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共同開発者の白木 公康氏、アビガン投与「一刻も早く検討すべき」~重症者救命や肺炎の後遺症回避へ

薬+読 編集部からのコメント

新型コロナウイルス感染症の治療薬候補として、全世界から注目が集まっている抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」について、共同開発者である白木公康氏(富山大学名誉教授)が「一刻も早くアビガンの使用を検討すべき。承認を前倒ししてアビガンの投与を行うことが重症者の救命や肺炎による後遺症の回避にもつながる」」との見解を示しました。現状の治療対応についても「呼吸困難が生じるまで治療を行わないようだが、これは明らかに間違い。生死の問題だけでなく、肺炎が起きていれば即治療を行い、後遺症が残らないような対策が必要」と強調しています。

新型コロナウイルス感染症の治療薬候補として、富士フイルム富山化学が開発した国産の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(一般名:ファビピラビル)が注目されている。同剤の共同開発者である富山大学名誉教授の白木公康氏(千里金蘭大学副学長)は本紙の取材に対し、新型コロナウイルス感染症の治療で「一刻も早くアビガンの使用を検討すべき」との考えを強調。「医療機関の倫理審査委員会で了承を行い、承認を前倒ししてアビガンの投与を行うことが重症者の救命や肺炎による後遺症の回避にもつながる」との見解を示している。

 

■副作用は妊婦の禁忌徹底‐肝、腎機能には影響なし

アビガンは、ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に強く阻害する抗ウイルス薬。白木氏は「新規の感染細胞には有効だが、既感染細胞でウイルス産生を阻止する活性は低い。アビガンは耐性ウイルスができない性質を持つため、最初から最後の患者まで有効な治療ができる点で優れている」との特徴を挙げる。

 

新型コロナウイルス感染症は、感冒症状に加え、致死性の間質性肺炎や肺障害を発症する臨床的特徴がある。白木氏は、3月末から今月初旬にかけて新型コロナウイルスに関連した3本の緊急寄稿をウェブ上で公開し、医療関係者を中心に大きな関心を集めている。アビガンは新型コロナウイルス感染症の治療で、中国の武漢の病院における有効性が報告されている。

 

白木氏は、現在の新型コロナウイルス感染症の治療対応について、「呼吸困難が生じるまで治療を行わないようだが、これは明らかに間違い。生死の問題だけでなく、肺炎が起きていれば即治療を行い、後遺症が残らないような対策が必要」と強調。

 

「中国の最初の統計によると、100人が感染すれば20人が重症化し5%がICUに入り、2人が死亡する。アビガンを早く使えば、呼吸困難には陥らず、ICUも人工呼吸器も必要なくなるのではないか」との見解を述べ、早期のアビガン投与の必要性を訴える。

 

一方、アビガンの副作用として、催奇形性がクローズアップされているが、白木氏は「ラットで妊孕性に問題があることは判明しており、妊婦には禁忌にすべき。ただ、FDAやPMDAは、妊孕性以外に特に問題とすべき項目がないため、ヒトでの試験を許可した。インフルエンザに対するアビガンの臨床試験では、安全性評価対象例501例中でも肝機能、腎機能の障害はなく、有意に多かったのは尿酸値の上昇のみ。その後、被験者で後遺症は発生していない。催奇形性の副作用がある薬剤のため、承認に至るまで様々な毒性試験が厳しく行われている」と説明する。

 

その上で、「アビガンは新型インフルエンザウイルスなどで致死率の高い感染症が発生した時の選択薬。主治医とよく相談することが重要」とし、特に妊婦への副作用を禁忌として徹底することにより、「有効な治療薬として使用できる」との考えを示す。

 

承認後に使用される場合にも、調剤する薬剤師に対して「患者に残薬が発生し、妊娠の可能性がある他の家族が服用することがないよう指導徹底が必要になる」との認識を示した。

 

■外交戦略の切り札にも

白木氏は、新型コロナウイルス感染症の終息見通しにも言及。「北半球で発生した1月以降、南半球も同様に流行しているため、季節性は期待しにくいと思う。やはり人口の多くが感染し、免疫を獲得するまで継続するのではないか」との見方を示す。

 

一方で「欧州ではピークを過ぎて感染者数が落ちていくかもしれないが、日本は感染者数が1万人に1人というペースをキープしている。3月から4月の1カ月間ではほとんど増えていない。緊急事態宣言による外出自粛や学校休校などの措置は、危機感を植え付ける点では良いが、抗ウイルス薬による重症患者の減少などを経験して、感染拡大の状況を見極めながら段階的に行うべきではないか」と語った。

 

富士フイルム富山化学が6月末の終了を目指し、企業治験の開始を発表しているが、白木氏は「アビガンの承認見通しが7月としても、医療機関の倫理審査委員会で了承を行い、承認を前倒しして投与を行うことが重症化の阻止、重症者の救命や肺炎による後遺症の回避にもつながる」との見解を示し「3カ月後に承認されるのであれば、先取りして投与を開始すべきではないか」と持論を語った。

 

安倍晋三首相がアビガンについて、新型コロナウイルス感染症を対象とした承認に向け治験を開始する考えを表明し、今年度中に200万人分の備蓄を計画していることについては、「海外に向けては大きなメッセージ。200万人分が国内消費用のみでないことを考えると、アビガンが外交戦略の切り札になる」と歓迎した。

 

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出典:薬事日報

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