薬剤師・薬局の仕事は、一般の利用者の立場からは分かりにくい部分も多いかもしれません。薬剤師・薬局に関する素朴な疑問について、薬剤師さんに詳しく解説してもらいました!
マイナンバーカードがあれば「お薬手帳」は不要になるの?
マイナ保険証では市販薬や直近の薬の情報が確認できないため、お薬手帳は引き続き必要です
従来の健康保険証は2024年12月2日をもって新規発行が終了し、それ以降は「マイナ保険証」(マイナンバーカードの健康保険証利用)を基本とする仕組みへ移行しました。すでにマイナ保険証を使って医療機関を受診している方も多いのではないでしょうか。
「マイナ保険証があれば、薬の情報もデータで管理されているのだから、お薬手帳はいらないのでは?」といった疑問を持つのも無理はありません。確かに、薬剤師などの医療従事者による情報閲覧に同意すれば、過去に処方・調剤された薬の情報を確認してもらうことができます。具体的には、過去5年分(手術に関しては過去3年分)の情報が参照可能です。
しかし、それでもお薬手帳はなくなりませんし、引き続き活用する価値があります。その理由は大きく分けて2つあります。
1. 市販薬(OTC医薬品)の情報はマイナ保険証では分からない
マイナ保険証(マイナポータル)で確認できるのは、医療機関で保険を使って処方された薬の情報に限られます。ドラッグストアなどで自ら購入した風邪薬や鎮痛薬などの一般用医薬品(OTC医薬品)、サプリメントなどの服用歴は反映されません。飲み合わせの悪い薬や、重複してはならない成分の確認をするためには、これらを含めたすべての服用情報をお薬手帳に記録し、薬剤師に見せることが非常に重要です。
2. 情報の反映にタイムラグがある
ここが意外と知られていないポイントですが、マイナポータルなどで確認できる処方情報は、すぐに反映されるわけではありません。電子処方箋に対応していない医療機関や薬局の場合、医療費の請求データ(レセプト)を基に情報が登録されるため、実際に薬を受け取ってからマイナポータルに反映されるまで、1か月程度の時間がかかることがあります(原則、毎月11日以降に前月分の情報が更新)。つまり、「数日前に別の病院でもらった薬」の情報は、マイナ保険証だけでは薬剤師が確認できない可能性が高いのです。直近の薬との飲み合わせを確認するためには、その場で最新情報が分かるお薬手帳が不可欠です。
参考:電子処方箋(電子処方せん) Q&A(国民の皆さま向け)「Q31.お薬手帳は不要になりますか。」|厚生労働省
参考:特定健診情報・薬剤情報・診療情報に関するよくある質問(FAQ)「Q.診療情報ではどのような情報が閲覧できますか。」|医療機関等向け総合ポータルサイト
「紙の手帳を持ち歩くのが面倒」という方には、スマートフォンのアプリで管理できる「電子版お薬手帳」がお勧めです。電子版お薬手帳には、マイナポータルと連携して薬剤情報を自動で取り込む機能を持つものや、チャット機能で薬剤師に気軽に相談できる機能が付いているものもあります。自身の好みに応じて、紙と電子版、使いやすい方を選んでみてください。
最近では、健康診断や予防接種の会場でも、現在服用している薬の確認のためにお薬手帳を持参する方が増えてきました。自身の健康管理に対する意識が高まっていることを感じ、薬剤師としても大変うれしく思っています。今飲んでいる薬を正しく把握し、安全な医療を受けるために、マイナ保険証とお薬手帳はセットで活用していきましょう。

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
ウェブサイト:https://www.knowledge-ring.jp/





