第1類薬のネット販売、薬剤師の情報提供低下‐ルール検証の議論に影響も
16年度覆面調査を公表
厚生労働省が公表した、2016年度の「医薬品販売制度実態把握調査」(覆面調査)の結果によると、インターネットの医薬品販売サイトで、副作用リスクが高い第1類医薬品を販売する際、23%が情報提供を行っていなかったことが分かった。情報提供していたケースでも、法律で義務づけられている「薬剤師による情報提供」を行っていたサイトは前年度の82.0%を12.2ポイント下回る69.8%にとどまっており、ネット販売における販売ルール徹底の課題が浮き彫りとなった。
調査は、薬局・薬店が店舗やインターネットで一般薬が適正に販売されているかどうかを把握するため、調査員が消費者を装って実施しているもの。今回は、全国5020の薬局・店舗、508のインターネット販売サイトを対象とした。
第1類薬をネットで販売するに当たり、購入者にメールなどで適切に情報提供を行っていたサイトは76.8%、「情報提供なし」のサイトは23.2%に上った。いずれも、前年度(情報提供あり71.4%、情報提供なし28.6%)より改善したものの、依然としてルールの徹底が不十分だったことが分かった。
一般用医薬品のインターネット販売に関する新たな規制を盛り込んだ改正薬事法・薬剤師法では、2014年6月の施行後、5年をメドに販売ルールの遵守状況などを検証し、必要な措置を講じることになっている。ルールが徹底されていない状況が続けば、ネット販売解禁の是非を問う声も上がってきそうだ。
要指導薬・第1類薬、「文書で情報提供」減少
店舗販売の調査では、要指導薬について、購入者本人が使用するか確認を行った薬局は、前年度から4.2ポイントマイナスの81%にとどまった。
要指導薬を販売する際、情報提供を行っていた薬局・店舗販売業は86.5%だったが、文書を用いて詳細な説明を行ったのはマイナス3.7ポイントの75.8%で、文書を渡されたが詳細な説明がなかったのは4.1%(前年度4.0%)、口頭での説明しか行わなかった店舗は20.1%(16.5%)だった。
また、販売に当たっては、使用者の状況(年齢、症状、他の医薬品の使用状況)を確認する必要があるが、遵守していた薬局・店舗販売業は前年度の91.8%からマイナス4.5ポイントの87.3%だった。
要指導薬は、薬剤師のみが販売できることになっており、販売時に情報提供を行った者の資格は「薬剤師」が96.3%で、ほぼルールが遵守されていた。
要指導薬だけでなく、第1類薬の販売時にも文書を用いた情報提供を行う必要があり、遵守率は前年度の73.6%からマイナス5.4ポイントの68.2%だった。文書を渡したものの詳細な説明を行わなかったのは4.0%(4.3%)、口頭のみでの説明しか行わなかったのは27.8%(22.2%)で、遵守が不十分だった。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
厚生労働省による覆面調査、「医薬品販売制度実態把握調査(2016年度)」の結果が公表されました。
全国5020の薬局・店舗、508のインターネット販売サイトが今回調査対象となりましたが、副作用リスクが高い第1類医薬品を販売する時にも医薬品販売サイトでは23%が情報提供を行っていなかったことがわかりました。情報提供を行っていたケースでも、薬剤師によるものは69.8%にとどまり、販売サイトの情報提供体制に問題があることが指摘されました。