





相談者さんの考える通り、勤務体系や職責にかかわらず、医療の現場で患者さんと向き合うからには、知識や技術のアップデートは必須でしょう。新薬や治療法が次々に発表される中で命にかかわる仕事をするのですから、それらを身につけなければ自信をもって服薬指導できないように感じます。
とはいえ、パートさんは別の事情を抱えているかもしれません。アップデートする意欲がない訳ではなく、仕事と私生活のはざまで学びの時間を確保することが難しいのかも…。「常勤として働きたい」と思っていても現実には難しい状況にあるとすれば、学びを深めることができないもどかしさや悔しさを抱えている可能性すらあるのです。薬局長として、パートさんの状況を推察して、常に思いやりの気持ちをもって接することを目指しましょう。
たとえば、頭ごなしに「間違いが多い」「知識をアップデートしてください」と言われたら、パートさんはどのように感じるでしょうか。「そんなこと分かってる、私だって勉強したいと思ってるけど、時間がないのよ」「常勤じゃないんだから、そこまで要求されても困る」等、言葉にはしにくい複雑な心境かもしれません。
そこで、指導するときは、「お疲れ様です。ちょっと相談したいことがあるのですが、よろしいですか?」などと前置きしてから始めましょう。スタッフの心構えができていないままいきなり厳しく指導をすると、反射的に「そんなこと無理」と思われたり、本心でないにもかかわらず「辞めます」などと言い出されてしまうかもしれません。
スタッフの心構えができた後、現状をやんわりと伝え、学びの必要性について話し合ってみてはいかがでしょうか。その際、「私はパートさんにもアップデートしてほしいと思っているけど、〇〇さんはどのように考えていますか」のように相手の思いを引き出す伝え方を心がけてほしいと思います。相手の価値観や状況、考え方を理解しようとすることで、相手の受けとめ方ががらりと変わることを心に留めましょう。

パートさんが「新しい知識を身につけたくても時間がない」ということであれば、具体的な方法を相談して「一緒にスキルアップしていきましょう」という姿勢を伝えてほしいと思います。短時間でいいから毎日新情報に触れる時間を作るように工夫する。休憩時間などにサッと目を通せるように資料を用意しておき、「いつでも見てくださいね」と声をかける。読む時間もないのであれば、新薬が出たときに「今回の薬の特徴について説明します」と伝えて、メモを取るように促す等さまざまな方法でアプローチしましょう。
薬局長の声掛けは「あなたを頼りにしています」「期待しています」と伝えることになりますから、パートさんも気持ちが前向きになるのではないでしょうか。



株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/


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