薬剤師のためのお役立ちコラム 更新日:2023.05.30公開日:2021.03.16 薬剤師のためのお役立ちコラム

薬剤師の仕事がつまらないと感じる理由とやりがいを見つけるポイント

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

新卒で薬剤師として就職したばかりの頃は、やる気いっぱいだったのに、今はなんだか疲れがち。「薬剤師の仕事がつまらない」と感じることがあるかもしれません。どんな仕事でも単純作業の繰り返しで毎日に刺激がないと、仕事がつまらなく感じてしまうものですが、実際のところ、薬剤師の仕事は簡単な単純作業ではありません。にもかかわらず、どうして「つまらない」と感じてしまうのでしょうか。今回は、薬剤師の仕事が「つまらない」と感じてしまう理由とその解決方法についてお伝えします。

1. 薬剤師の仕事が「つまらない」と感じる理由とは

薬剤師として働くうちに、仕事が「つまらない」と感じてしまう可能性は誰にでもあります。では、なぜそんな風に感じてしまうのでしょうか。まずは、よくある理由として代表的なものを見てみましょう。

 

1-1. 今の職場にやりがいを感じられなくなった

薬局や病院で働く薬剤師は仕事に慣れてくると、調剤業務などの作業を繰り返しの多い単調な作業に感じる可能性があります。調剤を「医師の指示通りに薬を集めて患者さんに渡すこと」と捉えると、やりがいを感じることは難しいかもしれません。

 

ドラックストアの業務では、お客さんの症状に合わせて薬を提案するカウンセリング業務や生活用品などの補充・発注といった仕事があります。カウンセリング業務で自分の知識を生かそうとドラックストアに就職した薬剤師の中には、大学で学んだ知識を生かせる機会が少ないため、仕事がつまらなく感じてしまうことがあるでしょう。

 

1-2. 単調な作業に飽きる

薬局で働く薬剤師は、処方せんを見ながら薬の用法用量や相互作用、副作用などをチェックし、患者さんの症状や生活習慣などに合っているかを確認する……といった流れで仕事を進めます。さらに患者さんのアドヒアランスを向上できるよう個々に合わせた服薬指導を行うなど、自分の知識と経験を最大限使う高度な仕事です。

しかし、こうした業務は基本的に「調剤・鑑査・服薬指導」の繰り返しです。処方せん枚数や診療科の種類が多い職場であれば、飽きることはないかもしれませんが、処方せん枚数が少ないうえに同じ診療科の処方せんを毎日のように見ていると、単純作業に感じてしまうことがあるかもしれません。

 

1-3. 働いている環境に問題がある

職場の人間関係が悪くストレスを抱えていると、気疲れから仕事に集中できないことがあります。同僚の仲を取り持つような立場であると、業務以外にも考えることが増えてしまい、純粋に仕事に打ち込めないこともあるでしょう。職場でのストレスが原因で肉体的にも精神的にも疲れてしまうと、毎日の業務をこなすだけになってしまい、薬剤師の仕事が「つまらない」と感じるかもしれません。また、自分の努力や結果を正当に評価されないことも仕事が「つまらない」と感じてしまう要因になります。

 

1-4. 薬剤師の地位が低いと感じる

国家資格を持つ薬剤師は社会的な信用度が高い職業です。しかし、医療にかかわるほぼすべての権限が医師にある日本では、薬剤師の地位が低いように感じてしまうことがあります。本来、調剤で行う一包化やジェネリック医薬品への変更、薬の粉砕なども、薬剤師の専門知識が不可欠であり、慎重な判断が求められる高度な業務です。しかし、そうした業務のすべてを医師の指示のもとで行うことが前提になっています。医療における決定権が少ないことで、仕事に価値を見出せず、薬剤師の仕事が「つまらない」と感じてしまうこともあるでしょう。

2. 「薬剤師はつまらない」という気持ちを解消するための方法

薬剤師としての仕事に価値を感じるポイントは人によって異なります。ここでは薬剤師が「つまらない」という気持ちを解消するための方法について考えてみましょう。

 

2-1. 患者さんに近い存在を目指す

患者さんの中には、薬が必要な時だけでなく体調の変化や気になることがある時にふらっと薬局に立ち寄る人がいます。「病院に行くほどではないけれど専門家に聞きたい」「医師には聞きづらいから相談したい」など来局の理由はさまざまです。こうした患者さんに喜んでもらい、些細なことでも頼れる存在になれば、薬剤師としての存在価値を見出すことができるでしょう。

 

患者さんに近い存在になるためには、信頼関係を築くことが大切です。信頼を得るためには、まずは患者さんの話を最後まで聞くこと。相手の話を途中で遮らず、目線を合わせながら相槌をいれて聞くことで、患者さんに安心感を与えます。そうしたやり取りを繰り返せば、患者さんとの信頼関係も高まります。自然と患者さんに近い存在になれるでしょう。

 

 

2-2. 患者さんの本音を聞き出す

患者さんとの信頼関係が築けていると、医師には言いにくい話を薬剤師だけにそっと話してくれることがあります。特に残薬に関することは医師に伝えにくいようです。飲まない理由を詳しく聞いてみると、副作用を不安に感じていたり、生活スタイルと用法が合っていなかったりするなど、患者さんなりの考えがあることがわかります。患者さんの本音が聞けるのは、薬剤師を親しく感じ、信頼してくれるからこその結果です。

薬剤師は患者さんにとって「他人に話しづらい本当の悩み」を相談できる相手の1人です。患者さん自身のことや家族のこと、友人のことなど薬に関すること以外にも相談されることもあるでしょう。患者さんの悩みを積極的に聞き、自分のアドバイスで解決する機会が増えると、薬剤師が「つまらない」という気持ちも薄れていくのではないでしょうか。

 

2-3. 上司や先輩に相談してみる

先輩や上司の薬剤師の中には、自身と同じように仕事が「つまらない」と感じた経験がある人もいるはずです。同じような悩みを乗り越えて薬剤師を続けているかもしれません。仕事が「つまらない」と感じたら、先輩たちにやりがいを見つける方法やモチベーションを保つ方法など具体的に相談してみるのも一案です。また、上司や先輩に相談しながら、具体的な目標や夢を設定することで、仕事のやりがいを見出すのもよいでしょう。さまざまな視点からアドバイスをもらえると、薬剤師が「つまらない」という気持ちを解消できるかもしれません。

 

 

2-4. 医療従事者と信頼関係を築く

さまざまな医療従事者と関わり信頼関係を築くことで、仕事が「つまらない」と感じる頻度が減る可能性もあります。薬剤師は同僚をはじめ、医師や看護師、管理栄養士、理学療法士、ケアマネージャーといったさまざまな立場の医療従事者と連携し、患者さんの改善に向けたチーム医療に参加します。多職種連携において、薬剤師は薬のプロフェッショナルとしての働きが期待されます。薬に関する知識と経験を常に蓄積し続けながら、「この人に薬のことを聞けば安心」という存在になることができれば、医療従事者から頼りにされる機会が増えて、自身にとっての仕事の価値が高まるとともに、「つまらない」と感じるヒマがなくなるくらい充実した仕事になるかもしれません。

また、医療従事者との関わりは、新しい知見を得るきっかけにもなります。他職種の仕事を学ぶことで、薬剤師にはない視点を身につけられるだけでなく、仕事に楽しみを見出す機会が得られるかもしれません。

 

相手の仕事内容や状況を把握しながら、薬剤師の視点で積極的に情報を提供することで次第に信頼関係を築けるようになり、薬剤師の仕事に意義を感じるようになる可能性は十分にあります。

 

2-5. さらなる年収アップを目指す

スキルや経験を積んで年収アップを目指すことも、モチベーションを保つ方法の1つです。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(令和元年)によると薬剤師の平均年収は561.6万円(※)です。国税庁「民間給与実態統計調査」(令和元年分)によると、給与所得者全体の平均給与(賞与等特別手当を含む)は436万円でしたので、給与所得者全体と比べて高水準であることがわかります。雇用も安定しているため、現在の年収に満足している人もいるでしょう。しかし、今後、結婚や出産、介護などのライフイベントで一時的に休職する可能性もあります。子育てや介護との両立のために、パートや時短勤務を選んで復帰すると、正社員より収入が下がるかもしれません。

 

ただ、こうした状況においても、自身の経験やスキルによって収入アップを目指すことが可能なのが薬剤師です。例えば、経験を活かして専門薬剤師や認定薬剤師などの資格を取ることで、社内勉強会の講師を務めたり、責任者に任命されたりする機会が生まれるかもしれません。スキルや経験を積むことの先に年収アップという目的を持つと、仕事が「つまらない」と感じにくくなるのではないでしょうか。

 

3. 薬剤師が「つまらない」という気持ちを変えるためには行動を起こすことが大切

薬剤師が「つまらない」という気持ちを変えるためには行動を起こすことが大切です。具体的な「行動の起こし方」をまとめました。

 

3-1. まずは今の職場でできることを始める

まずは、現職で仕事の価値を見出せるポイントがあるかを探してみてはどうでしょうか。例えば、調剤薬局で受け付けた処方せんがいつもと同じパターンに見えたとしましょう。しかし、患者さんごとに生活スタイルなどの背景は異なります。夜勤のある仕事だったり、朝食を摂らない食生活だったり、症状もライフスタイルもさまざまです。こうした背景から、同じ疾患でも医師は用量や用法を微妙に変えていることがあります。その違いに気が付くことや、反対に違いがないことに疑問を持つことは、「つまらない」と感じることから脱却する第一歩です。

 

またドラックストアでは薬の知識だけでなくマーケティングの知識やノウハウを磨くという行動をとるのも良いでしょう。売れ筋商品の特徴から、売れにくい商品を売るための方法を考えてみたり、マーケティングの勉強をしたりすることで日々の仕事の中にやりがいを見出せるかもしれません。

このように、目の前の仕事に対して掘り下げてみたり別の視点で考えてみたりすることで、自分が本当にやりたいことや関心のあることに気が付くこともあります。自分の興味の方向性に気が付くことが、将来のキャリアデザインにも役立ちます。

 

 

3-2. 職場を変える

店舗や部署を異動することで、新たなやりがいを見つけるのも一案です。同じ業務内容だったとしても、働く環境が変わるだけで仕事が「つまらない」という気持ちが変化するかもしれません。例えば、地域の薬局から大きい病院の門前薬局への異動では、処方内容も患者さんの層も様変わりします。スタッフや細かい店舗内ルールも変わるので、やりがいを感じるポイントが見つかる可能性があります。

 

色々考えたり、行動したりしたうえで、それでもやっぱり仕事が「つまらない」と感じるなら、転職も一案かもしれません。他職種連携でチーム医療に取り組みたいなら病院薬剤師や在宅医療に力を入れた調剤薬局を、薬の開発に関わりたいと感じたのなら製薬企業への転職を目指すなど、目的を決めて職場を変えればモチベーションも高まります。やりがいを感じられる職場を見つけるためにも、まずは今の職場で、どんなことにやりがいを感じているのか、もしくは、仕事が「つまらない」と感じる理由は何なのかを、具体的に考えてみましょう。

4. 薬剤師の仕事が「つまらない」と感じる理由を明確にしよう

忙しい毎日のなかで、仕事をこなすことだけが目的になってしまうことがあります。業務を淡々とこなしているだけでは薬剤師の仕事が「つまらない」と感じてしまうかもしれません。そんな時は、誰かに相談したり、視点を変えたり、環境を変えたりすることで、仕事に対する考え方が変わるかもしれません。まずは、「つまらない」と感じる気持ちを分析し、解決方法を探してみてはいかがでしょうか。

※薬剤師の年収額は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和元年)のデータをもとに「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出しています。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。