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【2020年の医薬品市場展望】止まらぬ研究開発費捻出レース~外資系が攻勢、勝負は全世界へ

薬+読 編集部からのコメント

世界規模の巨額買収劇が繰り広げられた昨年に続き、2020年も製薬業界は激動の年となりそうです。巨額買収の波は止まらず、4月の薬価制度改革の対応、秋にも予定される後発品の使用割合80%の到達が大きな焦点となる国内市場は、後発品の使用促進策や薬価引き下げの圧力でマイナス成長に落ち込む見通しです。一方、海外後発品メーカーの買収が目立つ国内後発品メーカーは、さらなるグローバル展開が本格化しそうです。

2020年は製薬業界にとって激動の年になりそうだ。昨年は成長の源となる新薬をめぐって世界規模で巨額買収劇が繰り広げられてきたが、今年もその流れは止まりそうもない。国内では4月に行われる薬価制度改革の対応や、秋に予定されている後発品の使用割合80%の到達が大きな焦点となる。マイナス成長に向かう国内医薬品市場、後発品ポスト80%時代の行方は不透明であり、製薬企業のグローバル展開が一気に加速する年となりそうだ。外資系企業の日本市場参入も本格化するなど外圧も強まり、新たな成長への活路が求められている。

 

昨年は製薬業界にとって世界規模で巨額買収が相次いだ年となった。大型医薬品の特許切れや事業構造改革を進める中で、自社が目指す企業像の実現に加え、事業規模を追求した水平統合的なM&Aが再び行われるようになった。

 

新薬開発の難易度上昇が買収合戦に拍車をかけており、今年も巨額買収が続くとの観測もある。研究開発費は高薬価のバイオ医薬品が多く上市されるようになり、10年前に比べ約2.5倍に膨らんだ。承認された新薬は減少する一方、世界の開発パイプライン数は1万6000品目を超え、過去最大に達した。

 

米国では政府・民間企業を合わせた研究開発費が1150億ドル(約12兆円)に上り、国内製薬企業の医薬品総売上高に相当する金額が新薬開発に投下されている実態がある。継続して新薬開発を行えるだけの研究開発費を捻出できなければ、世界トップ企業からの後退を意味するため、今後もさらなる買収へと動くだろう。

 

海外製薬大手は大きな市場環境の変化の中でデジタルヘルスなど非製薬領域にも積極的に投資を行う。こうした動きは、IT企業など異業種を巻き込んだ新たな業界再編を生むかもしれない。

 

日本市場は、後発品の使用促進策や薬価引き下げの圧力でマイナス成長に落ち込む見通し。4月の診療報酬改定では、医療従事者の技術料などに当たる「本体」は0.55%のプラスとなったが、薬価は0.99%の引き下げで決着した。

 

こうした中、グローバル化を加速する外資系製薬企業の攻勢は一層強くなる。米アムジェンはアステラス製薬との国内合弁会社「アステラス・アムジェン・バイオファーマ」を今年中に完全子会社化する予定。

 

デンマークのルンドベックや米ギリアド・サイエンシズなども事業基盤の強化を進める。承認された医薬品がほぼ短期間で保険償還される安定した市場は魅力的であり、他の海外製薬企業も挙って日本市場に食指を動かす可能性もある。

 

国内製薬企業にはグローバル化が最重要課題になってくる。大手企業は海外売上比率を増やしているが、企業規模で見ると武田薬品を除き海外大手に対抗できないため、自社の強みを生かした海外展開で成長を図ることになりそうだ。

 

遺伝子治療を含む再生・細胞治療分野の競争力強化が大きなテーマになり、世界最大の米国市場と第2位の中国市場が重点地域に位置づけられる。

 

中堅企業はローカル企業として日本市場のシェアを死守するか、グローバル化を進めるかの大きな分岐点になる。旭化成のように米国製薬企業を買収するのが一番の近道となるが、アジア市場に目を向けたM&Aもあり得る。

 

一方、後発品専業大手は、東和薬品が昨年12月にスペイン後発品メーカーの買収を発表し、日医工、沢井製薬に続き欧米での事業基盤を手に入れた。後発品数量シェア80%を視界に捉える中で、国内後発品メーカーによるグローバル展開がいよいよ本格化する年となるだろう。

 

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出典:薬事日報

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