【外資系製薬大手17年通期決算】ギリアド除き、揃って堅調‐ヒュミラは1剤で約2兆円の売上
抗癌剤が成長後押し
外資系製薬大手の2017年通期業績は、C型肝炎治療薬の大幅減で二桁減収となった米ギリアド・サイエンシズを除き堅調だった。大型医薬品の特許切れも少なかったことに加え、事業の選択と集中が一巡したこと、同業他社の買収効果が反映された結果ともいえる。中でも米アッヴィは唯一の二桁成長となり、関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」は売上184億ドルと記録的なセールスを達成し、前年に引き続きトップ製品となった。全体的に抗癌剤事業が各社の成長を押し上げた。
米ファイザー
ファイザーは、昨年2月に注射器や注入ポンプなどのインフュージョン製品を手がけるホスピーラ・インフュージョン・システム(HIS)を売却したことにより、売上高で前年比1%減の525億ドルとなった。HIS売却の影響を除いた場合は、2%増としている。
新薬群のイノベーティブヘルス(IH)事業は、9%増の314億ドルと伸長。肺炎球菌ワクチン「プレベナー13」が2%減の56億ドルとなり、ワクチン全体でも1%減の60億ドル、関節リウマチ治療薬「エンブレル」も16%減の24億ドルと売上を落としたが、癌領域で「アイブランス」が46%増の31億ドルと躍進し、領域全体で33%増の60億ドルと成長した。また、抗凝固薬「エリキュース」が、連携先の売上高を含めて47%増の25億ドルと大幅成長したほか、主力の疼痛剤「リリカ」も8%増の45億ドルと堅調に推移した。
一方、特許切れ製品を扱うエッセンシャルヘルス事業は、11%減の211億ドル。高コレステロール血症薬「リピトール」は11%増の19億ドル、バイオシミラー群が67%増の5億ドルとなったが、注射剤群が6%減の56億ドルとなった。
スイス・ノバルティス
ノバルティスは、乾癬治療薬「コセンティクス」、心不全治療薬「エントレスト」などの成長製品が、抗癌剤「グリベック」の特許切れによる減収を吸収し、ドルベースで1%増の491億ドルと増収を確保した。
新薬のイノベーティブメディスンは、9製品で10億ドル以上を達成。多発性硬化症治療薬「ジレニア」は2%増の31億ドル、コセンティクスは84%増の20億ドルとなり、ジレニアに続く自社2番目の売上高となった。加齢黄斑変性治療薬「ルセンティス」は3%増の18億ドル、抗癌剤「タシグナ」は6%増の18億ドルとなった。グリベックは後発品の影響で42%減の19億ドルと落ち込んだ。エントレストは5億ドルを計上した。
ジェネリック医薬品(GE薬)子会社のサンドは、薬価引き下げの影響を受け1%減の101億ドルとなった。バイオ医薬品では12%増の11億ドルと成長、眼科製品を手がける子会社のアルコンでは4%増の60億ドルとなった。
スイス・ロシュ
ロシュは、医薬品と診断薬が共に成長し、売上高が5%増の532億スイスフラン(CHF)となった。
医薬品事業は、5%増の421億CHF。抗癌剤「パージェタ」が19%増の21億CHF、「テセントリク」が約3倍の4億CHF、「アレセンサ」が約2倍の3億CHFと躍進したのに加え、主力製品も「マブセラ/リツキサン」が1%増の73億CHF、「ハーセプチン」が3%増の70億CHFと堅調に推移した。
癌以外では、昨年に米国で承認された多発性硬化症(MS)治療薬「オクレバス」は8億CHFを計上。関節リウマチ治療薬「アクテムラ/ロアクテムラ」は14%増の19億CHFと昨年に続き二桁成長となった。
診断薬事業は、5%増の120億CHFとなった。
仏サノフィ
サノフィは、糖尿病領域の落ち込みを、サノフィジェンザイムのスペシャリティケア製品とワクチン、コンシューマヘルスケアの成長でカバーし、3.6%増の350億ユーロとなった。
医薬品では、3.1%減の251億ユーロと売上を落とした。糖尿病・心疾患領域では、主力のインスリン製剤「ランタス」が17.5%減の46億ユーロとなり、11.1%減の63億ユーロと落ち込んだ。
一方、希少疾患群で、ゴーシェ病治療薬「サデルガ」、糖尿病II型(ポンペ病)治療薬「マイオザイム/ルミザイム」、ファブリー病治療薬「ファブラザイム」が成長し、6.0%増の28億ユーロ、癌領域では「ジェブタナ」や「サイモグロブリン」が成長し、6.4%増の15億ドルとなった。
そのほか、ワクチン事業のサノフィ・パスツールは、11.4%増の51億ユーロと二桁成長。コンシューマーヘルスケアは、独ベーリンガーインゲルハイムのコンシューマーヘルスケア事業を獲得したことにより、45.1%増の48億ユーロとなった。
米メルク
メルクは、糖尿病治療薬「ジャヌビア/ジャヌメット」、脂質異常症治療薬「ゼチーア/ヴァイトリン」の落ち込みを、抗癌剤「キイトルーダ」、C型肝炎治療薬「ゼパチア」の躍進でカバーし、1%増の401億ドルと増収を維持した。
医薬品事業は1%増の353億ドル。「ジャヌビア/ジャヌメット」が3%減の58億ドル、「ゼチーア/ヴァイトリン」が43%減の20億ドル、HIV治療薬「アイセントレス」が12億ドルと落ち込んだが、「キイトルーダ」が2.7倍の38億ドルと大幅成長、「ゼパチア」も3倍弱の16億ドルとブロックバスター製品となった。ワクチン群も、HPVワクチン「ガーダシル」が6%増の23億ドル、肺炎球菌ワクチン「ニューモバックス」が28%増の8億ドルと成長した。
そのほか、アニマルヘルスは11%増の38億ドルとなった。
米ジョンソン・エンド・ジョンソン
ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬事業は、新製品の抗癌剤「ダザレックス」「インブルビカ」など複数の大型製品の伸長で8.3%増の363億ドルに成長した。
免疫領域では、関節リウマチ治療薬「レミケード」が9.6%減の63億ドルと落ち込んだが、乾癬治療薬「ステラーラ」が23%増の40億ドルと成長し、2%増の122億ドルとなった。
癌領域では、多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド」が9%減の11億ドルと苦戦したが、ダザレックスが2倍以上の12億ドルと急成長。前立腺癌治療薬「ザイティガ」は10.8%増の25億ドルと伸ばし、全体で25%増と牽引した。循環器領域では抗凝固薬「イクザレルト」が9.3%増の25億ドルとなった。
米アッヴィ
アッヴィは、主力の関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」、抗癌剤「インブルビカ」の二桁成長で16%増の282億ドルと成長した。
ヒュミラは、14%増の184億ドル。イムブルビカは、40.5%増の25億ドルと躍進した。一方、C型慢性肝炎(HCV)治療薬は、16%減の12億ドルと売上を落とした。
米ギリアド・サイエンシズ
ギリアド・サイエンシズはC型肝炎治療剤「ハーボニー」「ソバルディ」の大きな落ち込みにより、15%減の256億ドルと大幅減収となった。
全ジェノタイプに対応したC肝治療薬「エプクルサ」は倍増の35億ドルと大きく伸ばしたが、ハ
ーボニーはほぼ半減の43億ドル、ソバルディは76 %減の9億ドルだった。
抗HIV薬では、アトリプラが31%減の18億ドル、ツルバダが13%減の31億ドルとなった一方、ゲンボイヤ配合錠が2.5倍の36億ドルと急伸した。
米イーライリリー
イーライリリーは、2型糖尿病治療薬のGLP-1作動薬「トルリシティ」の大幅な拡大が寄与し、8%増の229億ドルとなった。
主力品では、勃起不全改善薬「シアリス」が6%減の23億ドル、抗癌剤「アリムタ」が10%減の20億ドルとなったが、インスリン治療剤「ヒューマログ」が3%増の28億ドル、骨粗鬆症治療剤「フォルテオ」が17%増の17億ドルと好調だった。
新製品では、トルリシティが約2.2倍の20億ドルと大型製品に成長したほか、乾癬治療薬「トルツ」が約5倍の5億ドルと寄与した。
英グラクソ・スミスクライン
グラクソ・スミスクライン(GSK)は、HIV領域や呼吸器領域が伸長し、8%増の302億ポンドとなった。
医療用医薬品は、7%増の173億ポンド。呼吸器領域では、主力の抗COPD薬「セレタイド/アドエア」が10%減の31億ポンドと落ち込んだが、「レルベア/ブレオエリプタ」が62%増の10億ポンドと急成長し、ブロックバスターとなった。「アノーロエリプタ」も70%増の7億ポンドと躍進。領域全体で7%増の69億ポンドとなった。
ヴィーブヘルスケアのHIV事業は、「トリーメク」が42%増の24億ポンド、「テビケイ」が47%増の14億ポンドと好調に推移し、全体で22%増の43億ポンドとなった。
ワクチン事業は、髄膜炎ワクチンが伸長し、12%増の51億ポンドと成長。特許切れのエスタブリッシュ製品は2%減の55億ポンド、コンシューマーヘルスケアは7%増の77億ポンドとなった。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2017年度の大手外資系製薬会社の決算結果が出揃いました。
中でもアッヴィ(米)は二桁の成長で、そのほかもおおむね堅調でした。
唯一大幅減収したのはギリアド・サイエンシズ(米)で、C型肝炎治療薬のハーボニー、ソバルディの減収が響いたようです。