喜んでくれることをする」という共通の想いを忘れずに業務を続けていれば、自然と連携がとれるようになるでしょう。
患者さんから頼りにされる薬局薬剤師を目指し、患者さんへの医療機関の紹介、ノルディックウォークの普及を行う。在宅医療などの取り組みを通し、薬剤師と患者さんの間に「ありがとう」の言葉が飛び交う薬局として、地域医療に貢献している。