薬剤師会

服薬状況、患者宅訪れ把握~薬剤師が不必要な薬削減へ

薬+読 編集部からのコメント

2023年度には15種類以上の薬剤を投与されている患者さんの割合を半減させる目標を掲げている奈良県では、薬剤師が患者さん宅への訪問を徹底することで、重複・多剤投薬の適正化を支援する事業に取り組みます。レセプト解析で抽出した重複・多剤投薬患者さんの自宅を会員薬剤師が訪問し、アドヒアランスや残薬、副作用などの状況を聞き取り、報告書にまとめます。患者さん経由で処方医やかかりつけ薬剤師に報告書を提供し、必要に応じて薬物療法を見直してもらい、不必要な薬の削減につなげる計画です。

奈良県薬剤師会(写真前列左が奈良県薬剤師会の竹上会長)は今年度、県内二つの保険者団体から委託を受け、重複・多剤投薬の適正化を支援する事業に取り組む。レセプト解析で抽出した重複・多剤投薬患者の自宅を会員薬剤師が訪問。アドヒアランスや残薬、副作用などの状況を聞き取り、報告書にまとめる。患者を経由して処方医やかかりつけ薬剤師に報告書を提供し、必要に応じて薬物療法を見直してもらい、不必要な薬の削減につなげる。副作用など患者の不利益回避や、医療費適正化に役立つ仕組みとして確立したい考えだ。


奈良県は、2018年3月に策定した医療費適正化計画で、15年度の時点で7%に達していた15種類以上の薬剤を投与されている患者の割合を、23年度には半減させる目標を掲げている。目標を達成する手段として、奈良県薬は奈良県後期高齢者医療広域連合、奈良県国民健康保険団体連合会の保険者団体から、重複・多剤投薬適正化の事業を受託した。

 

薬剤師の訪問は今年度、広域連合で約100人、連合会で約20人の患者を対象に実施する見込み。会員薬剤師向けの事業説明会を6月に開いたところ、100人以上が参加の意思を示した。今後、両保険者団体が実施するレセプト解析によって対象患者が決定すれば、近隣薬局の薬剤師が9月以降、患者宅を訪問する計画だ。

 

対象患者や介入方法は保険者によって異なる。広域連合の事業では、主に合計10剤以上の内服薬を処方された75~89歳の患者のうち、同成分の重複投与や高齢者への慎重投与薬が認められる患者を対象に、薬剤師が最大4回訪問する。

 

連合会の事業では、74歳までの患者のうち、主に同成分の重複投与や30種類以上の薬剤の処方が認められる患者を対象に、薬剤師の訪問事業を実施する見通しである。患者情報を把握している自治体の担当者と一緒に1回だけ患者宅を訪問する。対象や方法の詳細は、近く決定する。

 

患者宅に出向いた薬剤師は、事前に入手した処方薬情報などを参考に、患者が自宅で保管している処方薬やOTCの種類・量を網羅的に把握。服薬状況やアドヒアランス、残薬、副作用、栄養状態などを聞き取る。その上で、不必要な薬、重複している薬、健康被害につながる可能性のある薬などを抽出する。

 

こうして把握した患者の状況や具体的な改善の提案を報告書に記載する。患者を経由して、処方医やかかりつけ薬剤師に報告書を提供。薬物療法を見直すための情報として役立ててもらい、不必要な薬の削減につなげる。広域連合の事業では、必要に応じて初回訪問以降も最大で計4回訪問し薬物療法の変化を確認。不必要と見られる薬の処方が続いている場合は、改善に向けたアプローチを続ける。

 

広域連合は17年度、奈良県薬と連携し、一部地域で同様の事業を実施した。薬剤師は約30人の患者宅を訪問。薬剤の削減につながった事例もあった。一定の効果が見込まれたことから、19年度には対象地域を奈良県全域に広げて取り組むことになった。

 

連合会は18年度に保健師らの訪問等を実施。19年度から奈良県薬との連携を開始した。両保険者団体は、多剤投薬の状況を患者に郵送で通知する事業も行っており、訪問事業と合わせて医療費適正化を目指している。

 

奈良県薬の竹上茂会長は「国は地域包括ケアシステムの構築を進めている。薬剤師は今後、薬局の外でも職能を発揮しなければならない。その中の一つが患者宅への訪問であり、訪れて初めて分かることもたくさんある。今後、医療保険や介護保険の枠内にとどまらず、訪問を意識する薬剤師が増えてほしい」と期待を語る。

 

 

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出典:薬事日報

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