下剤の適正使用へ臨床研究~服薬時刻をデバイスで記録
静岡県立大学薬学部医薬品情報解析学の古島大資助教らは、患者の服薬時刻を記録するデバイスを使って薬局薬剤師が医薬品の適正使用を支援する方法の構築に向け、5月から臨床研究を本格開始した。下剤の服用状況を薬剤師が管理し、薬を飲む量やタイミングについて助言した効果を検証する。これにより、患者の症状改善やQOL向上につなげたい考えだ。
薬局薬剤師が助言介入
研究対象は、酸化マグネシウム錠を服用しているものの、下痢や便秘など排便コントロールが不良な60歳以上の高齢患者。患者がPTPシートから薬剤を取り出した日時をデバイスで記録するほか、トイレの回数や便の状態を日誌に記入してもらう。
2週間経過時点で薬局薬剤師が患者宅を訪問して、服薬記録データや日誌の情報などをもとに、薬を飲む量やタイミングについて助言。薬剤師の介入前後における排便状況やQOLの変化を比較する。
みどりや薬局(島田市)に定期的に来局する患者を対象に、5月から研究を本格開始した。今年度末までに患者10人の参加を得て、介入効果を検証する計画である。
研究に用いるデバイスは、総合包装企業のカナエが開発を進める服薬履歴管理システム「MEDLLECT(メドレクト)」。PTPシートの裏面に電子回路付きの専用ラベルを貼り付け、シート上部にタグを装着したシステムで、薬剤を取り出すためにシートを破ると回路が断線される。断線のタイミングと位置はタグに記録され、情報はクラウド上にアップロードされる。
薬剤師などの関係者は、メールやウェブサイトで情報を閲覧し、錠剤を取り出した日時や個数を確認できる。今回の共同研究では、実用化に向けてデバイスのユーザビリティや精度なども評価する。
研究を企画した古島氏は「システムやデバイスを用いることで、患者宅を訪問しなくても服薬状況を把握し、服薬アドヒアランスを高められないかと考えたことが最初の発想。様々な服薬記録デバイスがあるが、コンパクトで持ち運びができ、生活の中で無理なく使えるデバイスを選んだ」と話す。
服薬に対する認識は、薬剤師と患者の間で乖離がある。用法・用量通りに飲めていると患者が話していても、実際には服用間隔や薬の量が守られていないケースも見られる。特に、酸化マグネシウム錠は「自己調節可」という医師の指示が入っていることが多いため、患者一人ひとりの服薬状況にバラツキが生じやすく、適切に服用できていない場合もある。
共同研究に取り組むみどりや薬局の清水雅之氏は「患者は自らの判断で、便秘気味の場合にはしっかり飲み、下痢気味の場合には服用を止めるなどしており、効き目や副作用は服薬状況に依存している。今回の検証で、正確な服薬時間や服薬数を把握できれば、効果的なアドバイスをできるようになる」と期待を込める。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
服薬に対する認識は、薬剤師と患者さんの間で乖離があります。用法・用量通りに飲めていると患者さんが話していたとしても、実際には服用間隔や薬の量が守られていないケースも見られます。静岡県立大学薬学部医薬品情報解析学の古島助教らは、患者さんの服薬時刻を記録するデバイスを使用し、薬局薬剤師が医薬品の適正使用を支援する方法の構築に向け、5月から臨床研究を本格スタートしました。下剤の服用状況を薬剤師が管理し、薬を飲む量やタイミングについて助言した効果を検証します。研究用デバイスには、総合包装企業のカナエが開発を進める服薬履歴管理システム「MEDLLECT(メドレクト)」が採用されました。