薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2024.01.25 薬剤師のためのお役立ちコラム

処方箋とは?調剤薬局での患者さんからのよくある質問と回答集

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

調剤薬局で患者さん対応をしていると、処方箋に関してさまざまな質問を受ける機会があります。医療従事者にとって当たり前のことでも、患者さんからすると疑問に思う場合はあるでしょう。適切な薬物治療を進めるためにも、患者さん自身に処方箋の役割や扱いについて理解してもらいたいもの。ここでは、処方箋に関して調剤薬局でよくある質問と回答例を、解説とともに紹介します。

目次

1.処方箋の発行について

症状が安定している患者さんは数カ月以上処方内容が変わらないことが多く、処方箋をもらうために医療機関を受診していると考えているケースがあります。

 

薬をもらうためだけの医療機関となれば、同じ治療を継続することに疑問を抱かれるかもしれません。

 

同じ内容の調剤であることの意味、治療には継続が必要なこと、使用中の薬は効果的に作用していると判断しての調剤であることなどを説明することが大切です。

 

1-1. Q:処方箋とはなんですか?

A:処方箋とは、医師が診察した時に、お薬を服用する必要があると思った場合に発行されるものです。

 

解説:薬剤師は医師の処方箋に基づいて調剤を行います。

 

1-2. Q:病院を受診せずに処方箋だけもらいたいのですが…

A:恐れ入りますが、病院を受診しないで、処方箋をもらうことはできません。いつも処方箋をもらっている病院を受診いただけますか。

 

解説:患者さんが処方箋を用いて医薬品を購入する場合、医療機関で発行された処方箋が必要です。定時薬などをもらいたい場合、病院の受診を面倒に思う患者さんもいます。その時は、定期的に医師の診察を受けることのメリットを説明しましょう。
なお、リフィル処方箋が発行されている場合は、医師および薬剤師の適切な連携の下、医師が指定した一定の期間内に処方箋を反復利用することができます。

 
🔽 リフィル処方箋について詳しく解説した記事はこちら

 

1-3. Q:いつもの薬がほしいだけなのに、病院で処方箋をもらわないといけないの?

A:医師は検査値や症状に変わりがないかをみてから服用するお薬を決めています。体調が変わらないと感じていても、検査値などが変わっていることもありますので、診察を受けてから処方箋を受け取ってください。

 

解説:定期的に検査を行い、症状や検査値を確認することは薬物治療を安全に行うためにも大切です。処方変更がないとしても、定期的に受診する重要性を説明しましょう。
また、薬剤師は症状が安定していて処方内容に変更がない患者さんであっても、基本的に処方箋をお持ちでない方にお薬をお渡しはできません。医師も医師法により診察せずに処方箋を発行することができない決まりになっています。

 

参照:医師法|e-Gov法令検索

 
🔽 「薬だけほしい」と言われたときの対応について解説した記事はこちら

 

1-4. Q:病院よりも近くの薬局で薬をもらった方がいいの?

A:他の病院でもらった薬や市販薬、サプリメントなど飲み合わせチェックがまとめて行えますので、お薬はかかりつけの薬局でもらうのがよいですね。服用薬を医師や薬剤師に伝え忘れてしまうといったことも起こりにくいため、安全に薬を服用できますよ。

 

解説:薬剤師が常駐していないクリニックなどの院内処方は、処方薬や併用薬のチェックが十分でない可能性があります。
ダブルチェックの機能があることも伝え、できるかぎり調剤薬局で薬をもらうように勧めましょう。また、病院よりも調剤薬局の方が丁寧に薬の説明や確認が行える点も伝えるとよいでしょう。

 
🔽 かかりつけ薬剤師について詳しく解説した記事はこちら

2.処方箋の受け付けについて

処方箋の有効期限や来局以外の受け付け方法などは、一般に周知されていない場合があります。
 
また、処方箋の受け付け時に保険証を提示したり、質問票に記入したりすることに疑問を感じる患者さんがいますので、便利なサービスがあることやアドバイスを伝えて、気軽に調剤薬局を利用してもらえるように努めましょう

 

2-1. Q:薬局ならどこでもいつでも処方箋を受け付けてもらえますか?

A:薬局が開いている時間帯は、基本的にいつでも処方箋を受け付けます。ポスト投函やFAXなどで受け付けを行っている調剤薬局もありますので、詳細はかかりつけ薬局に確認してください。

 

解説:日本薬剤師会の「eお薬手帳3.0」アプリやFAXなどによる受け付けを行っている調剤薬局は、営業時間に関わらず処方箋が受け付けられます。来局以外の方法で処方箋の受け付けを行っている場合は、患者さんに伝えましょう。

 

参照:eお薬手帳3.0|日本薬剤師会

 

2-2. Q:処方箋の渡し先は、ドラッグストアと薬局で違いがありますか?

A:調剤を行っているドラックストアであれば、調剤薬局と同様に処方箋を受け付け、お薬をお渡しできます。

 

解説:ドラックストアと調剤薬局の違いは、調剤を行っているかどうかです。調剤併設型のドラックストアもあるため、市販薬を含めたお薬を扱う場所は、ドラックストアと調剤薬局、調剤併設型ドラックストアの3種類あります。
処方箋を扱えるのは、調剤薬局と調剤併設型ドラックストアがあると説明し、処方箋の渡し先は患者さんの生活に合わせて選べることを伝えましょう。

 

2-3. Q:処方箋をもらったけれど、忙しくて薬局に持って行けません。

FAXや日本薬剤師会の「eお薬手帳3.0」アプリなどを利用すれば、薬局に行かなくても処方箋を受け付けてもらえます。処方箋の有効期限は4日間ですので、4日以内に処方箋の受け付けをしてください。

 

解説:処方箋の有効期限内に、調剤薬局へ来局できないことがあらかじめ分かっている場合は、医師に伝えると、有効期限を延長した処方箋を発行してもらえることを伝えましょう。

 

2-4. Q:FAXで処方箋を送って、受け付けしてもらえますか?

A:FAXによる受け付けを行っている調剤薬局もあります。お薬は処方箋の原本と引き換えになるので、お薬を受け取る時は処方箋の原本を忘れず持って行ってくださいね。

 

解説:FAXなどその他の方法で処方箋を受け付けている調剤薬局は、患者さんへFAX以外の受け付け方法もお伝えすると親切です。

 

2-5. Q:処方箋の有効期限が切れてしまったのですが、まだ使用できますか?

基本的には使用できません。お約束はできませんが、調剤薬局から処方医へ問い合わせを行うことで、有効期限を延長できる場合があります。

 

解説:有効期限は処方日を含めて4日間です。期限内に受け付けを済ませるよう伝えましょう。
ただし、医師が処方箋に有効期限を記載している場合は、医師が記載した日付まで処方箋を使用できます。

 

参照:処方箋の使用期間にご留意ください|厚生労働省

 
🔽 処方箋が期限切れだったときの対応を解説した記事はこちら

 

2-6. Q:処方箋の有効期限を延長してもらえますか?

A:処方医に処方箋の有効期限を延長してもらえるか確認しますのでお待ちください。風邪など症状が変わりやすい疾患の場合は、症状を確認するために再受診を指示されることもあります。

 

解説:複数回にわたり、有効期限切れの処方箋を持って来る患者さんがいる場合は、処方箋の有効期限を守るように伝えるとともに、来局せずに受け付けが完了する日本薬剤師会の「eお薬手帳3.0」アプリなどを紹介しましょう。

 

2-7. Q:薬をもらうのに、なぜ保険証が必要なのですか?

A:処方箋に記載されている保険証の記号と番号に、間違いがないかを確認しています。医療費に関わることなので、ご理解いただけますでしょうか。

 

解説:保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第 3 条で、保険薬局は保険調剤を受ける資格がある患者さんであることを確かめなければならないと定められています。
保険証や医療証などを使用すると、患者さんの医療費が3割以下になることをご存じないかもしれません。患者さんが支払う医療費に関わる点を説明するとよいでしょう。

 

参照:保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則|e-Gov法令検索

 
🔽 保険薬剤師について詳しく解説した記事はこちら

 

2-8. Q:初回受け付けの時に質問票を記載するのはどうしてですか?

A:お薬をお渡しする前に、服用歴やアレルギー歴、健康食品やサプリメントなどを確認して、お薬との飲み合わせなどをチェックしています。安心安全にお薬を服用できるようにするためですので、ご理解いただけますでしょうか。

 

解説:お薬手帳に服用中の医薬品以外にアレルギー歴などを記載いただく欄があれば記載しておくことをおすすめしましょう。初回受け付け時にお薬手帳を提示することで、質問票への記載を省略できる調剤薬局もあります。

 

3.処方箋の記載内容について

処方箋の記載内容を理解することで、患者さん自身が処方箋の期限や用法用量の確認できるようになります
 
分割調剤についてなじみのない患者さんもいますので、質問があった場合は丁寧に説明しましょう。

 

3-1. Q:処方箋には何が書かれているのですか?

A:「医薬品名」「分量」「服用タイミング」「処方日」「有効期限」などが記載されています。非常にまれですが、自身のものではない処方箋を受け取る場合がありますので、処方箋を受け取った時は、間違いがないかお名前を確認してくださいね。

 

解説:患者さんには、処方箋に書かれた名前を見てもらうといったアドバイスをしておくとよいでしょう。また、処方箋の患者さんが処方してほしい薬を医師にお願いした場合は、自身で処方の有無を確認することで処方漏れを防げます。処方箋の読み方を患者さん自身が理解することは薬剤師にとってもメリットがあります。
処方箋は、医師法施行規則第二十一条で「医師は、患者に交付する処方せんに、患者の氏名、年齢、薬名、分量、用法、用量、発行の年月日、使用期間及び病院若しくは診療所の名称及び所在地又は医師の住所を記載し、記名押印又は署名しなければならない。」と定められています。

 

参照:医師法施行規則|e-Gov法令検索

 

3-2. Q:医師から「分割調剤でジェネリックを試してみて」と言われました。どういうことですか?

A:ジェネリック医薬品の使用にお試し期間を設けるために、分割調剤を利用する方法があります。処方日数を最大3回に分けてお薬をお渡しすることで、1回目にジェネリック医薬品を服用し、2回目以降はジェネリック医薬品に変更するかどうか選べます。

 

解説:分割調剤を利用してジェネリック医薬品を試す患者さんは、ジェネリック医薬品の服用に抵抗感を抱いている可能性があります。必要に応じて詳しい説明を行う必要があるでしょう。加えて、有効成分も添加物も全く同じであるオーソライズド・ジェネリック(AG)についても伝えましょう。一部の医薬品はAGが作られていますので、ジェネリック医薬品に不安を感じる場合は、AGがあればおすすめすると不安が和らぐかもしれません。
初めてジェネリック医薬品を使用する際のお試し期間だけでなく、長期での保存が困難な医薬品も分割調剤にできます。また、患者さんの服用状況から定期的に薬剤師による服薬サポートが必要と判断されるケースにおいて、医師が分割調剤を指示した場合に実施します。

 
🔽 オーソライズドジェネリックについて詳しく解説した記事はこちら

 
🔽 後発医薬品(ジェネリック医薬品)を先発品に変更してほしいと言われたときの対応を解説した記事はこちら

 

3-3. Q:この処方箋で何度かに分けて薬を受け取れると聞いたのですが…

A:分割調剤の指示が入っている処方箋のことですね。分割調剤とは、数回に分けて薬を受け取れる方法です。お薬と一緒に、いったん、処方箋を返却しますので、次回分のお薬をもらいたい時は全ての処方箋を調剤薬局に持参することになります。次回まで処方箋をなくさないようにしてくださいね。

 

解説:1回目と2回目の薬局が異なっても問題ないため、2回目以降、異なる薬局で薬をもらう場合があります。念のため、2回目以降の受診予定を確認しましょう。次回、別の調剤薬局に来局予定の場合は、患者さんに確認後、在庫の確保などが行えるよう来局予定の薬局へ情報提供を行う方がよいかもしれません。
また、処方箋が複数枚ある場合は調剤済みの処方箋も含めて確認が必要です。全ての処方箋を持参するように伝えましょう。なお、全ての処方箋が揃っていない場合はお薬をお渡しすることができない点も事前に伝えておくとよいでしょう。

 
🔽 分割調剤について詳しく解説した記事はこちら

4.処方箋受け付け後のお薬の受け取りについて

処方箋の受け付けに期限があるのに対し、受け取りには期限などの制限がありません。
 

そのため、処方箋の受け付け以降は、患者さん自身が服用薬を管理することになります。残薬の確認や代理の方がお薬を受け取る場合の注意点などはしっかり周知しておきましょう

 

4-1. Q:処方箋なしでお薬はもらえますか?

A:基本的には、処方箋なしで処方薬をお渡しすることはできません。

 

解説:処方箋医薬品以外の医療用医薬品について、最低限の日数分だけ販売する「零売」を行っている調剤薬局であれば、零売対象の医薬品については販売できることを伝えましょう。
零売とは、患者さんが自分の症状を把握できる場合に、薬剤師がカウンセリングを実施した上で、最低限度の医療用医薬品を処方箋なしで販売できる方法です。

 

参照:薬局医薬品の取扱いについて|厚生労働省

 
🔽 零売薬局について解説した記事はこちら

 

4-2. Q:処方箋を受け付けしてから後日取りに行ってもよいでしょうか?

A:後日の受け取りでも期限内であれば問題はありません。

 

解説:処方箋の受け付け後は、お手持ちの薬がなくなる前に処方薬を取りに来るよう伝えましょう。なお、風邪などなるべく早く治療を開始した方がよい疾患の場合は、医療機関を受診した日に処方薬を受け取るように説明しましょう。

 

4-3. Q:処方箋の受け付けや薬の受け取りは代理の人が行ってもよいですか?

A:代理の方が、処方箋の受け付けや薬の受け取りを行っても、特に問題はありません。お薬をお渡しする際、病状やアレルギー歴、服用歴、余っている薬の錠数などを確認するため、あらかじめ代理の方にお伝えください。アレルギー歴や服用歴などについては、お薬手帳に記載されていれば確認できます。

 

解説:薬局に顔が知れているご家族の方などであれば、証明書や手続きなどの必要はほとんどありませんが、患者さん本人とのつながりが確認できない場合は、患者さんへの電話確認や代理の方の連絡先を記録する必要があるでしょう。

 
🔽 代理の方に薬を渡すときの対応について解説した記事はこちら

5.処方箋の役割や扱いを周知することが医療の質向上につながる

処方箋にまつわる質問は、ほかにもさまざまなものがあります。中には驚くような質問が出ることもあるでしょう。
 
しかし、薬剤師として処方箋の役割や扱いを伝えることは、患者さん自身の治療内容や薬の意味などの理解が深まることにもつながります。
 
納得して医療機関を受診してもらうために必要なことなので、患者さんから処方箋についての質問があったときは、疑問が解消されるよう丁寧に説明し、安心感を高めることが大切です。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

  

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