キツイ、辛いと思われがちな薬剤師の在宅訪問ですが、薬剤師しかできない唯一のポリファーマシーができる貴重な現場でもあります。在宅業務を15年以上手がける熱血薬剤師・加藤健司さんは、在宅の現場は、薬剤師が輝ける舞台だと力説します。「薬剤師の在宅業務とは――在宅は大変? キツイ? Vol.1」「薬剤師在宅コミックルポ 在宅訪問が辛い、やりたくない Vol.2」「辛い、キツイ…薬剤師の在宅業務を乗り切る秘訣 Vol.3」と在宅の現場について紹介してきたコミックルポも今回が最終回。「辛い」ことばかりだと思っていた在宅業務のイメージが少し変わったのではないでしょうか?
辛い在宅でも薬剤師が輝ける舞台となる
「患者さんの人生というドラマにおいて、患者さんは主人公であり、薬剤師は脚本家だとお話ししました(Vol.2)。ときに薬剤師は主役にもなります」
こう話すのは、薬剤師の在宅業務を長年にわたって続けている加藤健司さん。
「薬剤師が輝くシーンとは、ずばり“ポリファーマシー(処方再設計)”です。患者さんの様子を観察していると、薬の飲み残しに気付くことがあります。でも患者さんはすこぶる元気。だとしたら薬は不要なはずですよね」
総合病院で複数の診療科を受診した患者さんは、それぞれの医師から処方せんが出されるケースがあります。ところが、医師どうしが処方せんの内容を把握していないことも…。そこでパワーを発揮するのが薬剤師。
「医師に減薬を提案できるのは薬剤師の特権。ポリファーマシーが実現すれば『服用薬剤調整支援料』によって点数加算されるだけでなく、『薬が減った』と患者さんからも喜ばれます」
加藤さんは、薬剤師が輝くシーンは“医療チームと介護チームの橋渡し”にもあるといいます。
「在宅医療のチームは、ときに患者さんの治療方針を巡って対立することも…。日常的に患者さんに寄り添っているケアマネやヘルパーさんが、医師や看護師の治療方針に意見をするときがある。ケアマネやヘルパーには元看護師の人も多く、医療の知識がある場合はなおさらです。そんなときは、薬剤師の出番。私はときに医療チームと介護チームの間に立って、冷静な意見を述べる、仲裁役をすることもあります」
加藤さんいわく、薬剤師の在宅ワークは、“薬剤師が輝ける舞台”。薬局という狭い世界から飛び出し、働くフィールドが広がるとも。
「在宅医療は、薬剤師としてだけでなく、人として成長できる、素晴らしい仕事です」
在宅のスキルは薬剤師が転職するときの切り札に。そして在宅のキャリアを持つ薬剤師には、多くの求人があります。みよの台薬局グループのように、在宅時には、専属ドライバーがつくという企業も。在宅で悩んでいるなら、転職活動の一歩を踏み出してみて。
お話を聞いたのは…薬剤師 加藤健司さん
みよの台薬局グループ 薬局事業本部副本部長。2002年にみよの台薬局グループで本格的に在宅医療に着手。2016年に総合メディカルグループとなり、現在は約1万2000人の在宅患者を抱え、業界を牽引。「在宅は患者を幸せにする素晴らしい仕事」を信条に、薬学生や若手薬剤師を育成している。趣味はレース観戦とお酒で、特にビールが大好き。
取材・文/中条礼子 コミック/なとみみわ