要指導医薬品とは、薬局やドラッグストアで薬剤師が対面でのみ販売できる市販薬のことです。本記事では、要指導医薬品の概要や表記、一般用医薬品との違いなどを解説するとともに、要指導医薬品の一覧や販売方法、販売記録についてお伝えします。加えて、要指導医薬品の現状や今後、服薬指導を行うときのポイントについても見ていきましょう。
- 1.要指導医薬品とは?
- 1-1.要指導医薬品の表記
- 1-2.要指導医薬品と一般用医薬品の違い
- 2.要指導医薬品の一覧
- 2-1.再審査期間中の品目一覧
- 2-2.製造販売後調査期間中の品目一覧
- 2-3.劇薬の品目一覧
- 3.要指導医薬品の販売方法
- 3-1.要指導医薬品の販売記録
- 3-2.要指導医薬品の陳列方法
- 4.要指導医薬品の現状と今後
- 4-1.薬剤師の要指導医薬品の取り扱い状況
- 4-2.オンラインによる服薬指導と販売
- 5.薬剤師が要指導医薬品の服薬指導を行うときのポイント
- 5-1.あらかじめ適応や用法用量などの確認を行う
- 5-2.症状が改善しない場合は受診をすすめる
- 6.要指導医薬品の最新情報に注目しよう
1.要指導医薬品とは?
要指導医薬品とは、効能効果が人体に対して著しくないものであって、薬剤師からの情報提供・指導をもとに購入者や使用者が選択して服用する市販薬のことです。初めて一般向けに市販された以下の医薬品が該当します。
● 医療用医薬品から転用され、製造販売後調査期間中の医薬品(スイッチ直後品目)
● 薬機法第44条第1項に定める毒薬および薬機法第44条第2項に定める劇薬
要指導医薬品は、購入者や使用者の判断により広範に服用された場合の保健衛生上のリスク評価が確定していない医薬品として位置付けられています。
また、一定期間の調査を経て一般用医薬品へ移行することから、調査期間中は最大限の情報収集を行った上での適切な指導が求められます。そのため、要指導医薬品の販売は、薬剤師による対面販売のみとされています。
1-1.要指導医薬品の表記
要指導医薬品は、直接の容器または被包に、「要指導医薬品」の文字を四角い黒枠の中に黒字で記載しなければなりません。外部の容器または被包から直接の容器または被包への記載が確認できない場合は、外部の容器または被包にも「要指導医薬品」の文字を記載します。
直接の容器または被包のデザインによっては、黒枠黒字で明瞭に判読できないことがあります。そういった場合は、白枠の中に白字で記載することが可能です。
また、文字の大きさには例外があるものの、基本的には8ポイント以上で、十分なスペースがない場合は二段書きにしても差し支えないとされています。
参照:薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律等の施行等について|厚生労働省
参照:医薬品の販売業等に関するQ&Aについて(その2)|厚生労働省
1-2.要指導医薬品と一般用医薬品の違い
一般用医薬品とは、薬局や店舗販売業などにおける対面販売のほか、インターネット販売などの非対面による販売が認められている市販薬です。第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品に分類されます。
第1類医薬品は、薬剤師による情報提供が義務化されていますが、第2類医薬品、第3類医薬品は、薬剤師以外にも登録販売者による販売が認められています。
要指導医薬品 | 一般用医薬品 | ||
---|---|---|---|
第1類医薬品 | 第2・3類医薬品 | ||
販売する資格者等 | 薬剤師 | 薬剤師 | 薬剤師 登録販売者 |
販売方法 | 対面販売のみ | 対面販売またはオンライン販売 | |
使用者本人の確認 | ○ | – | – |
他店からの購入状況の確認 | ○ | ※1 | ※1 |
適正な量のみの販売 | ○ | ※1 | ※1 |
購入者の理解の確認 | ○ | ○ | – |
情報提供等 | ○ | ○※2 | △ |
参照:医薬品の販売区分及び販売方法について|厚生労働省
参照:医薬品の販売制度に関する検討会とりまとめ 概要資料|厚生労働省
※1:濫用等のおそれがある医薬品については確認した上で販売
※2:例外的に不要としてよい場合あり
なお、第1類医薬品の販売で情報提供等が不要となる例として、購入者から継続使用のため説明不要の申し出があり、応対する薬剤師が、適正使用が可能と認めた場合などが挙げられます。
2.要指導医薬品の一覧
要指導医薬品には、再審査期間中、製造販売後調査期間中、劇薬があります。それぞれの品目について見ていきましょう。

2-1.再審査期間中の品目一覧
再審査期間中の品目一覧は、以下のとおりです(2025年3月時点)。
有効成分 (販売名) |
製造販売業者 | 承認年月日 | 調査期間 (予定) |
販売開始日 |
---|---|---|---|---|
ブリモニジン酒石酸塩 (マイティアルミファイ) |
千寿製薬株式会社 | 2024年9月3日 | 4年 | 2025年1月23日 |
オルリスタット (アライ) |
大正製薬株式会社 | 2023年2月17日 | 8年 | 2024年4月1日 |
セイヨウハッカ油 (コルペルミン) |
ゼリア新薬工業株式会社 | 2021年8月31日 | 4年 | 2022年3月24日 |
2-2.製造販売後調査期間中の品目一覧
製造販売後調査期間中の品目一覧は、以下のとおりです(2025年3月時点)。
有効成分 (販売名) |
製造販売業者 | 承認年月日 | 調査期間 (予定) |
販売開始日 |
---|---|---|---|---|
メロキシカム (メロキシン) |
エスエス製薬株式会社 | 2025年3月21日 | 3年 | – |
ラベプラゾールナトリウム (パリエットS) (パリエット10) |
エーザイ株式会社 | 2025年3月21日 | 3年 | – |
モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物 (ナゾネックス点鼻薬<季節性アレルギー専用>) (ナザールNX<季節性アレルギー専用>) |
佐藤製薬株式会社 | 2025年2月25日 | 3年 | – |
フルルビプロフェン (ヤクバン) (ヤクバンL) (ヤクバンXL) |
株式会社トクホン | 2024年3月28日 | 3年 | – |
ロキソプロフェンナトリウム水和物/メキタジン/L-カルボシステイン/チペピジンヒベンズ酸塩 (パブロンLX錠) (パブロンBiz錠) (パブロンエースLX錠) (パブロンSゴールドLX錠) |
大正製薬株式会社 | 2024年3月18日 | 3年 | 2024年8月1日 (パブロンLX錠) |
ロキソプロフェンナトリウム水和物/d-クロルフェニラミンマレイン酸塩/ジヒドロコデインリン酸塩/dl-メチルエフェドリン塩酸塩/グアイフェネシン/無水カフェイン (コルゲンコーワLX錠) |
興和株式会社 | 2023年8月22日 | 3年 | 2023年10月2日 |
ロキソプロフェンナトリウム水和物/ブロムヘキシン塩酸塩/クレマスチンフマル酸塩/ジヒドロコデインリン酸塩/dl-メチルエフェドリン塩酸塩 (ルルアタックLX) (ロキソニン総合かぜ薬) |
第一三共ヘルスケア株式会社 | 2023年8月22日 | 3年 | 2024年3月13日 (ロキソニン総合かぜ薬) |
フェキソフェナジン塩酸塩/塩酸プソイドエフェドリン (アレグラFXプレミアム) |
サノフィ株式会社 | 2023年3月27日 | 3年 | 2024年1月16日 |
オキシコナゾール硝酸塩 (オキナゾールL600) |
田辺三菱製薬株式会社 | 2023年3月27日 | 3年 | 2023年6月30日 |
ポリカルボフィルカルシウム (ギュラック) |
小林製薬株式会社 | 2022年9月16日 | 3年 | - |
ヨウ素/ポリビニルアルコール(部分けん化物) (サンヨード) |
参天製薬株式会社 | 2022年6月3日 | 3年 | 2022年9月1日 |
イトプリド塩酸塩 (イラクナ) |
小林製薬株式会社 | 2021年12月27日 | 3年 | 2022年9月28日 |
ナプロキセン (モートリンNX) |
JNTLコンシューマーヘルス株式会社 | 2021年8月31日 | 3年 | - |
プロピベリン塩酸塩 (バップフォーレディ) (ユリレス) |
大鵬薬品工業株式会社 | 2021年5月31日 | 3年 | 2021年11月24日(バップフォーレディ) |
2-3.劇薬の品目一覧
劇薬の品目一覧は、以下のとおりです(2025年1月時点)。
販売名 | 製造販売業者 | 承認年月日 |
---|---|---|
ヨヒンビン塩酸塩 (ガラナポーン) |
大東製薬工業株式会社 | 1966年1月25日 |
ヨヒンビン塩酸塩/ストリキニーネ硝酸塩/ パントテン酸カルシウム/ハンピ末 (ハンビロン) |
日本薬品株式会社 | 1963年3月5日 |
ヨヒンビン塩酸塩/ガラナエキス/ハンピ末 (ストルピンMカプセル) |
日本薬品株式会社 | 1964年2月7日 |
ホルムアルデヒド/焼石膏 (エフゲン) |
阿蘇製薬株式会社 | 1968年8月31日 2014年3月販売終了 |
3.要指導医薬品の販売方法
要指導医薬品は、薬剤師の対面販売が義務付けられています。販売時は、用法用量薬効、使用上の注意などについて指導するとともに、要指導医薬品の特性を踏まえて、年齢や性別、服用中の薬剤、症状などを確認しなければなりません。また、店舗内には、薬剤師の勤務者や要指導医薬品を販売する時間帯などを掲示することとされています。
さらに、販売記録や陳列方法についても定められています。ここでは、要指導医薬品の販売記録や陳列方法について詳しく見ていきましょう。

3-1.要指導医薬品の販売記録
要指導医薬品を販売・授与したときは、以下について書面に記載し、2年間保存しなければなりません。
2. 数量
3. 販売・授与の日時
4. 販売・授与した薬剤師の氏名
5. 情報の提供・指導を行った薬剤師の氏名
6. 購入者また譲受者が情報の提供・指導の内容を理解したことの確認の結果
また、購入者や譲受者の連絡先も書面で保管するよう努めなければなりません。なお、これらの記録は、電磁的記録で作成・保存での実施が認められています。
3-2.要指導医薬品の陳列方法
要指導医薬品は、一般用医薬品を混在させないように、以下の設備の決められた区画に陳列することとされています。
● 鍵をかけた陳列設備
また、開店時間のうち、薬剤師の不在などを理由に要指導医薬品を販売・授与しない時間は、要指導医薬品の陳列区画を閉鎖することとされています。ただし、鍵をかけた陳列設備に要指導医薬品を陳列する場合は、この限りではありません。
参照:薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律等の施行等について|厚生労働省
4.要指導医薬品の現状と今後
要指導医薬品を取り巻く状況は大きく変化しています。セルフメディケーションの推進やオンライン診療・オンライン服薬指導の進展により、要指導医薬品の取り扱いに関する制度は、見直しが進められています。ここでは、要指導医薬品の現状と今後について見ていきましょう。
4-1.薬剤師の要指導医薬品の取り扱い状況
市販薬についてはさまざまな議論がされていますが、中でもスイッチ直後品目については、「薬局や店舗販売業における販売体制」と「販売に関する薬事規制」が課題として挙げられています。
参照:これまでの議論(要指導医薬品・濫用等のおそれのある医薬品)|厚生労働省
スイッチ直後品目の中には、薬剤師によって取り扱い経験の少ない医薬品があります。それらの指導等の質を向上させるためには、教育や研修の実施が必要です。濫用等のおそれのある医薬品が適正に販売されていないケースもあり、「薬局や店舗販売業における販売体制」が課題とされています。
また、現行の「販売に関する薬事規制」では、医薬品の特性によらず、原則としてすべての要指導医薬品が3年間の対面販売後、毒薬・劇薬を除き一般用医薬品に移行され、インターネット販売が可能となります。そのため、安易に販売される危険性等が懸念されており、医療用医薬品のスイッチOTC化が進まない理由のひとつといわれています。
🔽 スイッチOTC医薬品について解説した記事はこちら
4-2.オンラインによる服薬指導と販売
デジタル技術が進展し、オンライン診療やオンライン処方箋、オンライン服薬指導を実施する体制が整えられています。要指導医薬品の販売についても、薬剤師の判断でオンラインでの実施ができるよう制度の整備が進められています。
2024年1月に公表された厚生労働省の「医薬品の販売制度に関する検討会とりまとめ」では、オンラインによる要指導医薬品の販売の具体的な方策として、以下のような除外項目を設けることが示されています。
● 医薬品の特性に合わせて、一般用医薬品に移行せず要指導医薬品に留められるようにする
参照:医薬品の販売制度に関する検討会とりまとめ 概要資料|厚生労働省
政府の規制改革推進会議が2024年12月に公表した「規制改革推進に関する中間答申」にも、要指導医薬品のオンライン服薬指導およびオンライン販売を可能とすることを検討するという記載が盛り込まれました。今後、制度改正が行われることとなるため、薬局やドラッグストアなどは最新情報の収集に努める必要があります。
参照:規制改革推進に関する中間答申|規制改革推進会議
5.薬剤師が要指導医薬品の服薬指導を行うときのポイント
要指導医薬品の服薬指導を行うときは、あらかじめ適応や用法用量の確認をしたり、症状が改善しない場合の対処法を説明したりすることが大切です。ここでは、薬剤師が要指導医薬品の服薬指導を行うときのポイントをお伝えします。
5-1.あらかじめ適応や用法用量などの確認を行う
要指導医薬品は、購入者や使用者が自身の症状を判断して使用する医薬品です。スイッチ直後品目については、医療用医薬品に記載されている適応や用法用量と異なる場合があるため、医療用医薬品との違いを把握しておく必要があるでしょう。
また、副作用についても注意喚起をすることが必要です。市販薬であっても副作用が起こる可能性は十分にあることを指導し、副作用の予防方法に加え、疑いがある場合には服用中止をした上で受診するように伝えましょう。
5-2.症状が改善しない場合は受診をすすめる
要指導医薬品を服用後も症状が改善しない場合や長期の服用になりそうな場合には、医療機関への受診を勧めましょう。症状に対して十分な効果が得られていない、またはほかに原因がある可能性があります。
そのため、要指導医薬品での対応が難しいと判断できる場合には、医療機関を受診して、医師に症状や使用した要指導医薬品について伝えるよう指導しましょう。
🔽 薬剤師の服薬指導について解説した記事はこちら

6.要指導医薬品の最新情報に注目しよう
要指導医薬品は、セルフケア・セルフメディケーションを推進するために、安全性を担保しつつ活用しやすくなるよう、制度改定が進められています。要指導医薬品から一般用医薬品へ移行していくものや、要指導医薬品に留めるもの、対面販売のみとするものなど、医薬品の特性に合わせた管理・販売方法が整備されていくでしょう。薬剤師は要指導医薬品の最新情報に注目し、適正販売・適正使用ができるよう備えることが大切です。

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
あわせて読みたい記事