薬機法

【対談】薬機法改正で変わる薬剤師業務のあり方~ドラッグストア、調剤薬局が果たすべき役割

薬+読 編集部からのコメント

薬機法改正により、薬剤師の業務はどのように変わるのでしょうか? 今回、ドラッグストア企業のトップである平野健二氏(サンキュードラッグ社長)と医師・薬局経営者である狭間研至氏(ファルメディコ社長、日本在宅薬学会理事長)による対談を薬事日報(第12186号、2019年7月8日掲載)より紹介します。ドラッグストア・調剤薬局の役割や薬剤師のあり方など、薬剤師は必読の内容です!

昨年末に厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会でまとめた「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」をベースとした、改正医薬品医療機器等法案(改正薬機法案)が、今通常国会に提出された。この中では薬剤師業務のあり方のほか、患者が自分に適した薬局を選択できるよう機能別薬局等が導入される見通しだ。そこで、ドラッグストア企業のトップとして常に新たな発想で現場改革に挑戦している平野健二氏(サンキュードラッグ社長)、医師であり薬局経営者である狭間研至氏(ファルメディコ社長、日本在宅薬学会理事長)の2人の論客に、今回の制度改正に向け、現場の実情を踏まえた見解について意見を交わしていただき、経営者の立場から、今後のドラッグストア、調剤薬局が果たすべき役割、薬剤師のあり方などについても話し合っていただいた。

 

<出席者プロフィール>

狭間 研至氏(ファルメディコ代表取締役社長)
1969年大阪府高槻市生まれ 医師、医学博士。95年大阪大学医学部卒業。その後、大阪大学病院、同府立病院、宝塚市立病院で外科・呼吸器外科診療に従事。00年から大阪大学大学院医学系研究科臓器制御外科で異種移植をテーマとした研究、臨床業務に携わる。04年に同修了後、現職。現在、薬剤師あゆみの会、日本在宅薬学会の理事長として薬剤師生涯教育に携わる。著書:薬局が変われば地域医療が変わる(じほう)、薬剤師のためのバイタルサイン(南山堂)、薬局3.0、薬剤師3.0‐地域包括ケアを支える次世代型薬剤師-(薬事日報社)、外科医薬局に帰る(薬局新聞社)

平野 健二氏(サンキュードラッグ代表取締役社長)
1959年北九州市生まれ 82年一橋大学商学部卒業。85年サンフランシスコ州立大学経営大学院でマーケティングを専攻終了(MBA取得)。帰国後、大手製薬企業勤務を経て、86年サンキュードラッグ入社。03年から代表取締役社長を務める。11年4月北九州市立大学経営大学院非常勤講師。14年日本保険薬局協会理事。15年MCEI executive of the Year。16年九州大学客員教授。19年オールジャパンドラッグチェーン本部長・社長。JACDS常任理事。著書:これからのDgs・薬局ではたらく君たちに伝えたいこと(ニューフォーマット研究所)

■薬を渡した後までフォロー‐薬剤師が服薬期間中も管理を

狭間 平野さんとは2015年の薬事日報の新年特集号で対談をさせていただきました。今回で2度目となりますが、前回から4年以上が経過する中で、薬局、薬剤師を取り巻く環境は大きく変化を遂げようとしています。特に今回の改正薬機法の議論で、私が大きく注目しているのは薬剤師が、患者さんに対して薬を渡した後までをフォローすることを義務づけたということですね。さらに必要に応じて、医師にそこで得た患者の副作用情報などをフィードバックすることも努力義務とされています。処方箋の受付時だけでなく、フォローの薬歴も残す必要があるということです。薬剤師や薬局経営者に対して、大きな方向性として示されたことは意義あることだと思います。もちろん薬局開設者についても、そのための体制を取ることが義務づけられています。これらは、ドラッグストアを含めた薬局や薬剤師のありようを変えるのではないかと見ています。

 

平野 4年前の対談では、薬剤師は処方箋調剤以外の業務に活路を見出さなければいけないというような話で締めくくったと思います。それから考えると、薬剤師の置かれた環境は音を立てて変わっていると言えます。

 

当社の店舗の場合、立地は北九州市の住宅密集地で高齢者が多く、半径500mの限られたエリア内での繰り返し来店(来局)をテーマに掲げて出店してきました。また、1991年から薬歴の全店共有化をスタートさせ、どの店舗でも患者さんの薬歴を閲覧することを可能にしています。今でも1人の患者さんが2~3軒の当社の薬局に来られますが、どの店舗でもトータルで薬歴、服用期間中の管理をすることが元のコンセプトとしてありました。今回の改正薬機法にある投薬後のフォローという趣旨については、当然のことと受け止めています。

 

服薬期間管理については、われわれが米国研修でよく訪れるワシントン大学では「Pharmacy with no medicine」(薬のない薬局)という言葉が10年前から使われ始めています。これは、医薬品を調剤して渡すのは、どこでもいいのではないかという発想です。販売自体はネットやディスカウントストアが行い、薬剤師は患者に届いた薬の服用管理を行い、結果として薬物治療効果について責任を負うということです。既に施設入所者に対して、そうした薬剤師が薬物治療管理を行う契約を行い、賃貸収入から薬剤師の報酬を捻出しているということです。米国とは医療保険制度の違いもありますが、本来の薬剤師業務でこのようなフィーを得ようとする発想は面白いと思います。

 

今回の改正薬機法の目指すところは良いのですが、その方法論のところまで国が決定し、方法論通りにやらないと『点数をあげないよ』という話が多いのは、いかがなものなのかとは感じます。例えば、「かかりつけ薬剤師」の例がそうです。かかりつけ薬局、薬剤師による薬剤の一元化に対しては何の異論もないわけです。

 

ただ、その患者の生活圏の中で、かかりつけを1軒の薬局に定めるというのは、患者本位ではありません。例えば、ある高齢者が3軒のクリニックに通院していたとして、それぞれ離れた場所にあるケースもあります。それぞれの処方箋を薬剤の一元化のために1軒の「かかりつけ薬局に」持ち込むというのはモビリティが低下した方には無理があるのではないでしょうか。

 

日本の薬局に関わる法律は、薬局という1軒単位で物事を考えているようですが、チェーンであれば違うアプローチができると思います。東京で言えば、あるターミナルとその沿線の各駅に店舗展開し、薬歴ネットワーク化が図れていれば、患者さんもかかりつけ化がしやすくなるわけですね。かかりつけの薬局、薬剤師についても、本来の目的を実現するための方法論は、薬局や企業に任せる方がイノベーションも発生するし、うまくいきます。国は成果(アウトカム)を評価すれば良いと思います。

 

狭間 調剤報酬改定の説明会などでも、薬局の先生方は、明確な方法論を質問されることが多く、それに対して行政側も的確に回答してしまう。そうすると、その回答通りでなければならないような雰囲気になってしまうときがあります。確かに、具体的な方法論については、もう少しファジーな感じでいいのかもしれませんね。

 

平野 結果が出せることの方が大事ですからね。

■患者への副作用などの説明‐情報提供の発信ツールも必要

狭間 先ほど、平野さんがお話になった「Pharmacy with no medicine」ですが、薬剤師さんの仕事は、最終的には、投薬した薬を患者さんが適切に服用することで治療効果を上げるためのフォローということになるのでしょうね。

 

薬剤師の方々も薬学部に入学する際には、薬剤師として貢献していくというイメージをお持ちであったかと思いますが、薬学教育を終えて、社会人となり初期研修を行う段階で、『いかに早く正確に渡すか』を当たり前のように教わり、また、それが調剤報酬などの制度で裏打ちされているため、そこに熱心に取り組んでいる間に『薬を渡すまでが担当』という雰囲気になってきたのだと思うのです。

 

私は、以前から薬を出した後を見るのが大事だと訴えてきましたが、そうなるには調剤報酬が変わるしかないと思っていました。今回、さらに上の法律に規定されたことは、取り組みに向けた「カンフル剤」になると思います。

 

今後、課題として高齢者も含めた急増する医療ニーズへの対応があります。そうした中でも医師は急増させず、今でも過労な状況に加え、働き方改革では年間残業上限1860時間と言われています。薬局や薬剤師などの社会資源の活用はソリューションにつながると考えています。その際に、薬を渡すまででなく、渡した後まで見られる体制を作るというのは、医療ニーズと医療提供リソースをカバーする役割として5万9000軒の薬局、17万人の薬局薬剤師に期待したいところです。いずれにしても医師が医師でしかできない仕事に注力し、適切なタスクシフト、タスクシェアを起こす段階において、投薬後のフォローを義務づける改正薬機法は面白いと思っているのです。平野さんはマクロ的視点としてはどのようにお考えですか。

 

平野 医療リソースの配分は非常に大きな要素で、逆にチャンスはそこにはあるのかなと思います。過日、医師の働き方改革に関連して、自民党厚生労働部会長の小泉進次郎衆議院議員が、薬剤師への医師の業務移管の例えとして、米国では薬局で行われている予防接種を引き合いにする発言もされています。ようやく、そういうことを言ってくれる政治家が出てきました。では、薬剤師会がそれに対して、前向きかといえば、そうではないですよね。やはり、誰のために薬剤師がいるのか、薬局があるのか、そこからもう一度、見直していく必要性を痛感します。

 

服薬期間中の管理については、例えば在宅医療であれば、こちらから出向きますが、そうでない患者さんとは、基本的に接点はありません。接点もないのに、どのように実行していくのかということです。先ほど、述べましたように1軒の薬局という環境でモノを考えるのではなくて、きめ細かな店舗網やウェブサイト、アプリを活用して接点を持つことも検討すべきと思います。

 

副作用一つとっても、投薬開始後、どのくらいの日数が経過した後に起こりやすく、出るとしたらどんな症状が多いかという傾向が分かっている薬剤が多いわけです。これに対しては、マーケティングオートメーションという仕組みがあり、投薬時を起点に何日目に、「こんな事象が発生していませんか?」ということをオートメーションで配信することが可能です。もちろん、投薬時に副作用に関する説明は行うのでしょうが、1~2週間後には忘れてしまいます。一般生活者は、何に気を配れば良いのかが分からないのです。そのタイミングで、どういう症状だと副作用なのか、または併用薬の相互作用なのかを知らせるということです。

 

別の視点では、当社の調査によると、慢性疾患の治療開始から半年間で約4割の人が治療をドロップアウトしているという結果が出ました。治療意識の低下もあるかもしれませんが、治療を行うことで何が改善したかという実感がないのかもしれません。そうした人には、何をもってあなたの身体が良くなっているか、重症化予防できているかを、あるタイミングで伝えないといけないのです。その意味でも情報提供の発信ツールを使う必要があるということです。デジタル化により、副作用情報の提供だけではなく、気付きを与えることができます。

 

既に、ある歯磨きの大手メーカーでは、スマホなどで歯と歯茎を撮影するだけで、AIが画像解析し、歯茎の状態をチェックできるアプリを開発しています。こうしたツールを活用することで、歯のトラブルに関する何らかの予兆がつかめ、重症化する前に歯科への受診につながると思います。入口と投薬後のフォローでドラッグストアの機能を活用し、医師、薬剤師、薬局の持つリソースを共有し合えるような場が作れたらいいなと思います。

 

狭間 現在、ドラッグストアと定義される拠点はどれくらいあるのですか。

 

平野 日本チェーンドラッグストア協会の資料によると約2万店舗です。

 

狭間 そのうち、調剤併設店舗はどのくらいあるのですか。

 

平野 正確なデータは持ち合わせていませんが、ドラッグストア全体の売上構成比の約3割を占めるというデータもあり、近年増加しているのは確かでしょうね。

 

狭間 ドラッグストアは基本的に、より健康な人が入りやすいイメージはありますね。

 

平野 取扱品目が多いこともあり、来店頻度は圧倒的に高いと思います。

 

狭間 今回の改正薬機法は、単に薬剤師のあり方が変化するという内部の事象だけではなく、財政面も含めた、この国の大きな医療の課題を解決する上においては、重要なポジションを占めると思います。その意味では、社会資源である薬局薬剤師をはじめ、ドラッグストアの持つ機能やデジタルの仕組みを活用して、いかに適正な医療提供体制の仕組みを早急に構築していく必要がありますね。

 

平野 まったく同感です。

■調剤業務の解釈を明確化‐薬剤師本来の仕事に注力

狭間 4月2日に発出された厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知「調剤業務のあり方について」は、患者のための薬局ビジョンで「モノからヒトへ」と薬剤師業務をシフトする中で、渡した後を見るという新たなタスクを設定すると身が持たないという意見が当社の薬局でも出ました。そこで、これまで薬剤師が行っていた業務のうち、重要だが薬学的専門性が低いエリアを設定し、社内教育を施した人を社内でパートナーと呼び、その業務を行ってもらっていました。今回の通知は、調剤業務の解釈が線引きされたことで都道府県の薬務課の立入調査の指導内容が統一されるという意味では良かったというのが私の見解です。平野さんの会社ではいかがでしょうか。

 

平野 当社の薬剤師も安心したことは確かです。いつ、役所から怒られるのかという憂いがなくなったようです。以前の検体測定室のグレーゾーン解消の際もそうでしたが、ある部分が白になった瞬間に、別の部分が真っ黒になることもあります。全体の流れの中で、線引きされたラインが変わるのであればいいのですが、押し戻そうという動きもまた出てくるかもしれないので、そこは見ていかないといけないというのがあります。

 

ただ、非薬剤師ができる業務だけではなく、薬剤師ができることをもう少し増やさなければいけないと思います。米国のある州に行くと、点滴のチューブや針の交換まで薬剤師が行っているわけです。特に在宅医療という現場の医療資源が極めて限られている環境下では、できる人は誰もが行わないと回らないと思います。その点では最初は環境を絞ってもいいのですが、できる人がやることで、質も上がればコストも下がる。コストについては、トレードオフの問題になると思うので、ずっと言い続けなければいけない話になるでしょう。

 

毎年訪問するワシントン大学病院では、輸液から癌化学療法の薬剤までテクニシャンが調合しているわけです。日本の薬学生たちは、「これこそが薬剤師が取り組む業務だと思っていたのに米国ではテクニシャンの仕事だということを知り、がっかりしました』と言いました。私はその学生に「確かにすばらしいことをやっているが所詮技術。あなたたちは自分たちの仕事を技術者と定義するのか。この技術をテクニシャンに教えてあげたら君たちは指導者であり管理者。テクニシャンに渡した時間を使って患者や医師と向き合うのが医療人ではないのか」と話しました。すると「分かりました」と納得していました。そうした意識を植え付けていきたいと思います。

 

狭間 当社でも、薬剤師から業務を外そうとしたとき、業務の一部を手放す薬剤師も、引き継ぐ側も恐がりました。中には「インターネットで調べると違法です。こんな怖いことをやらされる会社は嫌だ」と辞めた人もいるわけです。薬剤師資格を持つ弁護士の赤羽根秀宜先生と開いたシンポジウムで、「グレーではダメだ」と申し上げました。なぜならグレーなことを強要する会社はブラックだと思ったからです。その意味でも、今回の通知は良かったと思います。

 

平野さんも、おっしゃったように、薬剤師が薬剤師しかできない仕事に注力する環境が地域連携や高度医療機関連携、さらにはドラッグストアなどの薬剤師さんのあり方を大きく変えていくのだろうと思います。そこにあるのは、医療ニーズと医師の数のギャップをどう埋めるかという社会課題に対する解決策の一つだろうと思います。

 

日本在宅薬学会でも、薬局業務を行う非薬剤師向けのパートナー制度を設置しています。当社の薬局で取り入れた仕組みを世に問うた形です。在宅医療では、契約を取るほか、在宅までの運転など薬剤師でなくても良い仕事が増えます。業務効率化というよりも、そうした業務を任せられる人材を育成することは在宅薬学会としても意義あることだと考え、取り組みました。サポーターの試験は認定ではなく、検定としています。英検と同じで一定の能力を担保としているようなものです。本来的には日本薬剤師会が取り組むことなのかもしれませんが、まずは、私どもでやってみようと取り組んでいるところです。

 

平野 今は、非薬剤師とは何も知識や技術を持たない人のことですから、任せられる範囲が狭いですよね。一定レベルの教育をすることで線を引き直すという話が、もう一段、次にあるのではないかと思います。

 

狭間 現在、薬学部に入学して薬剤師になれない人が毎年1000人単位で出てきているわけです。極端な話、医学部を卒業して医師にならなかった人の数は多くないし、看護学部で看護師免許を取得しなくてもやりようはあるのですが、薬学部を卒業して薬剤師免許を取得していないというのは、結構厳しいと思います。その救済措置ではないですが、可能性はあると思います。

 

平野 「何を任せるために何を教える」というストーリーを作っていかないとだめですね。任せることを決めたら、その教育機関として薬学部を使うのもありかもしれません。

 

狭間 手順書や研修は、今後、有識者会議で詰めるようですが、もう少し細かく決まるとは思います。今回の改正薬機法にしても、課長通知のいずれもポジティブに捉えるべきだと思います。医療のギャップを今のメンバーで取り組んでいくタスクシフト、タスクシェアしかないのです。それを行う上において、薬剤師は業務と名称の独占が許された数少ない職種ですから、法律や通知が大事なのかと思います。

 

■住み慣れた地域で最後まで‐マンパワー、医療経済を適正化

狭間 医療のギャップを埋めるという意味では、専門医療機関連携薬局は病院の敷地内薬局や門前薬局で、ランチャー型として患者は外来化学療法を2コースほど行ったあと、その薬局から患者の地元の「かかりつけ薬局」に移すようなことはあると思います。地域連携薬局は、生活習慣病の薬物治療の管理については、医師が2週間に1回処方箋を出して調剤するというのではなく、一定のプロトコールの中で薬剤師が取り組み、その幅を超える場合に医師に相談するということになるのではないでしょうか。高度医療の外注化と薬物治療管理のタスクシフト・タスクシェアは、病院やクリニックにおける医師業務の負担軽減にもつながります。ドラッグストアについては、プライマリケア、ファーストエイドに近い部分や、健康のニーズに対応する機能を持つことで、疾患を縁遠い状況にもっていくようなことができるのではないでしょうか。

 

平野 ただ、敷地内薬局では1人の患者の薬剤一元管理ができなくなる可能性はあります。当社は調剤が売上構成比の約40%を占め、前述のように28年前から全店薬歴共有化を行っている中で、敷地内薬局ができようとできまいと、患者に選んでもらえる地域のインフラ薬局、チェーンを目指すスタンスでいます。その意味では、重度な疾病に対応できる薬剤師の育成を考えています。ただ、全店にそうした薬剤師を配置できるかというと難しいです。そうすると1薬局に配置するのではなく、10店舗くらい掛け持ちで活動できるようになると、かなりクリアに運用できると考えています。

 

地域連携の視点では、専門薬剤師ではなく、総合薬剤師のような人材が必要になると感じています。総合薬剤師は、様々な診療科の処方箋に対応できる存在ということです。現実問題として門前薬局も含めて、いくつもの薬局を渡り歩くことで経験を積めることもあるのです。そうなると、かかりつけ薬剤師とは矛盾してくるのですがね。それとかかりつけ薬剤師も、同意書を取ることがかかりつけ薬剤師なのかというとそれは違います。

 

当社のドラッグストアの会員は、年間1000万人が来店されます。その中で、会員カードを持つ人が7割くらいで、そのうち、当社に処方箋を持って来られる人の数をユニーク人数で調べると49.7%とかなり高いのです。

 

昨年1年間で面の処方箋が23%ありました。それにも関わらず85%の患者さんは1軒の医院の処方箋しかお持ちになっていないのです。ということは、かかりつけ薬剤師の同意書を取ることとは違うレベルで、1人の患者のトータルケアなどは全然できていないことが分かったのです。同意書を取ることの延長線上に薬物治療の一元化があるのか、実は持ってきてもらいたいという薬局側の思いで制度ができていないのかと感じます。制度の話とは別にどうやってトータルケアするか、どうすれば当社の薬局に来る理由を提示していけるのか、そもそも何が理由にあるのかということを根本的に解決しないと制度だけではクリアできない気がしています。

 

狭間 制度を組む側もジレンマがあるのかもしれませんね。昔、中医協委員をしていた医師の方と話をする機会があったのですが、その時に「チェリーピッキング」は避けないといけないという話を聞きました。誤解してはいけないのは、同意書を取ることが目的ではないのです。「かかりつけ」は「寄りかかる」の「かかり」で、「つけ」は「行きつけ」の「つけ」なので、いつも頼りにする人ということです。困ったときに頭に思い浮かぶ人のことです。例えば自分の車の整備士などがそうでしょう。結果的にいつ電話しても良いとか、いつでもそこにいるというようにしないといけないのでしょう。ただ、ICTの世の中なので、ここにいるというのは1店舗である必要はなく、物理的にはエリアの中でどこでも行けるような感じで、テレビ電話で対応できるようなこともあると思います。

 

恐らく、広くは地域包括ケアシステムの実現に向けて、住み慣れた地域で最後までということ、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を行うためには、患者さんが自分でやるセルフメディケーションを行いながら、タスクシフト、タスクシェアをして、マンパワーの適正化もそうだし、医療経済的な適正化もやっていくということですね。明確に一つ言えるのは、安く売るとか、早く渡しますよという機能を持つということだけではなく、立地で患者が来られる面はあるでしょうが、それのみに依存したビジネスモデルをイメージしていては対応できないと思います。

 

■行動変容の結果をイメージ‐患者へ適切なサービス提供

平野 医療マーケティングという私が作った定義があります。ドラッグストアの役割としては、自身の症状に対してどう対処すべきか、さらにどんな商品を選んだらいいのか理解できていない患者さんに対して、数多あるサービス、商品をマッチングさせてあげることだと思うのです。それをマーケティングだとドラッグストアでは定義しているのです。医療では、自分の症状が何を意味するのか分からない患者さんと、数多くある医療介護サービスをマッチングさせることです。それを医療マーケティングとしています。マーケティングの学問で使われているアプローチで手段は確立されており、それを医療の中に組み込むという発想です。

 

もう一つはアクティブマーケティングとういう言葉があります。分かりやすく言うと、小学校6年生の子どもが誕生日にファミリーレストランのハンバーグが食べたいという情報を得た、そのファミレスのマーケッターの多くは、その子の親にハンバーグの2割引きのクーポン券を送ってくるのです。しかし、誕生日にハンバーグを食べるのであれば、放っておいても食べに来たかもしれません。そうなるとその2割引きは無駄なのです。しかも喜ばせたのは親で子ども本人ではないのです。これは無駄なマーケティングです。アクティブマーケティングとは、同じケースの場合だと、ハンバーグではなく、小6なのでステーキを食べさせてみようという発想なのです。つまり今、与えられている情報から、その人に起こすべき行動変容の結果をまずイメージし、その結果、本人がもっと幸せになり、継続できる仕組みを作るのがアクティブマーケティングです。患者は自分の今の状況を理解できないけれど、自分はどうなれるのかということは、もっと知らないのです。そこで「あなたは、こうなれるのですよ。そのためにはこんな方法があります」と、伝えていくことを医療マーケティングと呼んでいます。

 

狭間 従来であればダイレクトメールなどでしたが、アプリでつながることで、時期を選んであげたりすることが可能になるということですね。

 

平野 来店する前の段階で、いろいろなアクションが起こせます。こんな治療法があるとか、この痛みなら何科を受診すべきかなどの案内ができるし、その投薬後についても薬物治療管理のアドバイスや正しい使い方を送ることができますからね。

 

狭間 マーケティングで薬局と患者をマッチングしていくという意味では、現在はミスマッチが起きていると感じているということですか。

 

平野 ミスマッチというか、迷子になっているというほうが適当でしょう。頭が痛いのは、放置していてもいいのか、医師にいくべきか、鎮痛薬を買うべきなのか、診療所であれば内科、脳神経外科、ペインクリニック、どこに行くかが分からないのです。かなりの部分は情報さえ提供すれば、解決できそうな気がするのです。当社の店舗では、1カ月に3回鎮痛薬を購入している人は把握しています。次の段階としてNSAIDsの使い方についての話ができると思うのです。

 

この前、緊張を和らげる漢方薬の「抑肝散」が日曜日の午後から売上が伸びて、午後6時半にピークを迎え、月曜日の午前中に終息するという売上データがあったのです。よく考えると、これはサザエさん症候群だと気付いたので、睡眠改善薬「ドリエル」も同じ傾向なのかと調べると、全く同じでした。また、胃腸薬も同じということです。

 

狭間 日曜日の夕方に売れていくということですか。

 

平野 明日から会社だということを前提に、ある人は緊張し、ある人は眠れない、ある人は胃が痛むのです。でも要因は同じことなのですね。

 

狭間 それは興味深い話ですよね。そういう人たちにアクティブマーケティングを行うということですね。

 

平野 「あなたのその問題は、実は原因はそうなのかもしれませんよ」ということを示し、そうであるならば、次の行動変容を促すことができると思います。

■ICTを活用し患者に情報‐リアルとネットで相互補完

狭間 ICTは時間と空間のギャップが極めて希薄になり、今でなくてもここでなくても、後で見ておきますという発想からすると、例えば投薬後のフォローであるとか、もしくは電話するほどでもないけど返事が欲しいというような部分で増えていくのだろうと思います。セルフメディケーションの部分についても、その情報の受け手が医師である必要はなく、薬剤師、看護師、登録販売者でもいいし、オンライン服薬指導ということに限らず、患者さんは薬をもらって、その情報から服用した後、効果や副作用の確認、服薬コンプライアンスが保たれているかどうかを確認できればいいのだと思います。われわれは無意識のうちに、ICTのインフラやツールを使い始めていますが、分かりやすい状況として在宅医療や遠隔地医療などで、さらに進んでいく可能性はありますね。

 

平野 よく、インターネットはリアルの敵だという発想を持つ方が多いのですが、それを言っている会社は、これから続かないだろうと思います。ネットの良さ、リアルが持てない良さをいかに使いこなしていくことで、むしろリアルを再強化していく手段だと思っています。リアルはお店に来た人にしか何もできない、店から帰った人に何もできない、そこをネットはフォローできます。そこで何をすればいいかということを定義して、実際に正しいところに導くには、とても良いツールだと思います。その中に先ほどのITなどを使い、画像解析などで自身の状況が把握できるのであれば良いことです。多くの患者さんが、医師のところに来られない、薬剤師のところに行けない理由の一つに、「自分は疾病について何も知らないと思っている」ということがあるのです。自分が少なくとも明確に話すことができれば行きやすくなる。こんなことが起こりましたということが分かれば、相談しやすくなる。そのハードルを下げるという辺りも、事前に情報をあげるということですね。狭間さんも、診療の中では不要な情報も多くあり、その中のごく僅かの重要な情報を抜き出して診断されていると思います。重要な情報の比率を少しでも上げてあげられるようなアドバイスは、IT化によってかなり可能だと思います。

 

狭間 本日の話を伺っていると、いかに人に行動変容をしてもらうかということが大事に思いますね。そこに向けて、迷っているように見える人にITツールでリアルに受けていただくと、その人は結果的に非常に満足のいく情報を得られるということですね。

 

平野 そうです。ライトターゲットに、ライトメッセージ、ライトタイミングで、ライトメディアを通じてという話ですね。

 

狭間 いわゆるマーケティングの発想ですね。

 

平野 恐らく、医療でもそのまま使える話だと思います。

 

狭間 行動変容には、無関心期→関心期→準備期→実行期→維持期という中でどの状態にある人にどう対応するかということを含めて、薬剤師が考えられるところは広く、健康と病気のところを行き来します。医師の場合は、病気の人だけになるので、それはそれで意味はありますが、今後、その部分を適正に行っていく意味では、ドラッグストア、薬局も高機能、地域医療連携も含めて、薬剤師がやはりどうあるべきかということは今後もテーマになっていくと思いますね。

 

 

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出典:薬事日報

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