第29回 関口太郎 先生
患者さんに寄り添い、「一歩踏み込んだ服薬指導」をしたいと考えているものの、なかなか実践に結びつかないということはありませんか?
今回は横須賀の地に根ざし、ときには患者さん宅まで足を運んで服薬後のフォローアップを行うなど、地域の人たちの信頼に応える薬剤師・関口太郎先生にお話をうかがいました。全4回のシリーズです。
病院で検査までしてもらったのに、体調不良の原因がわからないままでは誰でも不安になるものです。私がこれまでに出会った患者さんの“思いがけない”体調不良の原因について、いくつかご紹介します。
7月のある日、右腕が上がらないと訴える患者さんのAさんが来局されました。MRIなどの画像検査を行っても異常はなかったと言いますが、通院してもなかなかよくならないことに不安を感じているようです。
ある日の投薬中に、Aさんがもらした「夏場だけど、身体に冷えがある」という訴えが引っかかりました。
「家にいるときには1日中エアコンをつけているんですか?」と尋ねると、「暑いので1日中つけています。夜寝るときにもつけっぱなしですよ」とのこと。その言葉を受けて、私は寝室の間取り図を書いてもらい、そこにAさんがいつも寝ている場所とエアコンの位置を書き込んでもらいました。
それを見てみると、患者さんの寝ている位置はエアコンの真下でした。さらに、「エアコンの風はもしかして吹き降ろしてないですか?」と尋ねると、風が当たらないと暑いので、風向は真下に向くようにしていると言います。Aさんは一晩中、エアコンの風を右腕に受けながら睡眠をとっていたのです。
そこで、エアコンの風が直接当たらないように扇風機を利用するなどして一晩中風が当たるのは避けるようにアドバイスしたところ、症状の改善がみられなかった右腕が上がるようになりました。
はじめに倦怠感、ついで不眠と嘔吐が出現し、しばらくして収縮期血圧が180mmHgにも上昇して、あわや入院ということになった患者のBさん。しかし、いざ入院という前に血圧値が正常値に下がり、体調も戻りました。
この急激な体調変化に思い当たることはないか、もしあったらいつでも相談してほしいと話したところ、あるサプリメントを持って来局しました。それは、人体に有害な不純物が含まれているとして販売停止になり、一時期テレビを賑わせていた輸入サプリメントでした。
「急に販売停止になって手に入らなくなったので、ここ最近は飲んでいません」とのこと。体調の回復はサプリメントの中止によるものだと考えられました。患者さんはサプリメントの報道のことをご存じなかったようなので、事情を説明し、健康被害を受けている可能性があるため、念のために病院を受診してもらうことにしました。血液検査をしてみたところ、異常値を示す項目が見つかり、すぐに加療され、健康を取り戻すことができました。
服薬指導というと、話をすることに終始してしまうことが多いですが、もし言葉だけで伝わらないときには、お互いに図や絵などを描いて意思疎通をし合うことも有用な手段です。
描いているうちに普段感じていることや、生活の様子を話し出す患者さんもいるので、会話だけではわからなかった不調の原因を見つけ出すきっかけとなり、ひいては患者さんの健康のための手助けとしてつなげることができるようになります。
病院で検査までしてもらったのに、体調不良の原因がわからないままでは誰でも不安になるものです。私がこれまでに出会った患者さんの“思いがけない”体調不良の原因について、いくつかご紹介します。
7月のある日、右腕が上がらないと訴える患者さんのAさんが来局されました。MRIなどの画像検査を行っても異常はなかったと言いますが、通院してもなかなかよくならないことに不安を感じているようです。
ある日の投薬中に、Aさんがもらした「夏場だけど、身体に冷えがある」という訴えが引っかかりました。
「家にいるときには1日中エアコンをつけているんですか?」と尋ねると、「暑いので1日中つけています。夜寝るときにもつけっぱなしですよ」とのこと。その言葉を受けて、私は寝室の間取り図を書いてもらい、そこにAさんがいつも寝ている場所とエアコンの位置を書き込んでもらいました。
それを見てみると、患者さんの寝ている位置はエアコンの真下でした。さらに、「エアコンの風はもしかして吹き降ろしてないですか?」と尋ねると、風が当たらないと暑いので、風向は真下に向くようにしていると言います。Aさんは一晩中、エアコンの風を右腕に受けながら睡眠をとっていたのです。
そこで、エアコンの風が直接当たらないように扇風機を利用するなどして一晩中風が当たるのは避けるようにアドバイスしたところ、症状の改善がみられなかった右腕が上がるようになりました。
はじめに倦怠感、ついで不眠と嘔吐が出現し、しばらくして収縮期血圧が180mmHgにも上昇して、あわや入院ということになった患者のBさん。しかし、いざ入院という前に血圧値が正常値に下がり、体調も戻りました。
この急激な体調変化に思い当たることはないか、もしあったらいつでも相談してほしいと話したところ、あるサプリメントを持って来局しました。それは、人体に有害な不純物が含まれているとして販売停止になり、一時期テレビを賑わせていた輸入サプリメントでした。
「急に販売停止になって手に入らなくなったので、ここ最近は飲んでいません」とのこと。体調の回復はサプリメントの中止によるものだと考えられました。患者さんはサプリメントの報道のことをご存じなかったようなので、事情を説明し、健康被害を受けている可能性があるため、念のために病院を受診してもらうことにしました。血液検査をしてみたところ、異常値を示す項目が見つかり、すぐに加療され、健康を取り戻すことができました。
服薬指導というと、話をすることに終始してしまうことが多いですが、もし言葉だけで伝わらないときには、お互いに図や絵などを描いて意思疎通をし合うことも有用な手段です。
描いているうちに普段感じていることや、生活の様子を話し出す患者さんもいるので、会話だけではわからなかった不調の原因を見つけ出すきっかけとなり、ひいては患者さんの健康のための手助けとしてつなげることができるようになります。
北海道医療大学卒後米国遊学。東京大学医学部附属病院薬剤部研修生。虎の門病院薬剤部入局。東京大学医学部附属病院薬剤部入局。平安堂薬局入社。その後、関口調剤薬局に入局し、現在に至る。地域の住民が気軽に立ち寄れる薬局づくりをめざし、管理栄養士による無料の栄養指導などを定期的に開催している。