かかりつけ薬剤師 公開日:2025.09.10 かかりつけ薬剤師

かかりつけ薬剤師の同意書とは?テンプレート(ひな形)や同意の取り方を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

かかりつけ薬剤師の同意書は、かかりつけ薬剤師指導料やかかりつけ薬剤師包括管理料を算定するために取得が必要です。また、2024年度の診療報酬改定でかかりつけ薬剤師の算定要件が一部変更されたため、厚生労働省が提示する同意書のテンプレートも変更点を反映したものとなっています。本記事では、かかりつけ薬剤師の同意書やテンプレート(ひな形)、同意の取り方について説明するとともに、疑義解釈や算定要件に記載されている同意書に関する注意点をお伝えします。

1.かかりつけ薬剤師の同意書とは?

かかりつけ薬剤師の同意書とは、かかりつけ薬剤師による服薬指導を受けることについて、患者さんから同意を得るための書類です。
 
同意書の作成は、かかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料の算定要件となっています。
 
そのため、かかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料の算定にあたっては、かかりつけ薬剤師の業務内容や役割、費用などについて患者さんに説明した上で、同意書を取り交わす必要があります。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

1-1.かかりつけ薬剤師(薬局)とは?

かかりつけ薬剤師(薬局)とは、医師と連携して患者さんの服薬状況を一元的かつ継続的に把握し、患者さんの薬物治療や健康の増進・維持をサポートする薬剤師(薬局)のことです。
 
医療機関の処方薬を確認・調剤するだけでなく、OTC医薬品やサプリメントに関する相談に応じたり、日常生活での悩みや緊急時の対応について助言をしたりする役割を担います。いつでも相談ができるため、かかりつけ薬剤師(薬局)は患者さんにとって頼りになる存在となるでしょう。

 
🔽 かかりつけ薬剤師(薬局)について解説した記事はこちら

 

1-2.かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料とは?

かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料とは、かかりつけ薬剤師として患者さんへ服薬指導などを行った場合に算定できる薬学管理料です。それぞれの点数は、以下のとおりです。

 

項目 点数 加算
かかりつけ薬剤師指導料 76点
かかりつけ薬剤師包括管理料 291点

参考:調剤報酬点数表|厚生労働省

 

かかりつけ薬剤師包括管理料は対象患者さんが限定されており、服薬状況などを随時把握し、その都度医師へ情報提供するといった密な連携が求められています。加算はありませんが、算定するために必要な業務量は多くなっており、高い点数が設定されています。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 
🔽 かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料について解説した記事はこちら

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2.かかりつけ薬剤師の同意書のテンプレート(ひな形)

かかりつけ薬剤師の同意書には、厚生労働省が提示する様式例があり、この様式例を参考に同意書を作成することとされています。記載内容の例は、以下のとおりです。

 

同意書への記載内容の例 説明資料への記載内容の例
● かかりつけ薬剤師が実施すること
● 薬学的観点から必要と判断した理由
● 連携する薬剤師の氏名(希望する場合)
● マイナンバーカードやお薬手帳を持参すること
● かかりつけ薬剤師による薬の説明・指導に関すること
● 費用がかかること
● 同意はいつでも取り下げられること

参考:(別紙様式2)かかりつけ薬剤師指導料(かかりつけ薬剤師包括管理料)について|厚生労働省

 

2-1.2024年度調剤報酬改定における変更点と記載例

同意書の様式例の「かかりつけ薬剤師が実施すること」には、以下の内容が記載されています。

 

薬剤師の _______________ が
1. 安心して薬を使用していただけるよう、使用している薬の情報を一元的・継続的に把握します。
2. お薬の飲み合わせの確認や説明などは、かかりつけ薬剤師が担当します。
3. お薬手帳に、調剤した薬の情報を記入します。
4. 処方医や地域の医療に関わる他の医療者(看護師等)との連携を図ります。
5. 医療機関への入院時や医療機関からの退院時においても医療機関と連携を図り、継続的に担当します。
6. いつでもお薬についてご相談に応じます。
7. 血液検査などの結果を提供いただいた場合、それを参考に薬学的な確認を行います。
8. 調剤後も、必要に応じてご連絡することがあります。
9. 飲み残したお薬、余っているお薬の整理をお手伝いします。
10. 在宅での療養が必要となった場合でも、継続してお伺いすることができます。
注)かかりつけ薬剤師包括管理料は、医療機関で地域包括診療料/加算等が算定されている方が対象です。

引用:(別紙様式2)かかりつけ薬剤師指導料(かかりつけ薬剤師包括管理料)について|厚生労働省
 
2024年度調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師による相談体制に関する算定要件について見直しがありました。そのため、厚生労働省が提示する同意書の様式例に記載されていた「開局時間内/時間外を問わず、お問い合わせに応じます」が「いつでもお薬についてご相談に応じます」に変更されています。また、医療機関との連携を密にすることについて記載が追加されました。
 
参考:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
参考:(別紙様式2)かかりつけ薬剤師指導料(かかりつけ薬剤師包括管理料)について(令和4年度版)|厚生労働省
 

3.かかりつけ薬剤師の同意の取り方

かかりつけ薬剤師の同意を取るためには、メリットを丁寧に説明することや、制度を知ってもらう機会を増やすことが大切です。

 

3-1.メリットを説明する

かかりつけ薬剤師の同意を取るためには、かかりつけ薬剤師制度にはメリットが多いことを患者さんへ丁寧に説明することが大切です。
 
かかりつけ薬剤師制度では、継続して患者さんの服薬管理を実施するだけでなく、営業時間外の相談体制を整えています。追加でかかる費用は、1割負担で約30円、3割負担で約90円となり、この金額で手厚いサポートを受けられると説明すれば、患者さんに納得してもらいやすくなるでしょう。

 

3-2.見聞きする機会を増やす

同意を得るためには、受付や会計時などさまざまなタイミングで、定期的に伝えていくことが重要です。薬局内に掲示するなど、何度も見聞きする機会を作ることで関心が高まりやすくなります。
 
実際の成功事例を交えて説明すると、患者さんはかかりつけ薬剤師を持つことのメリットを具体的にイメージできるため、同意につながることもあるでしょう。

 
🔽 かかりつけ薬剤師の同意の取り方について解説した記事はこちら

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4.かかりつけ薬剤師の同意書に関する注意点

かかりつけ薬剤師の同意書に関する注意点には、さまざまなものがあります。詳しく解説します。

 

4-1.同意書の作成

同意取得の対象となる患者さんは、薬局に複数回来局している人です。そのため、初回来局時のアンケートの署名を同意書として扱うことはできません。
 
また、同意書を作成するためには、担当となる薬剤師が業務内容や意義、役割、費用などを説明する必要があります。そのため、初回アンケートにかかりつけ薬剤師の選択について意向を確認することは問題ありませんが、同意を取得する場合は同意書を用意して改めて説明することとされています。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その1)平成28年3月31日|厚生労働省

 

4-2.同意書の保管

患者さんが記名した同意書は薬局に保管し、患者さんの薬剤服用歴等に同意書を作成・保管していることを記載することとされています。
 
かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料を算定できるのは次回処方箋受付時以降となります。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

4-3.かかりつけ薬剤師の変更

かかりつけ薬剤師の退職や異動、かかりつけ薬局の変更、患者さんの転居などにより、かかりつけ薬剤師を変更することもあるでしょう。
 
かかりつけ薬剤師の同意書は、担当薬剤師による説明が必要です。そのため、かかりつけ薬剤師を変更する場合は、新たに患者さんから同意を得なければなりません。
 
また、同一月内は同一の薬剤師について算定することとされています。同じ薬局内の薬剤師に引き継ぐ場合は、月が替わった時点で算定できるよう患者さんから同意を得るタイミングを考慮した方がよいでしょう。
 
異なる薬局の薬剤師に変更する場合は、変更後の薬剤師が変更前の算定状況を患者さんに確認し、算定可能な時期を把握した上で、同意を得るとスムーズに進められます。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その1)平成28年3月31日|厚生労働省

 

4-4.患者さん本人から同意を得るのが難しい場合

患者さん本人から同意を得るのが難しい場合は、介護を行っている家族等から同意を得ることで差し支えないとしています。
 
なお、施設入所患者さん本人から同意を取得する場合、患者さんごとの状況に応じて判断するべきものであり、施設単位でまとめて同意を得るべきではないとしています。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その1)平成28年3月31日|厚生労働省

 

4-5.かかりつけ薬剤師の変更についての説明義務

かかりつけ薬剤師は患者さんが薬剤師を選択するものであるため、患者さんの意向で変更可能です。
 
患者さんがかかりつけ薬剤師制度についてしっかり理解できるよう、同意を取得するときは、かかりつけ薬剤師が変更可能なことも説明する必要があります。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)平成28年4月25日|厚生労働省

5.かかりつけ薬剤師の同意書を取得するために

かかりつけ薬剤師の同意書を取得するためには、患者さんに制度のメリットを理解してもらい、納得してもらうことが重要です。3割負担の場合、追加費用として数十円~百円程度を負担すれば、他医療機関を含めた処方薬管理や時間外対応などの手厚いサポートを受けられます。繰り返し案内しながらメリットを具体的に伝えることで、同意を得やすくなるでしょう。必要に応じてエピソードを交えながら説明を行い、患者さんがかかりつけ薬剤師を持つメリットをイメージできるよう工夫しましょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。