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【精神医療実習を必修化】全国初、昨年からスタート~偏見のない薬剤師育成へ【昭和大学薬学部】

薬+読 編集部からのコメント

これまで医学部、歯学部、保健医療学部において精神科医療の実務実習が実施されてきた昭和大学では、昨年から薬学部においても5年次の実務実習で精神科医療を学ぶ「精神医療実習」をスタートさせました。精神科専門病院である昭和大学附属烏山病院(東京都世田谷区)において3日間にわたり行うもので、精神科病院で5年次の学生全員が必修で学ぶ全国初の取り組みです。実習は、平日3日間でプログラムを構成。初日はオリエンテーションとして、精神科医療の基礎を学んだ後、抗精神病薬による錐体外路症状の評価尺度「DIEPSS」、薬に対する飲み心地の評価尺度「DAI10」の講習を受けます。

昭和大学薬学部は、昨年から5年次の実務実習で精神科医療を学ぶ「精神医療実習」をスタートさせた。精神科専門病院である昭和大学附属烏山病院(東京都世田谷区)において3日間にわたって行うもので、精神科病院で5年次の学生全員が必修で学ぶ全国でも初めての取り組みとなる。プログラムでは、病棟で患者と接したり、医師の外来診察を見学するなど、「生の臨床現場」を体験する内容にこだわっており、精神疾患を抱えた患者に対し、偏見を持たずに対応できる薬剤師を育てたい考えだ。

 

同大では、これまで医学部、歯学部、保健医療学部において精神科医療の実務実習が行われてきたが、薬剤師を養成する薬学部だけが実施できていなかった。

 

また、改訂薬学教育モデル・コアカリキュラムでは、全ての薬学生が実務実習で代表的な8疾患を学べるような環境整備が求められ、その中に精神疾患が組み込まれたものの、薬学部の改訂コアカリに精神疾患への対応を体系的に学ぶ到達目標(SBO)の設定がなかったのが現状だ。

 

こうした中、附属病院に精神科専門病院を持つ強みを生かし、昨年から薬学部の5年次の学生全員が必修で精神科医療を学ぶ実務実習がスタートした。同大薬学部病院薬剤学講座准教授で烏山病院薬局長の黒沢雅広氏(画像)は、「実習を通じて精神科医療の臨床知識を習得するだけでなく、精神疾患を抱えた患者さんに対し、偏見を持たずに対応する経験をしてほしい」と狙いを語る。

 

精神医療実習は、平日の3日間でプログラムを構成。初日はオリエンテーションとして、精神科医療の基礎を学んだ後、抗精神病薬による錐体外路症状の評価尺度「DIEPSS」、薬に対する飲み心地の評価尺度「DAI10」の講習を受ける。

 

翌日は、午前に非薬物療法として電気痙攣療法を見学し、実際に入室して筋弛緩薬の効き方や通電中の痙攣の種類を学ぶ。午後は実際に学生2人がペアになって病棟に出向き、患者とコミュニケーションを図る実習の最大の山場となる。

 

看護師に同行し、病棟で患者の食事風景や服薬場面、保護室などを見学後、直接学生と患者がコミュニケーションを取り、前日に習得したDAI10の質問をしてスコアを付ける。学生はその所見と考察を報告書に記入し、主治医と看護師にフィードバックしてコメントをもらう。

 

最終日は、午前に外来診察室で診療を見学するほか、患者に起こっている過鎮静や幻聴・幻覚といった副作用のバーチャル体験も学ぶ。このような濃密なプログラムに3日間で取り組んでいる。

 

実習を体験した学生からは「精神科は閉ざされた暗い環境と思っていたが、実際に病棟に行くと違う様子だった」など前向きなコメントが多く、黒沢氏は「やはり生の現場を見て、学生の判断で能動的に患者さんと関わっていることが良い印象につながっているのではないか」と手応えを語る。

 

ただ、烏山病院では、人員不足から薬剤師による病棟薬剤業務は十分に実施できていないのが現状で、黒沢氏は「今後は薬剤師が病棟で活躍している姿を見せられるようにしたい」と課題を語る。

 

昨年スタートした精神医療実習は、新型コロナウイルス感染症の影響で座学に振り替えた時期があったものの、既に100人近くの学生が参加した。

 

黒沢氏は「精神医療実習は、附属病院に精神科専門病院がある昭和大学の強みを生かせると思っている。精神科に対する偏見をなくし、学生には良い成功体験をしてもらい、希望を持って薬剤師になってほしい」と話している。

 

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出典:薬事日報

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