薬剤師会

「本当に必要な薬、考えて」~診療GL遵守で多剤併用に

薬+読 編集部からのコメント

5月17日より京都市で開催された日本プライマリ・ケア連合学会学術大会のシンポジウムで「本当に治療が必要な疾患や必要な薬はどれかを考えることが必要」と現状に対する厳しい意見が出されました。診療GLの優先順位の指針の必要性、実臨床での審査報告書の重要性なども力説される中、明治薬科大学・緒方宏泰名誉教授は「製薬企業は言いたいことだけ伝えている。隠したいことは少なめ」などと一刀両断し、医療従事者が自ら適正な情報を把握することの重要性を説きました。

標準薬物治療を実践する上で必要な情報源やその活用方法が17日から3日間、京都市で開かれた日本プライマリ・ケア連合学会学術大会のシンポジウム(写真左)で討議された。多疾患を併発する患者が増える中、各種診療ガイドライン(GL)に従って処方すれば薬の数が際限なく増えてしまうことから、「本当に治療が必要な疾患や必要な薬はどれかを考えることが重要」との声が上がった。より詳しい情報を把握するため、審査報告書の活用を呼びかける意見もあった。

医師の松本直樹氏(聖マリアンナ医科大学薬理学教授)は「疾患ごとに診療GLを適応すると際限なく薬が増えてしまう。どの診療GLを優先するべきかを示した指針はない。診療GLの中のどの治療が優先されるのかも問題」と語った。

 

松本氏は、標準薬物治療を考える際には、[1]そもそも治療が必要かを考える[2]薬以外の対処方法はないのかを考える[3]本当に治療が必要な疾患はどれかを考える[4]本当に必要な薬はどれかを考える――がポイントになると強調。診療時には、患者個々によって異なる価値観や社会全体の経済状況を踏まえ、これらをよく考えてほしいと求めた。

 

医師の遠井敬大氏(東京医科大学病院総合診療科)は診療GLについて「そもそも有料だったり、特定の学会員しか見ることができなかったりするものも多々ある」と言及。「診療GLが正しいなら、そもそもなぜ世界には複数の診療GLが存在するのか」と疑問を投げかけ、「診療GLを鵜呑みにせず、最適な治療は何かを常に考える姿勢が求められる」と強調した。

 

また、一般外来の診療において総合診療医が診療GLを網羅し、幅広い最新の知識を更新するのは「時間的にも費用的にも困難」と指摘。多忙な医療現場では実際には、批判的吟味が済んだ2次資料「UpToDate」などを活用する機会が多いと語った。

 

審査報告書で情報補完を

一方、薬剤師の立場から山岡和幸氏(前橋北病院薬局長)は「診療GLやエビデンスは有用だが、実臨床ではこれら以外に情報を補う必要がある。その一つとして審査報告書が重要」と語った。

 

審査報告書は、医薬品医療機器総合機構における新薬審査の概要と過程が記されたもの。医療現場ではあまり活用されていないが、専門家の意見や副作用発現リスク因子など、インタビューフォームでは得られない様々な記述があり、詳細な情報を把握できるという。

 

審査報告書に記載されている安全性情報が、新薬発売の数カ月後に関連学会から注意喚起されることがある。

 

審査報告書は新薬発売前に公表されるため、「発売前から審査報告書で情報を把握し、必要に応じて対策を講じるのが患者にとって良いのではないか」と呼びかけた。

 

緒方宏泰氏(明治薬科大学名誉教授)は、製薬企業が医師に配布しているパンフレットと、審査報告書の記載内容を比較した研究結果を提示。有効性、安全性、公平性、他剤比較などについては、審査報告書の内容のうち「2~3割しかパンフレットに記載されていない」と問題提起した。

 

緒方氏は「製薬企業は言いたいことだけ伝えている。隠したいことは少なめ、小さめに記載する。薬を売りたい人が作っているから、限界があることはやむを得ない」と述べ、医療従事者が自ら適正な情報を把握し、エビデンスに沿って薬物治療を構築するよう求めた。

 

 

 

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出典:薬事日報

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