薬剤師会

薬剤師の未来進化形~世界標準へ~[20]‐日本の薬局で薬剤師がワクチンを接種する日は来るか!?

薬+読 編集部からのコメント

インフルエンザの猛威が止まりませんね。薬局も大忙しのことと思います。
海外(カナダ)のインフルエンザワクチン接種についての記事をご紹介します。
カナダの薬学部では、教育の後半部分で薬剤やワクチンの調製と注射の技術を学び、実際に薬局でワクチン接種が受けられるそう。

オーラコンサルティング・
リードコンサルタント若子直也氏

 

カナダ薬剤師会によれば、カナダ人の88%(※)はワクチンに関する情報源として薬剤師を信頼しているそうです。

 

私が勤務する薬局でも、今シーズンは300人以上にインフルエンザワクチンを接種しました。シーズンも終わりに差しかかる頃は1日に2人程度ですが、ピーク時は薬剤師1人がワクチン接種にかかりきり、4時間で30人前後のお世話をすることもあり、冬の薬局業務は忙しい限りです。

 

日本で薬剤師が患者に注射をする日は来るのでしょうか?以前、厚生労働省の若手幹部と話をする機会があった際、自身も薬学部卒業のこの行政官は、「そこは取りに来るところなのかな?」と疑問を呈していました。ワクチン接種は薬剤師の業務の一環とする試みそのものが、そもそも必要な流れなのか疑問だと言いたかったようです。

 

私としても、日本で薬剤師がワクチンを接種する日は近いとも思っていません。しかし、薬剤師の本分は薬物療法に関する鑑査と医療費の適正化、および予防と考えている立場としては、ワクチン接種は遠い将来であっても選択肢として検討を続けてほしい課題のひとつです。

 

日本で毎年のインフルエンザワクチンを薬局で接種するなどSFのような話に聞こえるかもしれませんが、本当に高い技術を必要とする行為かと言えば答えはノーです。カナダのような先行事例に目を向け、日常の業務の一環として毎日、ワクチン接種を行う様を見て、また具体的にこの注射、ワクチン接種の資格を得るために必要なステップを知れば、そうでもなさそうだとお分かりいただけると思います。

 

カナダの薬学部では、あらかじめ教育の後半部分で薬剤、ワクチンの調製と注射の技術を学びます。これに対し、私のような外国の薬学部、薬科大学を卒業し薬剤師となった者は、オンライン、生涯教育研修で言う10時間相当の自己学習と、これに続く模擬試験で7割以上のスコアを取った上で実技を学ぶワークショップに参加します。

 

ワークショップは、ホテルの会議室で州の各地から集まった外国人薬剤師が参加する、ランチを挟んだ約6時間程度の半日研修です。コーヒーと軽食が用意され和気あいあいと進行し、最終的にお互いの腕を利用し生理食塩水を注射し合い終了し、修了証を渡されます。

 

参加者は、この前後で赤十字等、所定の機関でCPRなど基本の蘇生、応急処置の研修と認定を受け、書類を揃え申請すれば数日で注射をすることが可能となります。初めて自分の患者に注射をする際は感慨深いというより緊張が勝りましたが、数回経験を積めば単なるルーチンワークにしか感じません。

 

意欲の高い薬剤師は、シーズンごとの単純業務の範疇を越え、トラベルクリニックと称される海外渡航者のための総合的なワクチン接種業務を薬局で展開します。患者の渡航先によって必要なワクチンを選択し、過去の接種記録を参照しながら渡航時期と滞在日程から適切な接種タイミングを計算し、このスケジュールに応じて来局させてワクチンを接種します。

 

また、薬局によっては日常のリフィル調剤業務の中でも高齢者に接する機会を見つけては、肺炎球菌や帯状疱疹予防のため積極的なワクチン接種勧奨を行い、処方薬の受け取りの際に注射も行います。

 

薬局が行うワクチン接種によって、インフルエンザをはじめ多くの感染症に対するワクチン接種率を上げる効果が期待でき、また医療機関の混雑を緩和し、同時に報酬が比較的、安価であることが全体の医療の中で評価されているというところでしょうか。

 

いずれにしても、アクセスの良い医療提供施設として機能する薬局の一つの側面であること、さらに国民からの具体的な信頼を獲得している事実は日本の薬剤師、薬局にとっても参考になるのではないでしょうか。

 

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記事中※https://www.pharmacists.ca/education-practice-resources/patient-care/influenza-resources/pharmacists-role-in-flu-vaccination/

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出典:薬事日報

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