医療

全世代型社会保障、検討始まる~「システム自体の改革不可欠」

薬+読 編集部からのコメント

再改造内閣発足(9月11日)から設置が明かされていた「全世代型社会保障検討会議」が立ち上がりました。誰もが安心できる社会保障制度の構築が目的とされますが、現状は高齢化の進展により19年度に約124兆円に達した社会保障給付費が、団塊ジュニアが高齢期を迎える40年頃には約190兆円にも達する見通し、さらに人口が約1億人まで減少することも確実……と暗い見通し。一般企業ならば「倒産」の二文字が頭をよぎるところです。安倍首相が「一億総活躍を掲げる内閣にとって、改革は最大のチャレンジ」、加藤厚労相が「全世代型社会保障制度の構築は、厚労省の最大のミッション」と意気込みを述べていますが、具体策については語られませんでした。

急速に高齢化が進む一方、国に対する子育て世代のニーズも増加し続けている。この現状を踏まえ、政府は「誰もが安心できる社会保障制度」の構築を議論する「全世代型社会保障検討会議」を立ち上げた。安倍晋三首相を議長に、関係大臣、民間企業や研究機関などから招集された有識者で構成。医療、介護、年金など社会保障関連の幅広い分野を検討することとしており、年内に中間報告し、来夏をメドに議論を取りまとめる。9月20日の初会合では、給付と負担の現状、生産人口の見通し、就業率の推移など社会保障に関するデータが示され、今後の会議の進め方について意見交換した。有識者からは「医療や介護のあるべき姿を示す中で、給付と負担のあり方を考えるべき」「持続可能な社会保障のためには経済成長に資する改革が必要で、支え手を増やすことが重要」などの声が上がった。安倍氏は「少子高齢化が急速に進む中、これまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の改革を進めることが不可欠だ。関係大臣の総力を挙げ、具体的検討を開始してほしい」と指示した。

 

高齢・多様化踏まえ議論

同会議は、9月11日の再改造内閣発足に当たって安倍氏が設置を明らかにしたもの。急速な少子高齢化の進展と国民のライフスタイルが多様化する中で、医療、介護、年金をはじめとした幅広い分野を対象に「誰もが安心できる社会保障制度」を検討するとしている。

 

首相を議長に、西村康稔全世代型社会保障改革担当相や加藤勝信厚生労働相など6人の関係大臣、遠藤久夫氏(国立社会保障・人口問題研究所所長)や中西宏明氏(日立製作所取締役会長)など9人の有識者で構成される。

 

同20日に首相官邸で開かれた初会合では、内閣官房が社会保障の現状に関するデータを示した。

 

詳細を見ると、高齢化の進展などで、19年度の社会保障給付費は約124兆円に達し、団塊ジュニア世代が高齢期を迎える40年頃には約190兆円に達する見通しを示している。また、将来人口は50年には人口が約1億人まで減少し、生産人口年齢の割合も現在の60%前後から50%台前半まで落ちる。

 

一方、女性の就業率は高まり続け、15~59歳は05年の60.3%から18年には71.1%まで上昇。60歳以降も18.7%から23.8%まで伸ばしている。18年の共働き世帯数は1219万世帯で、専業主婦世帯数の600万世帯の倍となった。

 

定年退職が集中する60代前半の男性の就業率も法改正などの影響を受け、02年の64%から18年には81.1%にまで増加している。

 

初会合では、これらデータを踏まえた上で、今後の会議の進め方について意見交換した。

 

有識者の一人は、「給付と負担の見直しは、国民、保険者、事業者それぞれの考えがあり、コンセンサスを得るのは容易ではない。財政論のみから見直しの議論を進めても将来の不安が広がり、国民や事業者の納得は得られない」とし、「医療や介護のあるべき姿を示す中で、給付と負担のあり方を考えることが重要」と述べた。

 

別の有識者は「人生の大きなリスクを心配しないで済む社会保障の確立には、メリハリのきいた医療改革が必要。また、経済社会の支え手を増やすことに資するかどうかを基準に進めるべき」との考えを示した。

 

「地方の目線が重要」の声も

また、「持続可能な社会保障のためには、経済成長に資する改革が必要で、支え手を増やすことが重要。就業意欲を向上させるほか、若者の高齢者医療の負担を減らして可処分所得を増やすべき」との意見や、社会保障の実施主体である自治体の観点から「改革には地方の目線が重要。健康寿命延伸のための予防健康作りは今後、自治体が注力すべき業務」とした上で、一人暮らしの高齢者や引きこもりの増加を念頭に「制度の縦割りを超え、地域で支える新しい形の地域共生が必要」との声も上がった。

 

安倍氏は「一億総活躍を掲げる内閣にとって、全世代型社会保障に向けた改革は最大のチャレンジだ。少子高齢化が急速に進む中、これまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の改革を進めることが不可欠」と述べた上で、「関係大臣の総力を挙げ、具体的検討を開始してほしい」と指示した。

 

加藤氏は「全世代型社会保障制度の構築は、厚労省の最大ミッションだ。支え手をどう増やすかなどを考えることも重要で、制度の持続可能性の問題も議論していくべきと考えており、こうしたことも踏まえて議論したい」との考えを示した。

 

 

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出典:薬事日報

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