大石社長「国際化の推進が私の使命」‐CROは根幹事業
女性初の内資系CRO社長に就任したシミックホールディングスの大石圭子社長COOは、本紙のインタビューに応じ、「臨床開発受託(CRO)はシミックにとって根幹のビジネスユニット。アジアを中心に国際共同治験への対応を進めてきたが、グローバル化は達成できていない。私に課せられた使命はグローバルでの事業展開を加速していくこと」と述べ、CROの国際展開を進め、CSOやCDMO、SMO、希少疾患薬の製造販売を行うオーファンパシフィックなどグループ内の多彩な事業を成長させていく考えを示した。また、海外の自社拠点が広がる中、「どこにいても、どんな人とでも仕事ができる人材」をグローバル人材と定義。日本流にとらわれず、海外のやり方も柔軟に取り入れるための変革の一つとして、人事や財務など管理系業務のグローバル化も推進していく。国籍や性差にとらわれず、従業員が働きやすい環境整備に力を入れる。
業務の“日本流”見直しへ
今月から中村和男会長CEOが戦略面でイニシアチブを取り、大石氏は業務執行の責任者として、事業開発や営業、管理サポートを担当する新体制をスタートした。大石氏は、他の受託企業にはないシミックの強みについて、「製薬企業が行う医薬品の非臨床開発、臨床開発、承認申請、製造販売後調査、営業・マーケティング支援まで一連のバリューチェーンをカバーする体制がある。一括してサービスを提供するというよりは、顧客の事業戦略やリソースに応じて柔軟にサービスを提供できるのが特徴」と強調する。
事業の多角化が進んでいるが、「シミックはCROで出発した会社」と根幹事業に位置づける。「国内の臨床開発モニター(CRA)数は国内で最も多く、世界的に見てもフルタイムで業務を行うCRA数でいえば、かなり上位ではないか」と述べ、事業としての位置づけは今後も変わらないと断言した。
ただ、海外CRO大手がグローバル製薬企業の医薬品開発を包括的に受託する中、「日本・アジアを中心としたCROのシミックが、多くの国際共同治験を受託するのは難しく、海外のグローバルCRO大手と競えない立場にあることは重々承知している」との現状認識を示し、日本を含むアジア地域での地盤を生かし、日本未参入の海外CROとの協業で対抗していく考えを示した。
数百を超えるCROがひしめく米国に対しては、「多くの新薬が創出されている重要な市場。自力での展開はなかなか難しいため、どのように事業を進めていくかを検討している」と事業戦略を策定していることを明らかにした。
国内では、臨床研究法の施行を契機に、電子カルテやレセプトなどリアルワールドデータを集積し、医薬品の価値検証に活用していく“デジタル化”を経営課題に挙げた。「データマネジメントや統計解析は業界内でも強いチームだが、この1年でより洗練された組織に強化していきたい」との意向を示す。
グローバル人材創りたい‐管理系業務を国際標準へ
社内のグローバル化も推し進める。シミックが求めるグローバル人材について、「これまでは、“どこでも働ける人材”をイメージしていたが、“どこにいても、どんな人とでも仕事ができる人”という考え方に変わってきた。日本にいても、米国にいる人たちと一緒に仕事ができる人材が求められている」と説明。
その上で、「総務や広報、人事、財務など管理系業務をいかにグローバル化していくかが課題」とした。
シミックHDの連結子会社は22社を数え、人材育成の仕組みや評価制度がそれぞれに異なるのが現状。「同じ事業セグメントであれば、全てを統一化させる必要はなくとも、ある程度の整合性は必要かもしれない。日本から海外、海外から日本へと人材が異動した場合に働きやすい環境にしていく。しなやかな人事能力が求められる」と語った。業務プロセスや会議の進め方なども「合理的な形に見直したい」とした。
CROが誕生して20年、「シミックという会社の歩みをずっと見てきた」と大石氏。5年後に目指す姿については、「社員が患者さんを直結した形で、今日やったことが何かの役に立ったと認識できるようなビジネススキームを創り上げたい」と述べ、社員のモチベーションを喚起し、生産性向上につなげる“ボトムアップ”の企業文化醸成に意欲を見せる。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
女性初の内資CRO社長に就任した大石圭子社長COOが、薬事日報のインタビューで臨床開発受託と自社の強みについて語りました。
シミック社のビジネスを振り返りながら今後国際展開を重視していきたいとしています。