薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2024.08.27 薬剤師のためのお役立ちコラム

処方箋の期限はいつまで?期限切れのときの対応や延長・再発行について解説

文:篠原奨規(薬剤師)

処方箋には期限があります。処方箋とは、治療に必要な薬の種類や量、飲み方について記載したものです。有効期限を知らずに放置してしまうと、患者さんはスムーズに処方薬を受け取れなくなります。期限切れの処方箋を持参されて、困ってしまった経験がある薬剤師もいることでしょう。本記事では、処方箋の期限や期限切れのときの対応について解説します。また、処方箋の期限延長や処方箋の再発行の可否、期限切れを防ぐための取り組みについてもお伝えします。

1.処方箋の期限はいつまで?

処方箋の期限は、原則交付の日を含めて4日以内です。例えば、4月1日に交付された処方箋の場合、4月4日までに薬局へ持参する必要があります。期限を過ぎてしまうと、その処方箋は無効となります。無効となった処方箋を持参しても、薬局から薬をもらうことはできません。
 
参照:処方箋の使用期間にご留意ください|厚生労働省
参照:保険医療機関及び保険医療養担当規則 第二十条(診療の具体的方針)|e-Gov 法令検索
 
なお、使用期間には、土日や祝日など医療機関や薬局が閉まっている日を含みます。特にゴールデンウィークや年末年始といった連休中は、多くの医療機関や薬局が閉まっているため、注意が必要です。
 
併せて注意しておきたいのが、ネット受付による期限切れです。近年では、薬局へ行く前に処方箋の画像を送信しておくことで薬を受け取るまでの待ち時間が短縮される、処方箋のネット受付が普及しています。子連れの方や薬局での感染が気になる方を中心に、利用している方も多いのではないでしょうか。
 
ネット受付を利用した場合、処方箋の画像を送信した日を薬局での受付日と考えがちです。しかし、実際は処方箋の原本を薬局へ持参した日が受付日となります。事前にネット受付を利用していても、有効期限内に処方箋の原本を薬局へ持参する必要があるため、注意しましょう。

 

1-1.リフィル処方箋の期限はいつまで?

リフィル処方箋とは、上限回数を3回として、定められた期間内に繰り返し使用できる処方箋のことです。日本では、2022年度の診療報酬改定から導入されました。
 
症状が安定していれば病院を受診せず、薬局にリフィル処方箋を持参するだけで薬がもらえるため、通院の負担が軽減されます。ただし、使用期間が特殊な点に注意が必要です。
 
リフィル処方箋は処方医の指示によって、使用回数が決められています。1回目の期限は通常の処方箋と同様に、交付日から4日以内です。2回目以降の使用期間は、原則として前回の調剤日から当該調剤に関する投薬期間が経過する日を次回の調剤予定日とし、その前後7日以内とされています。
 
参照:外来医療の強化・機能分化|厚生労働省

 
🔽 リフィル処方箋について解説した記事はこちら

 

1-2.電子処方箋の期限はいつまで?

電子処方箋とは、これまで紙で運用していた処方箋を電子化したものです。2023年1月より運用が開始され、システム導入が完了した医療機関や薬局が徐々に増えています。
 
電子処方箋では、医師が「電子処方箋管理サービス」と呼ばれる共有システムに処方情報を登録し、そのデータを患者さんが受付した薬局の薬剤師がダウンロードして調剤します。患者さんに紙の処方箋は交付されず、マイナンバーカードか健康保険証と引き換え番号を薬局に提示すれば薬を受け取れるため、処方箋を紛失するリスクがなく、これまで以上に調剤を受けやすくなります。
 
ただし、電子処方箋の期限も紙の処方箋と同じく、交付日を含めて4日以内です。薬の受け取り忘れには注意が必要です。
 
参照:電子処方箋の運用開始日について|厚生労働省
参照:電子処方せん(国民向け)|厚生労働省

 

1-3.分割調剤の期限はいつまで?

分割調剤とは、処方箋に記載された投与日数を分割して薬を受け取れる調剤方法のことです。一例として、以下のようなケースで分割調剤を受けられます。

 

● 医師から分割指示がある場合
● 処方薬の長期保存が困難な場合
● 先発医薬品を初めて後発医薬品に変更して調剤を行う場合

 

分割調剤の1回目は通常の処方箋と同じ期限ですが、2回目以降の期限はやや複雑なため注意が必要です。
 
2回目以降の調剤では、「使用期間の日数(処方箋の交付日を含めて4日を超える場合は4日)と処方日数との和」から、「1回目調剤日から起算して次の調剤日までの日数」を差し引いた日数を超えて調剤することはできません。例えば、4月3日に交付された10日分の処方箋で4月4日に5日分受け取った場合、残り5日分すべてを受け取るためには、4月12日までに受け取りに行く必要があります。
 
来局日を間違えてしまうと全量を受け取れない可能性があるため、薬局に次回の来局日を確認しておくとよいでしょう。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 
🔽 分割調剤について解説した記事はこちら

 

1-4.処方箋に期限がある理由

処方箋に期限がある理由は、患者さんのそのときの症状に合った薬を適切に提供するためです。
 
医師は診察時の患者さんの症状を診て必要な薬を判断し、その内容を記載した処方箋を交付します。処方箋の交付日から日数が経過すると、症状が変わってしまい、処方薬が安全かつ有効ではない可能性があります。そこで、処方薬を適切に使用できる期限として、交付日から4日以内と定められています。
 
参照:薬の処方せんの使用期間の徒過の防止について(概要)|総務省

2.処方箋の期限は延長できる?

処方箋を交付されたら速やかに薬局へ持参することが望ましいものの、期限内に薬局へ行くことが難しい場合もあるでしょう。長期間の旅行など特殊な事情があり、処方箋を発行する医師や歯科医師が認めた場合には、処方箋に別途使用期間を記載した上で、期限を延長できます。
 
ただし、期限を延長できるのは、処方箋が交付される前に限ります。処方箋が交付された後に期限の延長はできないため、診察時に医師へ相談する必要があります。
 
参照:処方箋の使用期間にご留意ください|厚生労働省

3.処方箋の期限が切れたら再発行できる?

期限を過ぎた処方箋は無効となってしまうため、処方薬をもらうためには処方元の医療機関から処方箋を再発行してもらう必要があります。
 
ただし、処方箋の再発行を受けるには、医療機関を再受診しなければなりません。さらに、再発行にかかる費用は保険適用とはならず、全額自己負担になります。

4.処方箋の期限切れを防ぐには?

期限切れになるとその処方箋は無効となり、処方薬を受け取るためには医療機関で処方箋を再発行してもらう必要があります。再発行のために医療機関を再受診したり、再発行にかかる費用を負担したりしないといけないため、処方箋の期限切れはできるだけ避けたいところです。
 
また、医療機関や薬局としても、患者さんが薬の受け取りが遅れてしまうと、治療に悪影響を与える可能性があるため、期限切れを防ぐための取り組みを行う必要があるでしょう。
 
ここからは処方箋の期限切れを防ぐために、患者さん側と医療機関・薬局側で行いたい取り組みをお伝えします。

 

4-1.患者さん側の取り組み

長期間の旅行などを理由に、交付から4日以内に薬局へ処方箋を持参できそうにない場合には、期限を延長してもらえないか事前に医師へ相談しましょう。医師が期限の延長を認め、別途使用期間を記載した処方箋で、その期間中に受け取りができれば処方薬をもらえます。
 
また、期限切れを防ぐために、処方箋を交付されたら早めに薬局へ持参することも大切です。特にゴールデンウィークや年末年始など連休前に処方箋を交付されたときは、薬局が長期閉局となる前に必ず処方薬を受け取るようにしましょう。

 

4-2.医療機関や薬局側の取り組み

普段医療機関や薬局を利用しない患者さんの中には、処方箋の使用期間を知らない方もいます。そのため、医療機関のホームページに掲載したり、待合室にポスターを掲示したりして、患者さんに処方箋の使用期間について周知する必要があるでしょう。会計後に処方箋を交付する際に、使用期間について声かけをすることも大切です。
 
また、処方箋には多くの情報を記載する必要があるため、文字が小さくなりがちです。高齢者や目が悪い患者さんなどでも読みやすいように文字の大きさや配置を工夫するのもよいでしょう。
 
さらに、リフィル処方箋は通常の処方箋と使用期間が異なるため、薬局から患者さんに来局を促すことも大切です。2回目以降の使用期間が近づいたら患者さんに連絡し、使用期間内に来局してもらえるように依頼しましょう。
 
参照:処方箋の使用期間について(事務連絡 令和5年3月24日)|厚生労働省

 
🔽 期限切れの処方箋を提示されたときの対応方法について解説した記事はこちら

5.処方箋の期限に関するQ&A

処方箋の期限に関するよくある質問に回答します。処方箋に対して誤った取り扱いをしてしまうとトラブルにつながりかねないため、理解を深めておきましょう。

 

5-1.薬局から医療機関に相談(疑義照会)すれば、期限を延長できる?

期限の切れた処方箋について、薬局から医療機関に相談(疑義照会)をして期限を延長することは原則できません。内々で期限を延長したと受け取れる内容でレセプト請求をすると、査定対象となる可能性があります。期限切れの処方箋を受け付けた場合、患者さんに再受診を促し、医療機関へ再発行を依頼しましょう。
 
参照:処方箋の使用期間について|福岡県薬剤師会

 

5-2.薬局に処方箋を預けていたら、薬の受け取りは期限を過ぎても大丈夫?

一部の薬局では、期限内に処方箋を持参していれば薬の受け取りは後日でも問題ないとする場合があるかもしれません。しかし、処方箋が交付されてから日数が経過すると、症状が変わってしまい、服用する頃には処方薬が適さない可能性があります。適切に治療をするためには、使用期間内に薬を受け取り、治療を開始することが大切です。

 

5-3.休日や夜間に処方箋の期限が切れることが分かった場合の対処法は?

医療機関から処方箋が交付されたものの、薬の受け取りが遅れ、休日や夜間に処方箋の期限が切れることが分かり、対応に困るときもあるでしょう。
 
そうした場合には、休日や夜間でも調剤対応をしている薬局がないか探してみましょう。大手の調剤薬局では日曜日や祝日でも開局していたり、夜遅くまで調剤対応をしていたりする場合もあります。そういった薬局を事前に把握しておくと、緊急時でもスムーズに対応できるでしょう。
 
また、近年では、地域の行政機関や薬剤師会などを通じて休日・夜間に対応している薬局の情報が公開されており、行政や薬剤師会のホームページで薬局情報を検索すると、近隣で対応できる薬局が見つかるかもしれません。
 
参照:薬局による夜間・休日対応(外来・在宅)|厚生労働省

 
🔽 処方箋について解説した記事はこちら

6.期限までに処方薬を薬局へ持参し、処方薬を受け取ろう

処方箋の期限は原則、交付日を含めて4日以内です。使用期間には休日や祝日も含むため、ゴールデンウィークや年末年始などの連休前には早めに薬局へ持参しておく方がよいでしょう。
 
処方箋の期限は、長期間の旅行など特殊な事情があり、医師が認めた場合には事前に延長することが可能です。期限内に薬局へ処方箋を持参できそうにない場合には、期限を延長できないか事前に医師へ相談しましょう。
 
期限切れのときには処方箋を再発行してもらうことができますが、医療機関を再受診する必要があり、再発行にかかる費用は全額自己負担となります。処方箋の期限が切れる前に、早めに薬局へ持参するようにしましょう。


執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。

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