薬剤師会

独自の電子お薬手帳を開発‐医療連携システムと協調、調剤情報を自動的に取得

薬+読 編集部からのコメント

和歌山県で独自の電子お薬手帳システムが開発されました。
和歌山県内の病院や診療所、薬局間で情報を共有する医療連携システム「清州リンク」と協調した仕組みで、電子お薬手帳上の画面で患者さんは難しい操作をすることなくスマートフォンで自分の調剤情報を閲覧できます。
全国の自治体の参考になるケースになりそうです。

「きのくに電子お薬手帳」の画面
「きのくに電子お薬手帳」の画面

 

和歌山県薬剤師会は関係企業と共同で独自の「きのくに電子お薬手帳」を開発し、その普及に取り組んでいる。和歌山県内の病院や診療所、薬局間で情報を共有する医療連携システム「清州リンク」と協調した仕組みを構築したことが特徴だ。薬局のレセコンに入力された調剤情報が清州リンクのデータバンクを介して電子お薬手帳に送信されるため、患者は何の操作をすることもなくスマートフォンで自分の調剤情報を閲覧できる。医療分野のICT活用が推進され、全国各地で医療連携システムが整備される中、今後は電子お薬手帳との連携強化や融合が進む可能性がある。和歌山での取り組みはそのモデルになりそうだ。


関係者は共同で2016年度から開発に着手。電子お薬手帳機能と健康管理機能を合わせたエムティーアイ社のアプリ「CARADA」と清州リンクが連携する仕組みを作り上げた。患者はまずアプリをスマホにインストールし、アカウントやお気に入り薬局の登録を行うと共に清州リンクへの参加を同意する。以後は、薬局で調剤した薬を受け取ると、その数分後には、受け取った薬の名称や処方量、処方箋発行医療機関名、調剤した薬局の名称などの情報をスマホの電子お薬手帳画面で閲覧できる。QRコードを読み込んだり、手作業で薬の情報を入力したりする手間はない。過去の履歴も見ることができる。

 

薬局側も、患者が情報共有を許可した場合、清州リンクのデータバンクを経由して過去の履歴データをパソコン画面上で閲覧できる。患者からスマホを受け取って電子お薬手帳を閲覧する必要はない。

 

清州リンクは、病院、診療所、薬局の診療情報や調剤情報を共有化するもの。和歌山県立医科大学病院が運営主体となって11年4月に立ち上がった。病院や診療所が提供するのは患者基本情報、受診歴、病名、検査値、投薬情報、注射情報、診療メモ、検査画像などの情報。薬局は調剤情報を提供する。患者の同意を得た上で医療機関の間でも同意すれば情報を共有できる。災害時には患者の同意がなくても閲覧可能だ。現在、12病院、25診療所、103薬局が参加している。

稲葉会長
稲葉会長

 

開発に踏み切った背景について和歌山県薬の稲葉眞也会長は、医療連携システムと協調した仕組みを構築することで、調剤情報の入力に手間がかかるなど電子お薬手帳の課題の解決につながると語る。また、「災害時に、お薬手帳を持っていない患者の薬を特定するのは難しい。薬局の電子お薬手帳の導入は、清州リンクへの参加がセット。災害時に患者が困ることがないように、清州リンクの参加薬局を増やしたいという狙いもある」と話す。

 

16年度にプロトタイプを作成しモデル薬局で試行した。17年度はそこで得た課題を改良しつつ、普及に力を入れている。これまで会員薬局約450軒のうち約70薬局がきのくに電子お薬手帳を導入した。「県内のスタンダードとして導入薬局を100~200に増やしたい。紙のお薬手帳で十分と考える薬剤師は少なくない。その意識を変えていきたい」と稲葉氏は強調する。

 

薬局が負担する、きのくに電子お薬手帳システムの利用料は年間1万5000円。このほか清州リンクの参加には、接続機器や設置費用などとして5万~10万円が必要になる。意識変革のほか、必要な費用を薬局がどう捻出するかも課題だ。現在は費用の一部を和歌山県薬などが補助している。

 

CARADAアプリの電子お薬手帳には、副作用の自覚症状や気になることを患者が入力し、薬局に送信する機能がある。薬局側からも、個々の患者や全患者に対してパソコンからコメントを発信できる。患者は来局前に、QRコードや画像として処方箋の内容を薬局に送信することも可能だ。これらの機能はかかりつけ薬局の定着に役立つ。

 

利用者が健康を管理する機能も盛り込まれている。体重、血圧、歩数、睡眠、食事、健康診断、血糖値、検査値などの事項を入力し、その推移を見て健康維持に役立てる。この機能を利用してもらうことで、健康サポート薬局として働きかけがしやすくなるという。

 

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出典:薬事日報

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