薬剤師のスキルアップ 更新日:2023.11.10公開日:2018.11.15 薬剤師のスキルアップ

外国人の患者に英語で服薬指導できる?

文:加藤鉄也(研修認定薬剤師、JPALSレベル6)

「いつから症状が現れましたか」英語で言えますか?

答えは、「When did the symptoms begin to appear?」
石川県薬剤師会の調査によると、6割以上の薬局が外国人に投薬等の応対を行った経験があると回答。
また、くすりの適正使用協議会の調査では、約9割の薬剤師が外国人患者の対応に不安を感じているという結果も。
今後薬剤師にとってますます必要性が高まる英会話の中でも、今回は服薬指導時について考えてみましょう(薬剤師に必要な英会話・基本編はこちら)。

日本語が話せない外国人は急性疾患の可能性も

観光や滞在して間もない日本語が話せない外国人が、病院や薬局に訪れるのは、高血圧や糖尿病のような慢性疾患ではなく、感冒や副鼻腔炎、外傷などの急性疾患による治療を求めている可能性が高いと考えられます。
急性疾患の患者さんに対する服薬指導は、日本語でも苦戦することがあり、英語となればなおさら、難しく感じてしまうかもしれません。
とはいえ、患者さんは待ってはくれません。見知らぬ海外での治療に患者さんも不安を感じています。できる限りの対応ができるよう普段から備えておくとよいでしょう。

服薬指導時の英会話実例

服薬指導時の英会話は、まずは病状を確認します。次に、用法や用量・使用方法を説明。最後に、薬の効果や副作用を説明するという流れになります。

<病状の確認>
What is the problem? どんな問題がありますか?
What are the symptoms? どんな症状でしょうか?
When did the symptoms begin to appear? いつから症状が現れましたか?
How high is your fever? 熱は何度ありますか?
<具体的な症状>
I have pain in my foot. 足に痛みがあります
I am feeling cold. 寒気がします
I have fever. 熱があります
I have a runny nose. 鼻水が出ます
Diarrhea. 下痢
Coughing.
Phlegm. たん
Nausea. 吐き気
<用法・用量・タイミング>
Once a day 1日1回
Twice a day 1日2回
3 times a day 1日3回
1 table 1錠
1 capsule 1カプセル
1 pack 1包
In the morning/afternoon/evening 朝/昼/夕
Before meals 食前
After meals 食後
Right before meals 食直前
Right after meals 食直後
<薬効>
It eases pain. 痛みを和らげます
It stops itching. かゆみを止めます
It stops diarrhea. 下痢を止めます
It stops coughing. 咳を止めます
It brings fever down. 熱を下げます
It reduces phlegm. たん絡みをとります
It alleviates nausea. 吐き気を抑えます
This is a gargle. うがい薬です
This is an antibiotic. 抗生物質です

服薬指導の英会話はツールの活用を

すべて英会話でやり取りせず、受診理由や主訴に関して問診票やお伺い書などに記入してもらい、文書として残しておきます。イラストや文章を印刷しておき、症状や具体的な部位を指し示してもらうのもよいでしょう。そのうえで、上記のような英文で再確認をしてみてください。

症状の確認は、石川県薬剤師会のホームページで公開されているイラストが便利です。また、用法、用量は英語で記載した紙を事前に作成し、薬袋に貼付したうえで、口頭で説明します。
特に吸入や点鼻薬など説明が難しい薬は、薬の指導説明書に英語の説明を加えたものを作成しておくと便利です。こちらも石川県薬剤師会のホームページで紹介されている「薬袋作成支援ツール」や、くすりの適正使用協議会が運営する「くすりのしおり英語版」が役立ちます。

 

また、大阪府が配布している外国語版の「薬の効能・効果」によく出る薬の薬効をまとめておとよいでしょう。
さらに、石川県薬剤師会が配布する「服薬説明ツール」や「くすりのしおり英語版」の「Precautions while taking this medicine」を参考にして、副作用についても説明文を準備しておくと安心です。

 

日本語であっても、相手によっては伝わりづらいことのある服薬指導。母国語以外の服薬指導の場合、情報不足や誤認識のリスクはさらに高くなります。事前の準備をして、できるだけ健康被害のリスクを低くしたいものです。
外国人の患者さんにスムーズな対応ができるように、薬局内で一度話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。

 
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執筆/加藤鉄也

薬剤師。研修認定薬剤師。JPALSレベル6。2児の父。
大学院卒業後、製薬会社の海外臨床開発業務に従事。その後、調剤薬局薬剤師として働き、現在は株式会社オーエスで薬剤師として勤務。小児、循環器、糖尿病、がんなどの幅広い領域の薬物治療に携わる。医療や薬など薬剤師として気になるトピックについて記事を執筆。趣味は子育てとペットのポメラニアン、ハムスターと遊ぶこと。

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