医療

入学者約3割は地元出身~薬剤師の地域偏在解消へ【和歌山県立医科大学薬学部】

薬+読 編集部からのコメント

和歌山県立医科大学は今春、和歌山市の中心地にある伏虎キャンパスに薬学部(6年制、定員100人)を新設。和歌山県初の薬学部となり、関西圏で初の公立大学薬学部になります。医学部や保健看護学部を持つ医療系総合大学としてIPE(多職種連携教育)を推進し、地域で活躍できる薬剤師や研究能力を備え国際的に活躍できる薬剤師の育成に取り組みます。初年度入試の結果、地元出身の入学者は県内枠15人を含めて全体の約3割に達し、かねてから懸念されていた「薬剤師の地域偏在」解消に向けて良好な滑り出しとなりました。

和医大薬学部がスタート

 

和歌山県立医科大学は今春、和歌山市の中心地にある伏虎キャンパスに薬学部(6年制、定員100人)を新設した。和歌山県初の薬学部で、関西では初めての公立大学薬学部になる。初年度の入試の結果、地元出身の入学者は県内枠15人を含め全体の約3割に達し、薬剤師の地域偏在解消に向けて良好な滑り出しとなった。医学部や保健看護学部を持つ医療系総合大学として多職種連携教育(IPE)を推進し、地域で活躍できる薬剤師や研究能力を備え国際的に活躍できる薬剤師の育成に取り組む。

同大薬学部は、薬剤師不足に悩み続けてきた地元関係者の要望に県が応える形で設置。初年度の県出身の入学者数は計27人となった。県の高校に通う生徒や県内在住者らを対象にした推薦入試の県内枠15人に加え、推薦入試全国枠で2人、一般選抜で10人が入学。和歌山を含め関西の出身者は入学者の7割を占め、残る3割の中では愛知、静岡、島根からの入学者が多かった。

 

推薦入試(県内枠募集人員15人、全国枠15人)の倍率は約2倍、一般選抜(70人)の倍率は約2.6倍となり、適度な競争環境が形成された。受験生からは、入試の難易度は全国の公立大学薬学部や地方の国立大学薬学部と同程度と認識されていた模様で、太田茂薬学部長は「イメージ通りの人材を確保できた」と話す。

 

全国の薬学部では初めて、県内枠の入学者には卒後2年間の研修を義務づけた。卒業生は、卒後1年目に和歌山市内の病院で先進医療の研修を受け、2年目には市外の中核病院や薬局で地域医療の研修を受ける。研修内容は今後関係者と協議して固めるが、一般的なレジデント制度と同様に、相応の給料を受け取って働きながら研修を受ける体系になりそうだ。

 

太田氏は「初の薬学部ということもあって、入試説明会の頃から、学校推薦型選抜に対する地元高校の熱い思いは伝わってきていた。地元の高校から非常に優秀で意欲的な学生を推薦してもらえた」と語る。

 

当初は推薦入学者と一般入試入学者の基礎学力に差がつくのではないかと懸念もあったが、結果的に学力差は生じなかったという。

 

県では、特に南部などの地域で薬剤師不足が著しい。県内の薬剤師の平均年齢は高く、次世代の薬剤師養成が課題になっている。太田氏は、薬学部の設置が薬剤師不足の緩和や若手人材の供給につながると共に、「卒業生の中から地域で先導的に活躍できる薬剤師が育ってくれればいい」と期待を込める。

医療系総合大学として3学部が取り組むIPEも特徴。1年次には通年、医学部と薬学部、保健看護学部の学生が合同で、患者の視点で物事を考える医療人の心構えを学ぶケア・マインド教育を実施する。関連する講義を合同で受け、3学部の学生が小グループに分かれてディスカッションを行う。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、講義やディスカッションにはオンラインを積極的に活用する予定だ。

 

その他にも、人体シミュレーターを用いた実習やバイタルサイン測定実習の合同実施などを検討しており、教育資源との折り合いをつけながらIPEの拡充を進める。

 

薬学部の教員数は約60人。既に約半数が赴任しており、2年後には全員が揃う。半数弱は医療系・臨床系の教員が占めており、「他の国公立大学に比べると臨床系の割合が高いことも強み」と太田氏は語る。

 

研究面では、医学部との合同大学院を2024年度から立ち上げる計画。薬学部単独で大学院を設置する場合には早くても6年後になってしまうが、合同設置によって前倒しできる。他大学の卒業生を受け入れたり、医学部との共同研究を進めて研究を活性化する。学部生は3年次後期に研究室へ配属する。

 

薬学部設置に合わせて、医学部や附属病院がある紀三井寺キャンパスに次世代医療研究センターが新設された。建物内には患者組織などを保存するバイオバンクを設置。3学部の共同研究や産官学連携研究を推進するほか、薬学部の実務実習の拠点としても活用する計画だ。

 

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出典:薬事日報

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