板挟みになったときに欠かせないのがコミュニケーション
管理薬剤師は、一般的な企業の中間管理職に当たります。相談内容のように、本社の指示に現場が反発するというのは、よくあるケースですね。
本社から指示が出たら、本社の担当者と密にコミュニケーションをとり、現場の代表として堂々と意見を伝えましょう。指示通りでは現場が反発すると思えば、受け入れられやすい方法を提案しましょう。
本社からは見えない現場のスタッフや患者さんの意見を伝えるのも大事な仕事です。そうして話し合いをする中で、本社の意図がわかれば、無理難題と感じなくなることもあります。
本社からの指示を現場に伝える際は、指示をそのまま伝えるか、内容をかみ砕いて現場に受け入れられやすい言い方に変えるか、指示の一部を先に伝えるかなど、伝え方に迷うところです。指示の内容や現場の状況に応じて、できるだけスムーズに受け入れられる方法を考えてから伝えましょう。
今回のご相談にある「受付処方せん枚数を増やせ」という本社指示を例に、受け入れられやすい伝え方を考えてみます。
・過去に同様の指示を受けていた場合は、本社からの指示をそのまま伝えて、「大変ですが、もうひと踏ん張り頑張りましょう」と協力を依頼する
・初めての指示であれば、「受付処方せん枚数を増やせと指示がありました。いろいろ方法や考え方があると思うので、みんなで対応を話し合いたいと思います」のように前向きな表現で伝える
・本社への反発が強い職場であれば、指示とは言わずに「受付処方せん枚数を少しでも増やすために、どんな方法があるかみんなで考えたいと思います。何でも意見を出してください」などと提案する
現場の状況や雰囲気・スタッフの反応を受けとめながら、薬局全体で協力して進めていきたいという意向を打ち出していきましょう。私自身も経験したことですが、現場に反発されて指示の内容を変えるようなことをすると、かえって不信感につながり、のちのち調整に苦慮することが多いように感じます。管理薬剤師として現場を導いていく意思を強く持ち、スタッフとの対話を密にしましょう。
無理難題を乗り越えてチーム力を高めるきっかけに
現場との話し合いでは、スタッフと同じ目線で物事を考えていく姿勢が必要です。リーダーシップを発揮して、現場が嫌がることも一緒にやってみる。「最初は大変だけどみんなで頑張ってやってみよう」と励ましてアイディアを出し合う、などです。私の経験ですが、最初は無理難題だと感じた指示でも、全員で協力して成果を上げることができた時は、充実感や達成感を感じることができるものです。そしてその経験によってチーム力が高まり、共通の目標に向かう連帯感が生まれます。
本社と現場の板挟みになったとしても、薬局でやるべきことはひとつ。患者さんの薬物治療をサポートすることです。ひとりでも多くの患者さんのお役に立てるよう、チーム力を高めるきっかけとして本社からの難題を乗り越えてほしいと思います。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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