医療

抗菌薬の供給問題不安視~病院勤務医が選択に苦慮

薬+読 編集部からのコメント

日本感染症学会学術講演会(8月20日、都内)で、現場の医師から供給問題で重症患者さんに対する抗菌薬の選択に苦慮し、改善が見えない状況を不安視する声が上がっていることが訴えられました。抗菌薬供給をめぐっては、日医工の抗菌薬について、出発物質を製造する中国メーカーの環境規制への対応による供給停止などで、昨年3月から半年以上にわたって出荷制限されていました。抗菌薬メーカーからは再発防止には出発物質や原薬メーカーとの情報共有や、パイプラインの強化などが必要との考えが提示された一方、原薬等の国内生産に対応するためには時間と資金などの課題が指摘されました。

抗菌薬の供給不安は生産現場だけではなく、医療現場にも大きな影響を与えている。20日に都内で開かれた日本感染症学会学術講演会で、現場の医師から供給問題で重症患者に対する抗菌薬の選択に苦慮し、改善が見えない状況を不安視する声が上がっていることが訴えられた。抗菌薬メーカーからは再発防止には出発物質や原薬メーカーとの情報共有やパイプラインの強化などが必要との考えが示された一方、原薬等の国内生産に対応するためには時間と資金などの課題が指摘された。

 

薬価是正求める声強く

抗菌薬の供給をめぐっては、日医工の抗菌薬「セファゾリンナトリウム注射用『日医工』」について、出発物質を製造する中国メーカーの環境規制への対応による供給停止などで、昨年3月から半年以上にわたって出荷制限された。これを受け、関係学会や業界から出発物質や原薬等の生産を海外に依存する現状を懸念する声が相次いだため、厚生労働省の関係者会議で安定供給に向けた施策の検討が進められている。

 

この日のシンポジウムで、抗菌薬を処方する医師の立場から中浜医院の中浜力院長は、全国の医師105人を対象とした抗菌薬の供給問題に関するアンケート調査の結果を公表。「抗菌薬が現在も不足して困っている」と回答したのは、病院が全体の46%、診療所が20%だった。

 

また、抗菌薬の選択に苦慮した感染症があったかどうかについては、病院が66%、診療所が20%となった。中浜氏は「病院勤務医は広範囲の重症感染症に対応しているため、選択に苦慮していると考えられる」と分析し、抗菌薬の供給問題で病院が大きな影響を受けている現状を報告。抗菌薬が安定供給されるまでの時期について約7割が「分からない」と回答し、改善が見えない現状を不安視する声もあった。

 

中浜氏は、「キードラッグの追加、削除などの改変については、製薬業界、厚労省の迅速な対応を期待する」と要望。第3世代セフェム系抗菌薬が第1世代セフェム抗菌薬よりも薬価が低い実態を挙げ、「矛盾した価格設定が多く見られるなど、早急な薬価是正が望まれる」と改善を促した。

 

一方、日医工の島崎博信頼性保証本部長は、セファゾリンの供給再開までの経緯を説明した。再発防止の課題として、出発物質、原料メーカーとの情報共有やパイプラインを強化すること、同一有効成分を製造するメーカーと緊密に連携することなどを挙げ、現在の供給状況については「全国まで行き渡っていないのが現状で、増産できるよう努力する」とした。

 

今年度の薬価改定で、増産に向けた設備投資が考慮されてセファゾリンの価格が引き上げられたことにも言及。「不採算品だったことを医療現場と共有し、薬価が引き下げられないよう努力したい」と述べた。

 

Meiji Seika ファルマの高橋義三郎ワクチン企画推進部長は、ペニシリンも同様に原料の製造を中国に依存している現状を説明。「中国のペニシリン生産量が増加し、使用量も多いため、日本が輸出先の最優先とはなりにくい」と指摘した。

 

ただ、原料等を国内生産する可能性については「工場を建てるかメンテナンスするには相当の時間、資金、継続性が必要だ。一企業では解決できないので、国や学会の支援を受けながら前向きに考えていくもの」との認識を示した。

 

ペニシリン系抗菌薬の薬価については、「生産コストの観点から下支えしてもらいたい」と要望。「企業とアカデミアが協力してどんな代替薬があるかリスクヘッジしておく必要がある」と述べた。

 

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出典:薬事日報

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