薬機法

薬機法改正、報告書まとまる‐服用中の継続的薬学管理、薬剤師に義務づけ

薬+読 編集部からのコメント

新年あけましておめでとうございます。
薬読編集部、スタートいたしました。

昨年12月に薬機法改正に関するとりまとめ案が大筋で了承されました。
目玉は、「調剤後も継続的な薬学管理」を義務付けること。
薬は渡したら終わりではなく”フォロー”が重要に…。
2019年早々にも国会で審議され、可決されるかも?

調剤後のフォローを重視‐職能の底上げ図る

昨年12月14日の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会は、薬機法改正を含めた制度改正に関する取りまとめ案を大筋で了承した
昨年12月14日の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会は、薬機法改正を含めた制度改正に関する取りまとめ案を大筋で了承した

 

薬機法改正に向けた報告書がまとまった。薬剤師・薬局に関する改正の目玉は、「服用期間中の継続的な薬学管理」を義務づけること。「調剤して終わり」ではなく、「調剤後にどうフォローアップすべきか考えることが重要」とのメッセージを打ち出すことにより、薬剤師職能の底上げを図る。また、患者が薬局を主体的に選択できるようにするため、特定の機能を持っている薬局を標榜できるようにする。具体的に、「在宅などにも対応し、地域でかかりつけ機能を発揮」「医療機関と連携して癌などの薬物療法を受けている患者の薬学管理を行う」といった機能が挙がっており、いずれの機能も持たない薬局は標榜できない。厚生労働省は、報告書を正式にとりまとめた後、今年の通常国会に薬機法や薬剤師法の改正案を提出する。改正内容は、診療報酬や調剤報酬、都道府県が策定する医療計画などに反映されることが想定されており、大きな関心を集めそうだ。

 

患者情報、医療機関にフィードバック

旧薬事法が改正され、2013年に公布された薬機法は、施行後5年をメドに見直しを検討することとなっており、昨年4月以降、厚労省の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で10回にわたる議論を行った。

 

薬剤師・薬局のあり方を見直す背景には、病院で治療を受けた患者を地域で支える「地域包括ケア構築」の進展がある。患者が医療機関から地域へ移行していく中、薬剤師・薬局がしっかりと役割を果たせるよう、全体の底上げを図る。目の前の処方箋をさばくことに腐心し、「薬を渡す」という業務に重きを置いていた薬剤師・薬局に本来の薬剤師業務を行ってもらうよう促す。

 

そのため薬機法、薬剤師法を改正し、薬剤師に対して「服用期間を通じた継続的な薬学的管理と患者支援」を義務づける。

 

現行の薬剤師法などの規定では、薬剤師が患者に対して薬学的知見に基づく情報提供や指導を行う義務が規定されているのは「調剤時」のみであるため、「薬剤の服用期間を通じて、必要な服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を行う義務がある」ことを明確化する。

 

こうした取り組みが効果的に実施できるよう、把握した患者の服薬状況などの情報、指導内容を記録することも義務づける。

 

薬局薬剤師が把握した患者の服薬状況等に関する情報は、「医師、歯科医師、医療機関の薬剤師へ適切な頻度で提供するように努めることを明確化すべき」とし、医療機関への情報提供もセットで行うことを求めている。

 

薬局開設者には、薬局に従事する薬剤師に対して、一連の業務を「実施させる」ことも求める。

 

特定の機能、標榜可能に

患者が自分に適した機能を持った薬局を主体的に選択できるよう、薬局開設許可に加え、特定の機能を有する薬局を法令上明確にし、表示できるようにする。

 

報告書では、「今後、在宅医療の需要が増大することが見込まれるほか、外来で経口の抗癌剤が処方される機会が多くなっているなど、専門性が高い薬学的管理が継続的に必要となる薬物療法が提供される機会が増加している」と指摘。

 

こうした状況に適切に対応するためには、「臨床現場で専門性が高く、実践的な経験を有する医療機関の薬剤師が中心的な役割を果たしつつも、地域の実情に応じて、一定の資質を有する薬局の薬剤師が医療機関の薬剤師と連携しながら対応することが望ましい」とした。

 

その上で、「このような中では、患者が自身に適した機能を有する薬局を選択できるようにすることが重要で、そのための環境を整えるべき」とし、標榜できる薬局の機能として、▽地域において、在宅医療への対応や入退院時をはじめとする他の医療機関、薬局等との服薬情報の一元的・継続的な情報連携において役割を担う▽癌などの薬物療法を受けている患者に対し、医療機関との密な連携を行いつつ、より丁寧な薬学管理や、高い専門性を求められる特殊な調剤に対応できる――の二つを示した。

 

地域でかかりつけ機能を持つ薬局を想定しており、高度薬学管理型の薬局は、医療法における特定機能病院をイメージしているとされる。いずれの機能も持たない薬局は、「最低限の機能を持つ薬局」に位置づけられ、標榜することができない。

 

なお、薬局の機能に関する情報は、「医療計画の策定などで活用されることが期待される」としている。

 

開設者のガバナンスも強化

医療用医薬品の偽造品流通や処方箋の付け替え請求など、チェーン薬局の不祥事が相次いだことを踏まえ、薬局開設者のガバナンスも強化する。

 

過去に発生した不正事案の多くが、「薬機法において医薬品・医療機器等を取り扱う者に求められている基本的な責務が果たされていなかったことが大きな要因と考えられる」ことから、再発防止に向け、医薬品・医療機器等の製造・流通・販売に関わる薬機法上の許可等業者について、法令遵守、法令遵守のための体制整備等の必要な措置、必要な能力および経験を有する責任者・管理者を選任することを義務化する。

 

チェーン薬局など、医薬品の販売に関わる許可等業者が法人である場合には、「役員が許可等業者の法令遵守に責任を有する(責任役員)ことを薬機法上、位置づける」とした。

 

また、責任役員による許可等業者の法令遵守を担保するため、必要に応じて責任役員の変更を命じることができるための措置も講じる。

 

薬局開設者が複数の自治体で開設許可を持っている場合には、開設者の法令遵守体制などに関する行政対応をより円滑に行うことができるようにするため、国や許可自治体が相互に密接な連携を行うための方策を整理する。

 

遠隔服薬指導、適切なルールを

オンライン服薬指導は、「対面服薬指導義務の例外」を検討するよう促した。

 

18年度診療報酬改定では、「オンライン診療料」や「オンライン医学管理料」などが新設され、慢性疾患で長期管理が必要な患者などを対象に、オンライン診療に対する報酬が認められた。

 

ただ、オンラインで診療を受けても、服薬指導は「対面で行う」ことが義務づけられているため、患者がオンライン医療のメリットを十分に受けられないという問題が指摘されており、政府の規制改革推進会議は「18年度中に結論、19年度上期に実施」とのスケジュールを示している。

 

そのため、「対面でなくともテレビ電話等を用いることにより適切な服薬指導が行われると考えられる場合には、対面服薬指導義務の例外を検討する」ことを求めた。

 

例外の具体的な内容については、オンライン診療ガイドラインの内容や、既に国家戦略特区に指定され、福岡市、愛知県、兵庫県養父市の3地域で実施されている、オンライン服薬指導の実証実験の状況をはじめ、「かかりつけ薬剤師に限定すべき」「品質の確保など医薬品特有の事情を考慮すべき」といった部会での指摘を踏まえ、「専門家によって適切なルールを検討すべき」とした。

 

また、患者の療養の場や生活環境が変化する中、患者が薬剤師による薬学的管理を受ける機会を確保するため、「服薬指導および調剤の一部を行う場所について、一定の条件の下で、職場など、医療が提供可能な場を含めるような取り扱いとすべき」との方向性も示した。

 

対人業務を充実させるための業務の効率化も促した。質の高い薬学的管理を患者に行えるよう、「薬剤師の業務実態とその中で薬剤師が実施すべき業務等を精査しながら、「調剤機器や情報技術の活用なども含めた業務効率化に有効な取り組みの検討を進めるべき」とした。

 

医療用麻薬の流通の合理化も図る。在宅で緩和ケアを推進するためには、「薬局で医療用麻薬が適切かつ円滑に患者に提供される必要がある」と指摘。現行では、処方箋を受け取った場合にのみ不足する医療用麻薬を薬局間で譲渡できる仕組みとなっているが、「一定の要件の下で事前に譲渡できるような仕組みを検討すべき」とした。

 

分業のあり方取りまとめ‐「他職種との連携が重要」

制度部会では、法改正関連事項以外にも、医薬分業のあり方について、幅広い議論を行ったことから、今後の関連制度に係る検討に資するよう、別途「薬剤師が本来の役割を果たし地域の患者を支援するための医薬分業の今後のあり方について」として取りまとめた。

 

医薬分業について、1970年代以降、診療報酬で処方箋料の引き上げや薬価差解消等の措置が取られたこともあり、処方箋受取率は上昇を続け、現在では処方箋受取率7割、薬局数は5万9000を超えているとの現状を示し、費用面について、「調剤技術料は調剤報酬改定の引き上げもあって直近で1.8兆円に達しており、収益を内部留保として積み上げている薬局もある」とした。

 

医薬分業のメリットとして、「医療機関では医師が自由に処方できる」「医薬品の在庫負担がない」「複数の医療機関を受診している患者について重複投薬・相互作用や残薬の確認をすることで、患者の安全につながっている」などを挙げる一方、「経済的な利益の追求や効率性にのみ目を奪われ、薬剤師や薬局がこのような機能を果たさず、薬局が調剤における薬剤の調製などの対物中心の業務にとどまる場合には、患者にとってメリットが感じられないものとなっている」などとした。

 

地域包括ケアシステムの構築が進展し、患者が、外来、在宅、入院、介護施設など複数の療養環境を移行することを踏まえると、「療養環境にかかわらず、医師と薬剤師が密に連携し、他の職種や関係機関の協力を得ながら、患者の服薬状況等の情報を一元的・継続的に把握し、最適な薬学的管理やそれに基づく指導を実施することが重要」と指摘。薬剤師が薬局で勤務する中において「他の職種や関係機関と連携しながらこれらの業務に関わっていく」ことの意義を強調した。

 

また、薬剤師・薬局には、一般用医薬品などの提供を通じて地域住民による主体的な健康維持・増進を支援するという機能(健康サポート機能)があることから、「今後も引き続き、役割を果たしていくことが強く期待される」とした。

 

制度部会での議論は、薬剤師法や薬機法上の措置のほか、医療保険制度や介護保険制度における報酬上の措置、医療法における医療計画上の措置など、関連制度が密接に関係することから、「関連制度の検討に当たっては今回の部会での議論を踏まえることが期待される」と指摘。

 

医療保険制度の対応については、今回の制度部会での議論も十分踏まえ、「患者のための薬局ビジョン」に掲げた医薬分業のあるべき姿に向けて、「診療報酬・調剤報酬において医療機関の薬剤師や薬局薬剤師を適切に評価することが期待される」と強調した。

 

先駆け、条件付き承認法制化

報告書には、製薬業界が要望していた、先駆け審査指定制度、条件付き早期承認制度の法制化も盛り込んだ。添付文書の記載情報の原則電子化や、経済的利得を目的に虚偽誇大広告を行った場合に「課徴金」を科す制度の導入も促した。

 

現在は厚労省の通知で運用している「先駆け審査指定制度」と「条件付き早期承認制度」を法制化する。製薬企業の開発意欲を高め、革新的医薬品や小児の用法・用量が設定されたものなど、未充足の医療ニーズを満たす医薬品に患者が速やかにアクセスできるようにする狙い。ただ、制度運用の際には、条件付き早期承認制度の対象が際限なく拡大することを防ぐため、適用要件や判断プロセスを明確にするほか、製造販売後調査を含めた市販後の情報収集活動と評価を充実させる。

 

添付文書の電子化も進め、安全対策をより充実させる。医薬品の適正使用を目的とした最新情報を速やかに医療現場に提供すると共に、納品される度に同じ添付文書が一施設に多数存在するといった課題を解決するため、医薬品に紙の添付文書を同梱することを止め、製造販売業者が製品外箱にQRコードを表記して最新情報にアクセスできるようする。製造販売業者の責任のもと、製造販売業者または卸売業者が医療機関や薬局に赴き、初回納品時に紙媒体の提供を行いつつ、情報の電子的入手方法を伝える。

 

ただ、OTC薬など消費者が直接購入する製品については、使用時に情報内容をすぐに確認できる状態を確保するため、紙媒体の同梱を継続することとした。

 

承認書と異なる製造方法で医薬品を製造していたことや医療用医薬品の偽造品が流通するなど、保健衛生上の危害発生が懸念される事案が頻発している現状を踏まえ、医薬品の製造・流通・販売関係者のガバナンス強化も盛り込んだ。

 

具体的には、医薬品や医薬部外品等の製造・流通・販売に関わる業者が法令を遵守して業務を行うため、法令遵守に必要な体制の整備、必要な能力・経験を有する責任者・管理者を選任するなどの義務を明確にする。また、役員が法令遵守に責任を持つことを明確にするため、薬事に関する業務に責任を持つ役員(責任役員)を明記し、責任役員による法令遵守を担保するため、必要な場合は責任役員の変更を命じることもできるようにする。

 

製造現場においては、医薬品製造販売業者が選任する総括製造販売責任者に求められる要件を整理。一定の業務経験を持つ薬剤師で、品質管理業務または安全確保業務に関する総合的な理解力と適正な判断力を持つ人が任命されるよう、要件を明確にする。総括製造販売責任者の責務を果たせる薬剤師を確保できない場合に限り、薬剤師以外の社員を選任できる例外規定も設置する。

 

ただ、例外規定が長く続かないよう、総括製造販売責任者を補佐する薬剤師を配置するほか、薬剤師資格を持つ総括製造販売責任者を継続的に育成する社内体制の整備も求めている。

 

卸売販売業者に対しては、医薬品の流通における品質管理の観点から、営業所の業務全体の把握と管理を医薬品営業所管理者の業務として業務手順書に明記する。業務を遂行するための勤務体制、不在時の連絡体制の確保も卸売販売業者の義務として明確にする。

 

虚偽誇大広告、課徴金制度を導入

ディオバン事件など経済的利得を目的とした広告違反が相次ぐ一方で、現在の行政処分では抑止効果が機能しにくい現状を考慮し、課徴金制度を導入する。

 

不当な経済的利得が一定規模以上の事案を課徴金納付命令の対象とし、金額算定については、対象となる医薬品の業種の利益率を考慮して算定率を定めた上で、違法行為の対象となった製品の売上額に算定率を掛け合わせて算出する。

 

国と都道府県に納付命令の権限を与え、広告違反行為に対しては訂正広告を命じる措置命令と未承認医薬品の販売・授与の禁止に対する違反行為への十分な抑止措置を取る。ただ、他の行政処分が機能している場合は課徴金納付命令ができないとする除外規定を設けた。

 

医薬品の承認・認証申請書等については、製造方法といった重要事項に虚偽などの不適切な記載が判明した場合、法令上の対応が困難なケースが見られるため、適切な対応が可能となるよう整理する。

 

個人輸入に対する規制も見直した。未承認薬の個人輸入や偽造品流通による不正事案や健康被害の発生・拡大を防ぐため、現状の輸入監視の仕組みを明確にし、手続違反に対する取締りや保健衛生上の観点から特に必要と認める場合に輸入制限を可能とするなど、個人輸入に関する指導・取締りを法令に基づき適切に実施できるようにする。

 

また、これらの事案の認知から取り締まりまで迅速に対処する必要があることから、捜査権限を厚労省と都道府県の麻薬取締官・麻薬取締員に付与する。

 

医療用覚醒剤の原料については、不正流通を防止するための措置を確保すると共に、疾病の治療を目的とした患者の携帯輸出入を認めることで、医療用麻薬に対する規制との均衡を図る。

 

行政監視の「第三者組織」‐厚労省に設置すべき

薬害を防ぐために医薬品行政を監視する第三者組織の設置も盛り込んだ。

 

第三者組織は、10年4月の「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」で設置の必要性が指摘されていたもの。「医薬品・医療機器等にかかわる行政の透明性の向上等の観点から、医薬品・医療機器等の安全対策の実施状況を評価・監視し、必要に応じて厚生労働大臣に意見を述べることができる組織として、実効性のある組織を検討したうえで厚労省に設置すべき」とした。

 

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