【国内製薬大手21年3月期決算】主力品伸びるも全社減収~減損や開発費が利益を圧迫
国内大手製薬企業4社の2021年3月期決算(連結)が出揃った(表参照)。各社とも主力のグローバル製品が好調に推移し、成長の底堅さを見せたものの、事業売却や契約終了などによる売上減が影響し、揃って減収となった。利益面でも、武田薬品が武田コンシューマーヘルスケア売却に伴う譲渡益の計上などで大幅増益となったことを除くと、アステラス製薬は遺伝子治療薬の開発計画見直しによる減損損失、第一三共とエーザイは研究開発費の増加や販売マイルストンの減少が重荷となり、二桁の大幅減益となった。22年3月期は、主力品の売上拡大を背景に一転して4社で増収予想。武田を除く3社が営業増益に回復する見通しだ。
売上高を見ると、武田は、消化器疾患領域で主力品の潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」が23.6%増の4293億円と大幅に伸長した。酸関連疾患治療薬「タケキャブ」も日本での新規処方が拡大し、16.7%増と二桁の伸びを示したが、希少疾患領域が6.8%減、癌領域が1.1%減、ニューロサイエンス領域も4.8%減と不振だったことに加え、事業売却や為替の影響もあり、全体で2.8%の減収となった。
アステラスは、主力品の前立腺癌治療薬「イクスタンジ」が全世界で二桁成長を達成し、14.6%増の4584億円と伸長。新製品の急性骨髄性白血病治療薬「ゾスパタ」も67.2%増と拡大。昨年12月に米国で新発売した尿路上皮癌治療薬「パドセブ」の共同販促収入も寄与した。
ただ、過活動膀胱治療薬「ベシケア」の欧州での独占販売期間の終了に加え、日本での販売契約終了などによる売上減が響き、3.9%の減収となった。
第一三共は、グローバル主力品の抗癌剤「エンハーツ」が約3.1倍増の435億円と成長し、抗凝固薬「エドキサバン」(一般名)も7.7%増の1659億円と好調に推移したが、ワクチンを含めた国内医薬事業が薬価改定などの影響で8.3%減と落ち込み、2.0%の減収となった。
エーザイも、主力品の抗癌剤「レンビマ」が米国を中心に成長して19.7%増の1339億円と二桁の伸びを示し、抗てんかん薬「フィコンパ」も日本での売上増を背景に、5.8%増と堅調に推移したが、米メルクからの「レンビマ」の販売マイルストン減少が響き、7.1%の減収となった。
21年3月期は、各社とも主力のグローバル製品は順調に売上を伸ばし、成長の底堅さを示したものの、武田は事業売却と為替、アステラスは欧州と日本の販売契約終了、第一三共は国内事業の不振、エーザイは販売マイルストンの減少が売上減に影響した。
利益面では、武田は武田コンシューマーヘルスケアの売却による譲渡益計上やシャイアー買収関連費用の減少により、営業利益は約5倍増と回復。
一方、アステラスは、「イクスタンジ」の共同販促費用などが膨らんだほか、抗TIGIT抗体の開発中止、遺伝子治療薬の開発計画見直しに伴う減損損失を相次ぎ計上したことが響き、営業利益は44.2%の大幅減益となった。
第一三共は、「エンハーツ」に関する販管費の増加と次期主力の抗体薬物複合体(ADC)3製品の研究開発費が膨らんだことから、営業利益は54.0%減と半減。
エーザイも販売マイルストンの減少に加え、アルツハイマー病治療薬の開発に対する研究開発費の増加が響き、営業利益は58.8%減と大幅に減らした。
22年3月期は、主力品の拡大を背景に、売上高は4社とも増収を予想。利益面では、営業利益で武田を除く3社が増益を見込んでいる。
武田は、研究開発費を大幅に増やして5220億円の投資を計画しており、利益を押し下げる模様。アステラスは減損損失の影響がなくなることから増益を見込む。第一三共もサノフィへのワクチン事業損失補償金の影響がなくなるため、増益を予想。エーザイも、売上増を背景に増益を計画している。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
武田薬品、アステラス製薬、第一三共、エーザイなど国内大手製薬企業4社の2021年3月期決算(連結)が出揃いました。各社とも主力のグローバル製品は順調に売上を伸ばし、成長の底堅さを示したものの、武田は事業売却と為替、アステラスは欧州と日本の販売契約終了、第一三共は国内事業の不振、エーザイは販売マイルストンの減少が売上減に影響しました。2022年3月期は、主力品の売上拡大を背景に一転して4社で増収予想されており、武田を除く3社が営業増益に回復する見通しです。