川上副会長、薬剤師派遣「容認できない」‐病院等での「調剤」は禁止対象
病棟業務も広義の調剤に該当
日本病院薬剤師会の川上純一副会長は9日、米子市内で開かれた日病薬中国四国ブロック会長会議で、外部業者から病院への薬剤師派遣について、日病薬として「容認できない」との姿勢を明らかにした。労働者派遣法の法令の規定で、病院等での「薬剤師の調剤」は労働者派遣事業の禁止対象になっていることを提示。さらに、チーム医療を推進する上でも「医療機関に所属する薬剤師が、病棟業務も含めて自分たちが責任を持って行うべき」とし、「派遣薬剤師が病棟業務などを行うことは容認できない」と強調した。
事態の発端は、日本調剤が労働者派遣事業許可を取得して今年7月から本格的に開始した、病院向け「産休・育休代替薬剤師派遣サービス」である。東京都内では、既に東京女子医科大学病院への薬剤師派遣が始まっており、同社は今後、対象地域を広げる姿勢を見せている。敷地内薬局の開設が拡大する動きも相まって、病院薬剤師への影響が懸念されている。
川上氏は、労働者派遣法の法令で「薬剤師の調剤」は派遣事業の禁止対象になっていると言及。「私たちは、医師が処方を確定する前の情報提供や、そのための病棟活動、さらには薬を交付した後の服薬説明や服薬管理など一連の業務を調剤と考える」と述べ、こうした広義の調剤業務は派遣禁止対象になるとの認識を示した。
ただ、調剤業務がどこまでの範囲を指すのかという解釈をめぐる議論はあり得ると指摘。また、病院等の医療関係業務は基本的に労働者派遣事業の禁止対象だが、産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する薬剤師の代わりに派遣する場合は可能とする例外規定が設けられているため、「法律や法令の隙間を突いて、こういう形態がとられている」と現状を語った。
川上氏は、病棟業務を含めて派遣薬剤師が業務を行うことは容認できないとし、「これが変に広がっていかなければいいなと思っている」と危機感をあらわにした。
地方では薬剤師確保困難
一方、このような派遣事業が生まれる一因には、薬剤師の偏在を背景に、地域や規模によって病院での薬剤師確保が難しくなっているという問題がある。
同会長会議の中で高知県病薬の宮村充彦会長(高知大学病院薬剤部長)は「中小病院だけでなく、近年は基幹病院にも余波がきている。基幹病院であっても薬剤師の定員を大きく割り込み、その結果さらに薬剤師の退職が進むという悪循環が起こっている施設がある」と説明。薬剤師の確保に向けて「考えられる対策はほとんどやっていると自負しているが、なかなか前に進まない。若い薬剤師が高知に帰ってこない」と苦悩を語った。
島根県病薬の直良浩司会長(島根大学病院薬剤部長)は「中小病院には向上心の高い薬剤師が多い。認定資格を取得するために基幹病院や薬局に移る事例をたくさん見てきた。中小病院の薬剤師でも目指せる認定資格があるなど、目標があれば意欲を維持できる。それが一つの打開策になるのではないか」と求めた。
こうした声に対して日病薬の木平健治会長は「日病薬がいかに各地の取り組みをバックアップしていくかを考えなければならない」と強調。診療報酬改定などを通じて「病院薬剤師の処遇改善につながることをどういう形で要求し、実現するかも大きな課題」と語った。
川上氏は「入り口だけでなく出口の対策も重要。静岡県病薬では、薬剤師が簡単に病院を退職しないような環境作りに力を入れている」と話した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
病院への薬剤師派遣について、日本病院薬剤師会の川上副会長は「容認できない」と発言。
これは、7月から始まった日本調剤による病院向け「産休・育休代替薬剤師派遣サービス」が事の発端のよう。
病院など医療業務は基本的に労働者派遣事業の禁止対象。ただし、産・育休や介護休業する薬剤師のかわりに派遣する場合は例外規定があるため、川上氏は「法の隙間を突いている」と現状を語った。