かかりつけ薬剤師の役割として2018年度改定で追加されたこと
処方内容のチェックや調剤、医師への疑義紹介、服薬指導やその記録などは、薬局の薬剤師が通常行うべき業務として診療報酬の算定要件に定められています。かかりつけ薬剤師の場合は、それらに加えて、患者さんがかかっている全ての医療機関や服用薬を一元的・継続的に把握し薬学的管理・指導を実施することや、開局時間外でも患者さんへの24時間の相談対応などが必要とされています。
2018年度改定では、必要に応じて血液検査などの結果を確認し、薬学的管理・指導を行うことも追加されました。これは、腎機能低下により投与量の調節が必要な薬剤が処方されている患者に対して、腎機能検査結果などを活用して、副作用や用法・用量などのチェックを行うことを想定したものです。最近、検査データを院外処方箋に印字する病院も増えていますが、その流れを受けたものといえるでしょう。
かかりつけ薬剤師が行う主な服薬指導等
- ア) 薬剤服用歴管理指導料に係る業務、患者の理解に応じた適切な服薬指導等の実施
- イ) 服用中の薬剤等について、服薬指導等の内容を手帳等に記載
- ウ) 患者の受診する全保険医療機関の情報や、処方薬、要指導医薬品、一般用医薬品、健康食品等の把握と薬剤服用歴への記載
- エ) 24 時間相談に応じる体制(※やむをえない事情がある場合、別の薬剤師の対応も可)
- オ) 患者が他の保険薬局等で調剤を受けた場合は、その服用薬等の情報を入手し薬剤服用歴に記載
- カ) 調剤後も患者の服薬状況の把握、指導等を定期的に行い、処方医に情報提供や処方提案をする。服用薬に係る重要な情報を知ったときは患者に情報提供し、薬剤服用歴に記載
- キ) 患者に対して、薬剤等を入れる袋等を必要に応じて提供し、ブラウンバッグ運動の意義等を説明。必要に応じて患家を訪問して服用薬の整理等を行う
- ク) 必要に応じ、患者の入手している調剤、服薬指導に必要な血液・生化学検査結果を参考として、薬学的管理・指導を行う
厳格化されたかかりつけ薬剤師の同意取得プロセスとその狙い
このように、かかりつけ薬剤師は、その患者さんの薬に関する情報全てを管理するワンストップ窓口です。そのため、かかりつけ薬剤師になることができるのは、1人の患者さんに対して1人の薬剤師のみ(月が変われば変更は可)で、事前に患者さんの同意を書面で得ることが必要です。
2018年度改定では同意取得のプロセスが厳格化され、かかりつけが必要な患者さんから、その仕組みや意義を理解・納得してもらったうえで、同意を得ることが重視されました。実際、全ての患者さんに、かかりつけ薬剤師が必要かといえばそうとは言えません。風邪などで一時的に受診した人などでは、継続的に服用薬を管理する必要性は低いためです。
そこで今回の改定では、下記のように複数回その薬局に来局している患者さんを対象とすること、また患者さんに対してかかりつけ薬剤師が必要だと判断した理由も説明すること、経歴や認定資格などその薬剤師に関する情報を文書により提供することなどが付け加えられました。
患者さんの同意取得に必要なこと
薬剤師本人が次に掲げる全ての事項を説明した上で、患者に対し、同意書に、かかりつけ薬剤師に希望する事項及び署名の記載を求め、同意を得る。また、かかりつけ薬剤師に関する情報を文書により提供する。
- ・かかりつけ薬剤師の業務内容
- ・かかりつけ薬剤師を持つことの意義、役割等
- ・かかりつけ薬剤師指導料(かかりつけ薬剤師包括管理料)の費用
- ・当該指導料を算定しようとする薬剤師が、当該患者がかかりつけ薬剤師を必要とすると判断した理由
この仕組みが、地域包括ケアシステムの中で定着するかどうかは、患者さんにとって適正に、効果的に運用されるかどうかにかかっています。かかりつけ薬剤師としてのやりがいは責任とともにあります。
同意書の様式例は厚生労働省で公開されていますので、参考にすることが可能です。
【厚生労働省】かかりつけ薬剤師指導料(かかりつけ薬剤師包括管理料)同意書(別紙様式2)
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