臨床研修求める声強まる~薬剤師業務の理解進まず
厚生労働省の「薬剤師の養成および資質向上に関する検討会」は11日、薬剤師業務や薬学教育など現状の課題について意見交換した。構成員からは、医師など他職種の薬剤師の業務内容に対する理解が進んでいないことや連携不足を厳しく指摘する声、大学のカリキュラムを削減してでも臨床研修の充実を求める意見などが上がった。10月以降、薬学教育や薬局薬剤師など個別テーマについて議論する。
この日の検討会では、7月の初会合に続き、薬剤師業務、薬学教育、薬剤師の確保などにおける課題について意見交換した。薬剤師業務の課題として、政田幹夫構成員(大阪薬科大学学長)は「病棟薬剤師が服薬指導しているだけで、医師と関わっているかが問題だ。医師と話さないと処方箋は変わらないし、重大な責任がある」とし、「そのような職能であると考え直さないといけないが、現在の薬剤師の職能はかけ離れている」と厳しく指摘した。
山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)も、特定機能病院への立入検査でヒアリングを行った経験を踏まえ「他職種が薬剤部で何を行っているか分からないとの意見がかなり出た。医療者が薬剤師の仕事を理解していないのが問題」とした。
薬学教育の面では、初会合でも医師と比べて薬剤師の臨床研修の不十分さを指摘する声が上がったが、この日も山口氏が「現場へのシームレスな教育で抜けているのが臨床研修だ。医師と同様に薬剤師も実施すれば、お互いの業務が分かると思う」と訴えた。
後藤輝明構成員(日本チェーンドラッグストア協会常任理事)は「臨床研修が非常に不足していると大学の教員も理解しているが、カリキュラムに加えることは難しいとの認識がほとんどだ」とした上で、「現在のカリキュラムを減らして臨床研修の時間を加えることや、医師会の協力で臨床知識をつけてもらえれば少しは変わるのではないか」と提案した。
赤池昭紀構成員(和歌山県立医科大学客員教授)は、教育現場の目線から「薬局薬剤師、地域医療薬学という実践的な薬剤師教育に関わる教員を充実させることが非常に重要」と述べた。
一方、この日の検討会では、今後の検討材料とするため、厚労省が薬剤師の需給調査の内容案を示し、概ね了承された。今年度末までに結果をまとめた上で、検討会に報告する考え。
調査では、2045年までの全国の薬剤師総数、地域別の薬剤師数を推計することとし、需要側を推計するため、薬剤師・医療機関における薬剤師業務の実態調査(タイムスタディ調査)、薬剤師の働き方に関する調査などを実施する。供給側では、大学進学予定者数、薬学部や薬科大学の定員数、薬剤師国家試験合格率などに基づき推計することとした。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
厚労省の「薬剤師の養成および資質向上に関する検討会」は9月11日、薬剤師業務や薬学教育など現状の課題について意見交換。検討会の構成員からは、医師など「他職種の薬剤師の業務内容に対する理解が進んでいないこと」や連携不足を厳しく指摘する声、大学のカリキュラムを削減してでも臨床研修の充実を求める意見などが上がりました。7月の初会合に続き、薬剤師業務、薬学教育、薬剤師の確保などにおける課題について意見交換される中、政田構成員(大阪薬科大学学長)は「病棟薬剤師が服薬指導しているだけで、医師と関わっているかが問題だ。医師と話さないと処方箋は変わらないし、重大な責任がある」とし、「そのような職能であると考え直さないといけないが、現在の薬剤師の職能はかけ離れている」と厳しく指摘しました。