薬剤師のためのお役立ちコラム 更新日:2024.07.17公開日:2024.07.10 薬剤師のためのお役立ちコラム

地域連携薬局とは?認定基準や地域支援体制加算の算定要件との違いを解説

文:篠原奨規(薬剤師)

2021年8月に都道府県知事による薬局の認定制度が開始されました。患者さんが自身に合う薬局を選びやすいように、各薬局が有する機能や特徴を分かりやすく示すことを目的としています。そのひとつとして創設されたのが、地域の医療機関や介護施設と連携する「地域連携薬局」です。本記事では、地域連携薬局の概要や認定基準、認定を受けるメリットについて解説します。また、2024年度調剤報酬改定における地域支援体制加算の算定要件との違いについてもお伝えします。

1.地域連携薬局とは?

地域連携薬局とは、患者さんの外来受診時や在宅医療の対応時、入退院時などあらゆるケースにおいて、医療機関との服薬情報の一元的かつ継続的な情報連携に対応できる薬局のことです。
 
2021年8月に開始された認定薬局制度のひとつであり、高度な薬学管理機能を持つ薬局として認定される「専門医療機関連携薬局」とともに新設されました。
 
医療機関のほかにも、患者さんの生活に関わる介護施設や他薬局と連携を取り、患者さんの生活や健康を支えるのが大きな目的です。
 
地域連携薬局に認定された薬局は、薬局内の見やすい場所や薬局の外側に認定薬局である旨の掲示を求められるほか、各都道府県のウェブサイトでも公表されます。
 
なお、国が推進している認定制度ではありますが、2024年6月時点で、地域連携薬局の認定を受けたことで新たに算定できる加算はありません。
 
参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)|厚生労働省
参照:地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局の認定基準に関するQ&Aについて (令和5年3月31日一部改正)|厚生労働省

 
🔽 専門医療機関連携薬局について詳しく解説した記事はこちら

 

1-1.かかりつけ薬局との違い

「かかりつけ薬局」と「地域連携薬局」はどちらも患者さんの服薬情報を一元的・継続的に把握する仕組みという点では同じです。患者さんや地域の医療の質向上のために、国が推進している取り組みのひとつですが、認定の必要性の有無などが異なります。
 
「かかりつけ薬局」は自治体などから認定を受けるのではなく、患者さんから「かかりつけ薬局」として認められる必要があります。厚生労働省が作成した「患者のための薬局ビジョン」によると、かかりつけ薬局には以下のような機能が求められています。

 

● 服薬情報の一元的・継続的把握
● 24時間対応・在宅対応
● 医療機関等との連携

参照:患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~|厚生労働省

 

上記の機能を活用して薬に関する相談や悩みに応え、患者さんにかかりつけに指定されるのが「かかりつけ薬局」です。
 
一方で、地域連携薬局は各都道府県知事による認定制度において認められた薬局という違いがあります。

 
🔽 かかりつけ薬局について詳しく解説した記事はこちら

 

1-2.健康サポート薬局との違い

健康サポート薬局は、かかりつけ薬局としての基本的な機能を備えるとともに、地域住民の主体的な健康の維持・増進を支援する薬局です。
 
地域連携薬局との違いとしては、要件として健康相談や健康サポートなどの対応が求められる点が挙げられます。薬に関することだけではなく、サプリメントや健康食品、介護用品など、患者さんからの健康に関わるあらゆる相談に応じます。
 
なお、地域連携薬局と同じく、必要に応じて医療機関と連携することもあります。
 
参照:健康サポート薬局のあり方について|厚生労働省
参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について|厚生労働省

 
🔽 健康サポート薬局について詳しく解説した記事はこちら

2.地域連携薬局の認定基準

薬剤師として、地域連携薬局の認定基準についても確認しておきましょう。厚生労働省が発行した「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)」をもとに、知っておくべきポイントをお伝えします。

 

2-1.構造設備

地域連携薬局に認定されるためには、患者さんが安心して薬剤師に相談したり、服薬指導を受けられたりするように、薬局内の設備を整えなければなりません。
 
具体的には、患者さんが座って服薬指導を受けるための椅子を設置する必要があります。常設する必要はありませんが、状況に合わせて椅子を提供できることや、座って服薬指導を受けられることを患者さんへ周知しなければなりません。
 
また、相談内容が他の患者さんに聞こえないように、カウンターを仕切るためのパーティションなどの設置が必要です。加えて、相談できるスペースを十分に確保したり、ほかの患者さんの待合スペースからカウンターまでの距離を空けたりといったプライバシー面への配慮が求められます。
 
さらに、薬局は高齢の患者さんや体が不自由な方でも安心して利用できるよう、バリアフリーを取り入れた構造設計にしなければなりません。「手すりは設置されているか」「薬局の入口に段差はないか」といった視点を持ち、誰でも利用しやすい構造にする必要があります。

 

2-2.利用者の薬剤等の使用に関する情報を他の医療提供施設と共有する体制

地域連携薬局では、地域のチーム医療・介護に貢献するための活動として「地域包括ケアシステムの構築に資する会議」への参加が求められます。
 
地域包括ケアシステムとは、地域住民の方が重度な要介護状態になっても住み慣れた場所で自分らしい暮らしを続けられるように、行政や医療機関が一体的に住まい・医療・介護・予防・生活の支援を行える体制を指します。具体的には下記の会議が該当します。

 

● 介護保険法(平成9年法律第123号)第115条の48で規定され、市町村又は地域包括支援センターが主催する地域ケア会議
● 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第9号で規定され、介護支援専門員が主催するサービス担当者会議
● 地域の多職種が参加する退院時カンファレンス

 

また、他の医療機関と連携するために、患者さんの情報を都度報告・連絡できる体制を整えなければなりません。患者さんが入退院する時や在宅医療を行う時に、どのような方法で、どういった内容を報告するのかについて医療機関とあらかじめ取り決めを行ったり、地域の薬剤師会が発行する報告用文書の様式を確認したりする必要があるでしょう。
 
認定申請に当たって、医療機関との連携体制を構築した上で、患者さんの情報を報告・連絡した実績も求められます。認定申請を行う前月までの過去1年間において、薬局薬剤師から医療機関で勤務する薬剤師などに対して下記の内容に関する実績が月平均30件以上必要です。

 

● 利用者の入院に当たって情報共有を行った実績
● 医療機関からの退院に当たって情報共有を行った実績
● 外来の利用者に関して医療機関と情報共有を行った実績
● 居宅等を訪問して情報提供や指導を行い、その報告書を医療機関へ提出して情報共有を行った実績

 

ただし、医療機関が行う血液検査等の検査値のみの報告や患者情報を含まない薬局の施設などに関する情報提供、処方箋調剤における疑義照会は本実績に含まない点に注意しましょう。
 
さらに、地域連携薬局では、他薬局に対する患者情報の連絡方法を明確にしておく必要があります。普段自局を利用している患者さんが他薬局を利用した場合でも薬を適切に使用できるよう、他薬局と事前に打ち合わせをして連絡方法を決めておきましょう。
 
参照:地域包括ケアシステム|厚生労働省

 

2-3.地域の利用者に対し安定的に薬剤を供給するための調剤及び薬剤の販売業務体制

地域連携薬局はさまざまなケースにおいて薬剤を安定供給する役割を担っており、そのための業務体制を整えなければなりません。
 
例えば、開店時間外において患者さんから相談を受けられる体制や、休日・夜間でも調剤応需ができる体制を整える必要があります。ただし、休日・夜間の調剤応需体制については、自局だけではなく他薬局と連携してもよいとされています。
 
また、麻薬や無菌製剤の調剤を行える体制も必要です。無菌製剤の調製を行う設備がない薬局であっても、他薬局の無菌調剤室を利用する「共同利用」の手続きを行えば体制が整っているものと見なされます。
 
加えて、地域連携薬局で従事する薬剤師の半数以上は、継続して1年以上常勤(週当たり32時間以上勤務)としてその薬局で従事している必要があります。さらに、常勤薬剤師は健康サポート薬局に係る研修を修了していなければなりません。
 
常勤薬剤師以外であってもその薬局で従事する薬剤師であれば、地域包括ケアシステムを理解した上で調剤業務を行うことが求められており、研修を毎年継続的に受講する必要があります。
 
参照:無菌調剤室の共同利用について|福島県薬剤師会

 

2-4.居宅等における調剤及び指導を行う体制

地域連携薬局の認定には、在宅医療を行った実績が必要です。認定申請を行う前月までの過去1年間において月平均2回以上、在宅医療を行っていなければなりません。
 
複数の患者さんが入居している施設で複数名に指導した場合や、1人の患者さんに対して同じ日に複数回訪問した場合であっても、本実績においては1回として計上されることに注意しましょう。
 
参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)|厚生労働省

3.地域支援体制加算の算定要件との違い

地域支援体制加算は、かかりつけ薬局としての役割を果たし、地域医療に貢献する薬局を評価するために2018年度の調剤報酬改定から創設されました。地域連携薬局と地域支援体制加算はどちらも地域医療への貢献を評価する点では共通していますが、要件にはいくつかの違いが見られます。
 
例えば、2024年度に改定された地域支援体制加算の施設基準では、一定時間以上の開局時間を確保する必要がありますが、地域連携薬局の認定には開局時間に関する要件は求められていません。
 
また、地域医療に貢献する体制を有することを示す実績要件にも違いが見られます。地域支援体制加算の算定要件としては、以下に示す実績の年間回数が定められています。

 

● 夜間・休日等の対応実績
● 麻薬の調剤実績
● 重複投薬・相互作用等防止加算等の実績
● かかりつけ薬剤師指導料等の実績
● 外来服薬支援料1の実績
● 服用薬剤調整支援料の実績
● 単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績
● 服薬情報等提供料に相当する実績
● 小児特定加算の算定実績
● 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議への出席

参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
 
地域支援体制加算を算定している薬局であっても、施設基準や実績要件が異なるため、地域連携薬局の認定を目指す場合には認定基準を満たしているか確認する必要があるでしょう。

 
🔽 地域支援体制加算について詳しく解説した記事はこちら

4.地域連携薬局の申請方法

地域連携薬局の認定を受けるためには、先述した認定基準を満たした上で認定申請を行います。申請書とともに、図面や写真、許可証の写しなどを添付した認定基準適合表を提出します。注意事項をよく確認し、必要書類を漏れなく用意しましょう。
 
また、認定申請には手数料が必要です。都道府県によって金額が異なるため、ウェブサイトで事前に確認しておくとよいでしょう。
 
参照:地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局|東京都健康安全研究センター

5.地域連携薬局の更新方法

地域連携薬局の認定を継続して受けるためには、認定有効期限の2カ月前から有効期限までの間に更新申請を行う必要があります。認定期間は認定を受けてから1年間です。
 
更新申請には認定申請と同様、申請書や認定基準適合表、診断書が必要となるため、提出期日直前に焦らないように早めの準備を心がけましょう。

6.地域連携薬局のメリット

地域連携薬局に認定されることで得られる、薬局のメリットと患者さんのメリットをお伝えします。

 

6-1.薬局のメリット

地域連携薬局の認定を受けることで、他薬局との差別化につながります。地域連携薬局に認定されると、薬局内の見やすい場所や薬局の外側に認定薬局である旨の掲示をしたり、都道府県のウェブサイトに地域連携薬局として公表されたりします。
 
その結果、患者さんや医療機関から地域医療に積極的に関わっている薬局と評価され、在宅医療や麻薬調剤で困っている患者さんなどに利用してもらいやすくなるでしょう。

 

6-2.患者さんのメリット

地域連携薬局はさまざまな調剤応需体制が整っているため、麻薬処方箋を受け取った時や休日に調剤が必要になった場合などの緊急時でも患者さんが処方箋調剤を受けられます。
 
また、医療機関と薬局間の連携体制が構築されている地域連携薬局では、医師と薬剤師が連携して患者さんが抱える治療への不安や悩みをフォローします。病気に対して不安を抱える患者さんや副作用を心配する患者さんであっても、安心して薬物治療を受けやすいでしょう。

7.地域の医療機関との連携体制を構築して、地域連携薬局の認定を目指そう

地域連携薬局とは、患者さんの服薬情報について一元的かつ継続的に情報提供を行い、地域の医療機関や介護施設と連携する薬局のことです。認定要件にあるようにさまざまな調剤応需体制や医療機関との連携体制を整えることで、患者さんは安心して薬物治療を受けられます。患者さんから選ばれる薬局になるために、地域連携薬局の認定を目指しましょう。


執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。

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