医療費

抗癌剤を年3億円以上廃棄‐DVO実施でコスト削減効果

薬+読 編集部からのコメント

国立がん研究センター中央病院の薬剤部と、慶應義塾大学大学院の調査によって、注射用抗癌剤は単回使用バイアルの複数回使用(DVO)を実施することで廃棄率や薬剤使用量等のコスト削減につながることが明らかになりました。現在、薬価ベースで廃棄金額が最も多きい薬は「ベバシズマブ」。約6000万円にも達しているということです。

国がんセ・慶大調査

 

バイアル単位で保険請求されている注射用抗癌剤の廃棄金額を薬価ベースで算出したところ、1年間で総額3億3862万円に上ることが、国立がん研究センター中央病院薬剤部と慶應義塾大学大学院経営管理研究科の調査で明らかになった。国のがん医療の拠点である同院における抗癌剤廃棄率は8.9%、廃棄金額が最も大きかったのはベバシズマブで約6000万円に達した。さらに、注射用シクロホスファミドについて単回使用バイアルの複数回使用(DVO)を実施した結果、3カ月で廃棄率が0.5%減少し、薬剤使用量等のコスト削減につながったことが分かった。


 

高額薬剤の問題が大きな議論となっている中、日本では抗癌剤の薬剤費請求が実際の使用量ではなく、バイアル単位で行われているため、廃棄分が医療費の無駄になっている可能性が指摘されてきた。こうした状況を受け、同院では注射用抗癌剤を調製した時の廃棄状況を調査すると共に、日本では導入されていないDVOを実施し、その運用方法や経済的効果を検証した。

 

同院で2014年11月から昨年10月までの1年間に調製したバイアル製剤の注射用抗癌剤61剤について、調製件数、使用バイアル数、薬価ベースの使用金額と廃棄金額を算出した。その結果、調製した総件数は5万4168件、使用バイアル数は14万4287バイアル、1件当たりの平均使用バイアル数は2.7バイアルとなり、使用金額は総額38億2521万円、そのうち廃棄額は総額で3億3862万円、廃棄率は8.9%に上ることが明らかになった。

 

廃棄金額が多かった薬剤を見ると、最も多かったのがベバシズマブで約6000万円に達した。次いでニボルマブで約4000万円、オキサリプラチンとエリブリンが約2000万円などとなった。また、廃棄率で見たところでは、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、アクラルビシンが30%台後半と高く、ブスルファン、アザシチジンが続いた。高薬価の分子標的薬、新薬で廃棄金額が高く、廃棄率は化学療法剤で高い傾向がうかがえた。

 

一方、同院では、今年4月から6月までに調製した抗癌剤シクロホスファミドについて、単回使用のバイアルを閉鎖式接続器具(CSTD)により複数回使うDVOを実施し、注射用抗癌剤の廃棄量を減らせるかどうか検証した。DVOに当たって、シクロホスファミドは全て500mgバイアルに統一。CSTDを用いて調製し、溶解液を分割使用する場合の使用期限は調製の同日中とした。薬剤費の保険請求はバイアル単位ではなく、薬剤の使用量単位として検討を行った。

 

その結果、今年4~6月までシクロホスファミドの調製を行った570件において、バイアルを複数回使うDVOを実施した場合、DVOを実施しなかった場合に比べて使用金額は使用量単位で13万4841円、廃棄金額は8532円減少したことが分かった。廃棄率としては0.5%とわずかに減少した。また、調製に使ったCSTD数は1231個と、DVOを実施しなかった場合に比べて368個減少し、46万7360円相当の削減につながった。

 

研究グループは、DVO導入の検討結果を踏まえ、「シクロホスファミドの廃棄率はわずかに減少させる程度だったが、薬剤使用量やCSTD数の減少により、病院コストの削減ができた」と分析。年間約208万円の経済的効果が得られたとの推計を示した。

 

その上で、DVOを導入し、抗癌剤の使用量に応じて薬剤費の保険請求を行う場合、廃棄分は病院負担となることから、運用の工夫などにより廃棄量をできる限り減少させる必要があると課題を指摘した。

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出典:薬事日報

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