非専門医の処方選択に影響~院内フォーミュラリー導入
ビスホスホネート製剤で
骨粗鬆症治療に用いるビスホスホネート製剤の院内フォーミュラリーを導入した結果、整形外科以外の診療科医師の処方選択に影響を与えた可能性があることが、東北医科薬科大学病院薬剤部の研究で明らかになった。非専門医では、院内フォーミュラリー導入後にビスホスホネート製剤の処方薬剤数が減少し、後発品の「アレンドロン酸ナトリウム錠35mg」の処方がゼロから約4割増加した。同院薬剤部は「院内フォーミュラリーが活用された結果、医師の処方選択に寄与したと考えられる」と分析。院内フォーミュラリーの導入が非専門医への処方提案に有効な方策の一つになるとしている。
同院では、2018年4月から入院患者を対象とした院内フォーミュラリーを導入しており、昨年8月時点でビスホスホネート製剤、H2受容体遮断薬など7薬剤群を作成している。既に後発品数量が80%を超えているため、薬剤費の削減にとどまらず、院内フォーミュラリーの対象薬を専門外の医師に処方提案することも目的としてきた。
同院におけるビスホスホネート製剤を対象とした院内フォーミュラリーは、第1推奨薬を後発品の「アレンドロン酸ナトリウム錠35mg」に設定。患者の服薬アドヒアランスも考慮すべきとの整形外科医の助言を踏まえ、月1回内服製剤である先発品の「リセドロン酸ナトリウム錠75mg」も第1推奨薬としている。
第2推奨薬は、同一成分ではあるものの経済性で劣る先発品の「アレンドロン酸ナトリウム水和物経口ゼリー35mg」とし、加齢などの要因で嚥下機能が低下している患者に考慮すべきとした。第3推奨薬は、先発品の「ミノドロン酸水和物錠50mg」となっている。
こうした中、同院薬剤部では、医師の診療科別に院内フォーミュラリーによる影響を比較するため、ビスホスホネート製剤の院内フォーミュラリー導入前後の処方実態を調査し、骨粗鬆症治療を専門とする整形外科医、整形外科以外の医師の処方選択に対する影響を電子カルテ内の診療データをもとに評価した。
その結果、処方されたビスホスホネート製剤は、院内フォーミュラリー導入前には整形外科医の処方薬剤数が37剤、整形外科以外の医師の処方薬剤数が534剤だったのに対し、導入後は整形外科医の処方薬剤数が76剤と増加。整形外科以外の医師の処方薬剤数は419剤と減少した。
整形外科医では、院内フォーミュラリー導入前後にビスホスホネート製剤が処方された患者数割合に有意な差は見られなかった。
これに対し、整形外科以外の医師が処方した患者数割合を見ると、第1推奨薬の後発品「アレンドロン酸ナトリウム錠35mg」がゼロから40.8%と大幅に増加。先発品「リセドロン酸ナトリウム錠75mg」は12.2%から14.4%とわずかに増えたが、「アレンドロン酸ナトリウム水和物経口ゼリー35mg」は67.6%から27.2%、「ミノドロン酸水和物錠50mg」が20.1%から17.6%と有意に減少した。
これらの結果から、整形外科以外の医師では、院内フォーミュラリー導入前後にビスホスホネート製剤を処方した患者数の割合で有意な差が認められており、導入前後で処方されたビスホスホネート製剤が変更になった患者もいたことが明らかになった。
同院薬剤部は、「院内フォーミュラリーが活用された結果、医師の処方選択に寄与したと考えられる」と分析し、院内フォーミュラリーの導入は対象薬剤を専門外とする医師に対し、有効性や安全性、経済性に優れた薬剤を処方提案できる可能性があるとしている。
<このニュースを読んだあなたにおすすめ>
病院薬剤師は大変?病院勤務に向いている人や魅力とは
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2018年4月より、入院患者を対象とした院内フォーミュラリーを導入している東北医科薬科大学病院では、骨粗鬆症治療に用いるビスホスホネート製剤の院内フォーミュラリーを導入した結果、整形外科以外の診療科医師の処方選択に影響を与えた可能性があることが、同院薬剤部の研究で明らかになりました。「院内フォーミュラリーが活用された結果、医師の処方選択に寄与したと考えられる」(同院薬剤部)と分析されており、院内フォーミュラリーの導入が非専門医への処方提案に有効な方策の一つになるとしています。