医療

ポリファーマシーで認定制度‐高齢者の不適切処方に対応

薬+読 編集部からのコメント

3年後を目途に、一般社団法人薬局共創未来人財育成機構が「高齢者薬物治療認定薬剤師制度」をスタートさせるというニュース。高齢者のポリファーマシーなど不適切処方に対応できる薬剤師の育成を狙いとしています。

臨床能力ある薬剤師養成へ

 

一般社団法人薬局共創未来人財育成機構は、高齢者のポリファーマシーなどの不適切処方に対応できる高い臨床能力を持つ薬剤師を育成するため、「高齢者薬物治療認定薬剤師制度」をスタートさせる。地域のチーム医療において、薬剤師が本質的な機能を発揮できる臨床への応用力を養成するのが狙い。医師と協働して症例検討、ロールプレイワークショップを行う実践的な研修が特徴で、学んだ知識とスキルを薬局で受ける不適切処方への対応に生かし、処方提案書も提出する。全ての薬剤師に門戸を開き、3年後をメドに認定を始める。


 

高齢者が多種類の薬を服用しているポリファーマシーが社会問題となる中、医療チームの一員として薬剤師の積極的な関与が期待されている。厚生労働省検討会の報告書「健康サポート薬局のあり方」でも、かかりつけ薬局・薬剤師が備えるべき機能として、処方医をはじめとする医療機関との連携強化を求めている。

 

ただ、保険薬局への風当たりは厳しいのが現状で、かかりつけ機能を十分に発揮できず、薬剤師が本来の役割を果たしていないことが社会的に批判されている。こうした中、地域のチーム医療において本質的な機能を発揮できる高い臨床能力を持ち、不適切処方に対応できる薬剤師の養成を目指し、ポリファーマシーに詳しい医師らと協働して認定制度を立ち上げることになった。

 

認定薬剤師は、合併症の多い高齢者の他科受診や生理機能の低下に起因する様々な薬物治療の問題に対して、改善に必要な基礎知識を習得し、医師の処方意図に基づき検討することができる薬剤師と定義。24日に都内でスタートアップセミナーを開き、認定のための研修を開始する。現在、申し込み受付中。さらに、必要な知識をウェブラーニング「基礎シリーズ」で自己学習してもらうと共に、来年春にかけて2回にわたる症例検討会、ロールプレイと症例検討を行うワークショップを実施する。

 

高齢者の生理機能と薬物動態、注意すべき疾患、多剤併用による有害事象など、自己学習で学んだ知識をワークショップで復習し、臨床への応用力を養った上で、薬局での日常業務で受ける様々な不適切処方について、これまでの知識とスキルをもとに年間3例の処方提案書を提出し、講師陣が添削して返却する。これら全ての研修を2年間にわたって受講した後、認定試験に合格して認定薬剤師の資格が得られる。

 

研修の講師には、ポリファーマシー問題の第一人者である徳田安春医師、ポリファーマシー外来の取り組みを実践する矢吹拓医師、高齢者に不適切な薬のリスト「日本版ビアーズ基準」を開発した今井博久医師らが参画し、医師と薬剤師が協働して臨床への応用力を養成していく方針だ。

 

さらに、1年間の応用研修を受けると、専門認定薬剤師の資格も得られる。高齢者の薬物治療における問題に対し、必要な情報を他職種と共有、評価を行い、患者個々の状況に応じたより良い薬物治療が提供できるよう処方の再構築を検討し、処方提案によって医師をサポートできる薬剤師の養成を目指すもので、処方提案書に加え、活動報告書の提出も求める。

 

認定制度は、学会の会員であること等の要件を設けず、全ての薬剤師に門戸を開いており、医師と薬剤師の協働による実践的な研修が最大の特徴となっている。将来的には、地域中核都市をはじめとする地元医師会と協力し、不適切な処方に対応できる薬剤師の養成を全国的に広げていきたい考えだ。

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出典:薬事日報

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