海外

注射薬の配合変化、無料で検索‐国際的ウェブサイト日本語化

薬+読 編集部からのコメント

ヨーロッパでがん領域の薬剤師に使われているというフランスのウェブサイト「スタビリス」が日本語にも対応したというニュース。サイトは月に1回更新されているとのことで、書籍では対応し切れていなかった最新の情報や、海外の薬の情報を確認するといった使い方も期待されているようです。

注射薬の配合変化を無料で検索できる国際的なウェブサイト「スタビリス」(http://www.stabilis.org/)の日本語での利用が可能になった。鈴木真也氏(国立がんセンター東病院薬剤部)らのグループが翻訳作業を進めてきたもの。国内の医療現場で汎用される書籍とは情報源が異なり、情報も随時更新されるため、書籍を補完する形で活用できる可能性がある。


 

「スタビリス」はフランスの非営利団体が運営するウェブサイト。European Society of Oncology Pharmacy(ESOP)が活用を推奨しており、欧州のがん領域の薬剤師に広く使われている。欧州各国の言語のほか日本語、中国語、アラビア語など28言語に対応し、国際的にも活用が広がりつつある。

 

ESOPに日本の代表として参加する鈴木氏が、同サイトの製作者側から打診を受けてグループで日本語訳に着手し、昨年8月に日本語対応が実現した。以降も更新された情報を随時、日本語に翻訳している。

 

「スタビリス」に収録された薬剤数は685。各薬剤について▽化学構造▽商品名▽溶媒内の安定性▽混合時の安定性▽安定性に影響する因子▽配合禁忌▽投与経路▽引用文献――の情報を詳しく掲載している。化合物名や商品名を入力して配合禁忌を検索する機能もある。

 

公表された論文を情報源とし、その引用文献数は1988に達している。リンクをたどって引用文献を閲覧することも可能だ。

 

日本の薬剤師は、書籍を情報源として注射薬の配合変化を調べることが多い。翻訳グループの1人、吉田幹宜氏(神戸低侵襲がん医療センター薬剤部)は「スタビリスを日本でも外挿していいのかどうか、どのように使っていけばいいのか、その有用性を現在検討中だが、これまでになかった無料で使えるウェブサイトとして、既存の書籍と並行して、お互いを補完する形で使える可能性はある」と語る。

 

吉田氏らが、10種類の殺細胞性抗がん薬を対象に、書籍「注射薬調剤監査マニュアル」と「スタビリス」の掲載情報を比較した結果、配合禁忌として示された薬剤数は「スタビリス」の方が基本的に多く、情報の重複は少なかった。

 

例えば、日本ではオキサリプラチンによる血管痛を抑制するためにデキサメタゾンを混合する病院が存在し、配合禁忌にはなっていない。一方、「スタビリス」では配合禁忌とされている。この書籍は、製薬会社のインタビューフォームや社内資料などを情報源にしているが、「スタビリス」は論文から情報を得ているため、書籍にはない情報を補完できる可能性があるという。

 

「スタビリス」の情報は月に1回の頻度で更新される。「書籍には情報が載っていない新しい薬や、日本にはない薬の情報を知りたい時にも有用ではないか」と吉田氏は話す。

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出典:薬事日報

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