評価科学の拠点、4月に発進‐AI規制活用で指針検討も
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、来月1日に次世代審査等推進室など複数の部門を統合した「レギュラトリーサイエンスセンター」を開設し、本格的な業務を開始する。審査・安全対策業務の質を向上させるのが狙いで、人工知能(AI)などの先端科学技術が規制に与える影響を調査し、ガイドライン作成を検討するほか、製薬企業からの申請電子データやリアルワールドデータを活用した新薬開発、市販後安全対策の高度化を進めていきたい考えだ。
同センターは、PMDAの業務に関連した科学的課題への対応強化と効率化、審査・安全対策業務の質を向上させることを目的に、レギュラトリーサイエンス推進部、次世代審査等推進室など複数の部門を統合する形でスタートする。新たに医療情報活用部、研究支援・推進部、次世代評価手法推進部に改組。先端技術評価業務調整役やスペシャリストのポストも新設し、医療情報データベース(MID-NET)などの医療情報を活用した薬剤疫学調査、品目横断的な解析や疾患モデルの構築、モデリング&シミュレーション手法の研究などを手がける。
これら取り組みにより、リアルワールドデータや電子データを用いた審査、市販後調査、安全対策の連携を強化したり、アカデミアなどの外部機関と連携してレギュラトリーサイエンスを推進し、業務の質向上を目指す。
主な業務内容は、▽PMDAの業務に関連する先端科学技術への対応と情報発信▽申請電子データ・リアルワールドデータの活用推進▽人材育成――の3本柱。先端科学技術への対応では、現在の規制では対応が難しいものの、医薬品への活用が期待されるAIなどの情報を積極的に集めると共に、新たに登場しつつある革新的技術を調査し、海外の規制当局と連携して規制に与える評価と適切な規制の構築に取り組む。アカデミア、関連業界からも情報を集め、来年度中に具体的な調査内容を検討した上で、厚生労働省と協力してガイドラインを作成する方針だ。
申請電子データ・リアルワールドデータの活用推進では、製薬企業からの申請電子データを品目横断的に解析して新薬開発につながるガイドラインを作成するほか、MID-NETなどのリアルワールドデータの活用を促し、製造販売後の安全対策の高度化を図る。
臨床試験の実施が難しい難病、希少疾病用医薬品の開発についても、来年度にMID-NETなどを活用した効率的な開発に役立つ考えをガイドラインとしてまとめ、製薬企業にリアルワールドデータを活用した臨床試験と開発を促し、革新的新薬の早期上市につなげたい考えだ。
さらに、治験データを用いて投薬後の多様な背景因子を持つ患者の症状をシミュレーションするモデリング&シミュレーション手法の検討を開始。複数の類薬データについて品目横断的に解析を行い、有効性や安全性に影響する候補因子を見出す。
近藤達也理事長は、「組織の一元化により、これまで以上に有機的に連携し、審査・安全対策業務の高度化、データを活用したガイドライン策定による開発コスト削減にしっかりと取り組みたい」としている。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
4月1日から、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が「レギュラトリーサイエンスセンター」を開設します。
主な業務は、1. PMDAの業務に関連する先端科学技術への対応と情報発信、2. 申請電子データ・リアルワールドデータの活用推進、3. 人材育成となっています。