コロナ対応の実習に指針~流行状況別に内容など示す
日本薬学会と薬学教育協議会は、新型コロナウイルス感染症に対応した2020年度薬学実務実習の指針をまとめた。大学の休校や受入施設での感染リスクなど、実務実習の実施が難しい状況となった緊急時の対応として、実務実習の最低限の質を担保するために示したもの。感染症の流行状況に応じて「通常期実習」「制限期実習」「中断期遠隔実習」の3段階に分け、それぞれの状況における実習内容や評価方法を参考として例示した。指針は、今年度の感染症対策が必要な期間に限って適用されるとしている。
今回の指針は、日本薬剤師会が示した「薬局実務実習における新型コロナウイルス感染症への対応」を受け、実務実習の最低限の質を確保するため、薬学会、薬学教育協議会、日薬が協議してまとめたもの。
大学や実務実習施設の指導薬剤師に対しては、感染症予防のための手洗いやうがいを励行し、施設内では原則マスク着用で実習を行うことや、実習開始2週間前から毎日体温を測定して体調を記録し、実習開始時に指導薬剤師に提出することなど、実習生に十分な感染症対応を指導するよう求めた。
また、大学の担当教員に対しては、感染症の状況に応じた対応について、実習開始前に予め指導薬剤師と協議して情報共有しておくよう要請。実習生に対しても開始前に実習中の感染対応について詳細を伝えておくよう求めた。
その上で、新型コロナウイルス感染症の流行状況に応じた実習内容として、施設での通常の実務実習ができる「通常期」は、代表的な疾患を基本に参加体験型実習を行うとしつつ、今年度はガイダンスや発表会、関連施設見学などの集合研修は極力控え、“3密”状態を生み出さない工夫を求めた。
実習の評価については、実習生の日誌や振り返りレポートの確認、概略評価などを通して、指導薬剤師は実習生の到達度評価を定期的に行いながら指導することを要請。大学は、概略評価や実習記録などを参照して総合的な評価を行うこととしている。
感染症に十分な注意が必要となり、患者応対に制限があるものの施設内で実習ができる「制限期」には、指導薬剤師が感染の可能性を危惧する実習は原則行わないと明記。実際、在宅訪問など施設で実習ができない内容は、過去事例や患者情報を利用し、施設内でのロールプレイや事例検討などの研修を実施することで代替するとした。
感染症対応で実習内容が制限される場合は、代表的な疾患や到達目標(SBO)の項目にこだわらず、できる範囲で体験実習を行えば良いとした。
実習の評価については、指導薬剤師による症例等の課題を実習生に与えることで補習した「経験を伴わない学習」の評価と合わせ、実習生が到達できたと指導薬剤師が考える評価を実習生と大学に示すよう求めている。
さらに、施設実習が中断されているものの、自宅で遠隔学習ができる「中断期」には、指導薬剤師は自宅学習のための課題を大学と連携して実習生に示し、課題の進捗状況を随時ウェブで確認。学習成果は電子メールなどで提出させ、添削指導を行うよう要請した。スマートフォンやパソコンによる遠隔双方向の指導も定期的に行うことが望ましいとしている。
実習生に提示する課題は、到達度の低い項目について適切な課題を選んで示すこととし、薬学モデル・コアカリキュラム「F薬学臨床」の領域と同領域に記載されたSBOを参照しながら、実習の進捗に合わせて学習不足と思われる領域を補填する課題を順次示すよう求めている。
実習の評価については、自宅学習も含め総合的に判断して行うとし、指導薬剤師から見て実習生が到達できたと考える評価を実習生と大学に提示すれば良いとの考えを示している。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
新型コロナウイルス感染症に対応した2020年度薬学実務実習の指針が、日本薬学会と薬学教育協議会によってまとめられました。大学の休校や受入施設での感染リスクなど、実務実習の実施が難しい状況となっている緊急時対応として、実務実習の「最低限の質」を担保するために示されたものです。感染症の流行状況に応じ、「通常期実習」「制限期実習」「中断期遠隔実習」の3段階に分けて、それぞれの状況における実習内容や評価方法を参考として例示してあります。なお、この指針は、今年度の感染症対策が必要な期間に限定で適用されるものとされています。