薬剤師のスキルアップ 公開日:2023.06.19 薬剤師のスキルアップ

オーソライズドジェネリックとは?メリット・デメリットと服薬指導の注意点を紹介

文:テラヨウコ(薬剤師ライター)

ジェネリック医薬品の中には、先発品メーカーの許諾を得て製造・販売するものがあり、それらを「オーソライズドジェネリック」と呼んでいます。オーソライズドジェネリックは先発品と有効成分や製法は同一ですが、先発品と異なる点もあります。患者さんに尋ねられたときにしっかり違いを答えられるように、オーソライズドジェネリックの基本を理解しておくことが大切です。今回は、オーソライズドジェネリックと一般的なジェネリックの違いやメリット・デメリット、分類などを解説するとともに、服薬指導の注意点についてご紹介します。

1.オーソライズドジェネリックとは

まずは、オーソライズドジェネリックの特徴と、一般的なジェネリックとの違いを見てみましょう。近年、オーソライズドジェネリックが続々と販売され始めた背景も紹介します。

 

1-1.オーソライズドジェネリックは先発品会社の許諾を受けて作られたジェネリック

オーソライズドジェネリックとは、先発医薬品(以降、先発品)メーカーの許諾を受けて作られたジェネリック医薬品(以降、ジェネリック)です。原薬や添加物、製法などが先発品と同一のものもあれば、異なる原薬を用いて先発品と同じ製法で作られたものも含まれます。
 
オーソライズドジェネリックは、先発品の特許使用の許可を得た上で販売されます。英語で書くとAuthorized Generic(許諾を受けたジェネリック)となり、略して「AG」とも呼ばれています。

オーソライズドジェネリックは法律で明確に定義されたものではなく、あくまでも一般的な呼び名です。そのため、薬価制度上は一般的なジェネリックと特に区別されることなく、同等に扱われます。

 

1-2.オーソライズドジェネリックが販売される理由

先発品メーカー自体がオーソライズドジェネリックを作ることもあれば、系列メーカーや契約したメーカーなどが製造・販売することもあります。では、なぜ先発品メーカーは、先発品と共通点が多いのに安価で提供できるオーソライズドジェネリックを推し進めているのでしょうか。
 
ジェネリックは先発品よりも安価で販売されているのが特徴ですが、その理由は、開発費用の違いにあります。先発品の開発には、9~17年ほどの長い期間と数百億円もの投資が必要です。
 
しかし、ジェネリックは先発品ほど期間・費用がかからないため、薬の価格を安くできるというわけです。2021年度におけるジェネリック医薬品の数量シェアはおよそ80%。医療費増大を背景に国がジェネリック使用を推奨していることもあり、ここ10年ほどで使用量が増大しています。

およそ20~25年の先発品の特許期間が終わるとジェネリックへの切り替えが進み、先発品の販売利益は減ってしまいます。しかし、オーソライズドジェネリックを販売することで、他のジェネリックメーカーの製品に市場シェアが奪われるのを防ぐ効果があると考えられます。

2.オーソライズドジェネリックとジェネリックの違い

薬価制度上はオーソライズドジェネリックと一般的なジェネリックに違いはありませんが、添加物や製法、販売開始できる時期など異なる点があります。
 
一般的なジェネリックは先発品の特許期間が終了した後、厚生労働省の承認の下で製造・販売されます。ジェネリックは先発品と有効成分・効能効果・用法用量が同じ医薬品と規定されています。
 
一方で、オーソライズドジェネリックは、有効成分・効能効果・用法用量が先発品と同一であることはもちろん、製法も同じものです。さらに、商品によっては原薬・添加物に加えて製造工場や生産ラインまで同じという、先発品とほぼ同一のものもあります。
 
また、一般的なジェネリックは特許期間・再審査期間終了後に販売されるのに対して、オーソライズドジェネリックは再審査期間が終了すれば特許期間内であっても販売が可能です。中には一般的なジェネリックに比べ半年ほど早く販売される場合もあり、いち早くジェネリック市場に進出してシェアを拡大できます。

 

■オーソライズドジェネリックと一般的なジェネリックの比較例

 

オーソライズドジェネリックと一般的なジェネリックの比較例

参照:薬価制度の抜本改革について(その13)これまでの議論のまとめ②|厚生労働省

3.オーソライズドジェネリックの種類

先述したように、オーソライズドジェネリックは、基本的に原薬や添加物、製法などが先発品と同一とされています。しかし、その全てが「完全に」同一というわけではありません。オーソライズドジェネリックは製造する過程によっておおまかに3種類に分けられます。

 

■オーソライズドジェネリック(AG)の種類の一覧表

 

オーソライズドジェネリック(AG)の種類の一覧表

参照:オーソライズドジェネリック(AG)とは何ですか|日医工株式会社

 

1つ目は、先発品と同じ原薬、製法、製造技術、製造工場を使用して製造したものです。これは、先発品とほぼ同一と考えて差し支えないでしょう。2つ目は、先発品と同一の製法、原薬を用いていますが、異なる製造技術や製造工場で製造したもの。そして3つ目は、製法のみ同じで、原薬や製造技術、製造工場が異なるものです。

オーソライズドジェネリック内の分類によって国への申請方法にも違いが出てきます。製法、原薬、製造技術、製造工場が全て先発品と同一の場合は、申請の際に生物学的同等性試験は不要です。ところが、完全に同一でない場合は、他のジェネリックと同様に試験の実施が求められます。オーソライズドジェネリックと一口に言っても、中には先発品と異なる部分もあると理解した上で患者さんに説明できるようになりましょう。

 
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4.オーソライズドジェネリックのメリット・デメリット

オーソライズドジェネリックには一般的なジェネリックと成分や流通などで異なる特徴があります。ここでは、特徴の違いから生じる患者さんや医師・薬剤師にとってのメリット・デメリットについて、それぞれ見てみましょう。

 

4-1.オーソライズドジェネリックのメリット

そもそもジェネリックは、先発品に比べて薬価が安いため、医療費を抑えたいと考える患者さんにとって大きなメリットがあるといえます。しかし、中には「ジェネリックは効かないのでは?」と不安を感じる患者さんもいます。その点、オーソライズドジェネリックは、他のジェネリックと比べて、先発品との共通点が多く、先発品で蓄積された有効性・安全性についてのデータも活用できるため、信頼性が高いものとして医師・薬剤師から提案しやすいという利点があります。

 
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また、先発品メーカーの関連会社などがオーソライズドジェネリックを作る場合、すでに安定的な生産・供給体制が整っていることが多いのもメリットです。医薬品流通が不安定な昨今において、比較的安定して医療機関に納入されるのは安心感があるでしょう。物流が安定していると、患者さんにとっても服用薬のメーカーが頻繁に変わらないため、安心して治療に取り組めるのではないでしょうか。

さらに、他のジェネリックに先駆けて販売されることも多く、いち早く切り替えることができます。医療費の関係などで早くジェネリックを使いたいと考える患者さんにとってメリットとなるでしょう。

 

4-2.オーソライズドジェネリックの4つのデメリット

一方で、デメリットとして注目したいのが、他のジェネリックよりも薬価が高い場合があることです。患者さんによっては薬代が下がるメリットを感じにくいこともあります。参考として、抗がん剤のティーエスワン配合OD錠の例を見てみましょう(2022年9月16日現在)。

 

■ティーエスワン配合OD錠の比較表

 

ティーエスワン配合OD錠の比較表

参照:薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について 内用薬|厚生労働省 

 

また、ジェネリックが存在する全ての薬に対して、オーソライズドジェネリックが販売されるとは限らない点もデメリットといえるでしょう。患者さんがオーソライズドジェネリックを希望しても、期待に沿えないことがあります。加えて、オーソライズドジェネリックの製法は先発品と同一であるため、場合によっては、他のジェネリックの方が薬の味や飲みやすさの点で優れていることがあります。

薬剤師にとって特にデメリットとして感じやすいのが、オーソライズドジェネリックには公的な一覧表がなく、調べ方や見分け方が大変な点ではないでしょうか。オーソライズドジェネリックは、薬価制度上は一般的なジェネリックと同じ扱いになるため、厚生労働省などでまとめた一覧表が存在しません。
 
2022年現在に販売されているオーソライズドジェネリックを確認するためには、各ジェネリックメーカーの公式サイトなどで確認する必要があり、手間がかかるのが難点です。

5.オーソライズドジェネリックを服薬指導する際の注意点

服薬指導の際は、オーソライズドジェネリックの特徴や一般的なジェネリックとの違いについて正しい情報を伝えることが大切です。先発品希望の患者さんにオーソライズドジェネリックを勧める際は、先発品とどこが一緒で、何が違うのか、先発品と同じ薬なのになぜ値段が安いのかなどの疑問に的確に答えられるように、薬剤師自身も十分な理解を深めておきましょう。また、オーソライズドジェネリックはジェネリックの中では値段が高めの場合もあるため、その理由について患者さんに説明できるようになる必要があります。

6.オーソライズドジェネリックへの理解を深めよう

オーソライズドジェネリックであっても、患者さんがジェネリック変更に納得していない状況での無理な切り替えは好ましくありません。適切な医療のためには、医師・薬剤師と患者さんの間での信頼関係が重要です。オーソライズドジェネリックへの切り替えは、患者さんの疑問点を解決し、個人的・社会的なメリットなどを理解してもらった上で行うよう心がけましょう。
 
医療費削減において、ジェネリックの活用は有効です。薬剤師として柔軟に対応できるよう、知識を深めてみてはいかがでしょうか。

 


執筆/テラヨウコ

薬剤師。3人兄弟のママ。大学院卒業後、地域密着型の調剤薬局に勤務。大学病院門前をはじめ、内科・婦人科・皮膚科・心療内科・皮膚科門前などで多くの経験を積む。15年の薬剤師歴ののち独立して薬剤師ライターへ。健康や医療、美容に関する記事を執筆。休日は温泉ドライブや着物でのおでかけが楽しみ。

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