インタビュー 公開日:2024.08.23 インタビュー

 

薬剤師・薬局の仕事は、一般の利用者の立場からは分かりにくい部分も多いかもしれません。薬剤師・薬局に関する素朴な疑問について、薬剤師さんに詳しく解説してもらいました!

 

薬剤師による「薬の説明」はなぜ必要なの?

 

国民の健康な生活を確保するため、必要な情報を提供するよう法律で決められています

長い待ち時間の後、ようやく薬を受け取れると思ったら、薬剤師からの説明が始まった――。「早く帰りたいのにな」とがっかりする患者さんの気持ちも、薬剤師は分かっています。しかし、ちょっと待ってください。薬剤師には、調剤や医薬品の供給などを通して、公衆衛生の向上や増進、ひいては国民の健康な生活を確保するという重要な任務があるのです。
 
参照:薬剤師法 第一条 薬剤師の任務|e-Gov 法令検索
 
その任務を果たすため、薬剤師は、医薬品が適切に使われるように、患者さんに必要な情報を提供し、必要な薬学的知見に基づく指導をしなければならないことが薬剤師法に定められています。
 
参照:薬剤師法 第二十五条の二 情報の提供及び指導|e-Gov 法令検索
 
また、以前から薬を服用している患者さんについては、服薬状況や薬剤服用歴を確認しなければならず、さらに処方箋を発行した保険医が後発医薬品(ジェネリック医薬品)への変更を認めている場合は、患者さんに対して後発医薬品に関する説明を適切に行う必要もあります。
 
参照:保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則) 第八条 調剤の一般的方針|e-Gov 法令検索
 
その他、次のような薬学的知見に基づく指導も行わなければなりません。
 

● 飲み忘れ時の対応
● 効果が現れているかどうかの確認(可能な場合は検査値のモニタリング)
● 副作用が起きていないかどうかの確認(モニタリング)
● 重篤な副作用発生時の対処方法の教育
● 一般用医薬品やサプリメントなどを含め、併用薬と食事との相互作用の確認

参照:薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)|日本薬剤師会
 
これら指導の内容は、すべて患者さんごとに作成している「薬剤服用歴」に記録する決まりになっています。薬剤服用歴は、調剤報酬(薬学管理料)という薬局の収入の根拠となる重要な記録でもあります。患者さんへの説明や確認が不十分だったり、薬剤服用歴に未記載だったりする場合は報酬返還の対象になってしまいます。
 
参照:薬剤服用歴の取扱い等について|厚生労働省東北厚生局
 
こうした事情があって、薬剤師は患者さんが安全に薬を服用できるように言葉を尽くして説明・確認するとともに、記録に残しているのです。その記録は次回以降の継続的な指導にも生かされます。
 
以上のことは調剤薬局や病院などの医療機関で扱う医療用医薬品の話ですが、市販の一般用医薬品の一部(第一類医薬品)も購入の際には薬剤師が個別に情報提供しなければならないことになっています。これはインターネット販売でも同様で、購入者からのメールに対して自動で返信したり、一律に一斉送信したりするだけでは認められません。しかし、購入者から「継続使用であり説明の必要はない」という意思表示があり、薬剤師が適正使用できると判断した場合は除外されます。
 
参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法) 第三十六条の十 一般用医薬品に関する情報提供等|e-Gov 法令検索
 
それほど長い時間は取らせないので、どうぞ薬剤師の言葉に耳を傾けてください。薬剤師が説明をするのは、皆さんに医薬品を安全に使っていただくためです。その時点の患者さんの状態などを踏まえた上で、必要な指導や情報提供をしているので、すぐに役立つことも多いはず。そして、不安なことや分からないことがあれば、何でも聞いてみてください。

藤野紗衣さんのプロフィール画像
執筆/藤野紗衣(ふじの さえ)

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
ウェブサイト:https://www.knowledge-ring.jp/

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