インタビュー 公開日:2021.01.28 インタビュー

精神科薬物療法認定薬剤師ってどんな仕事?やりがいを中田祐介先生が語る

患者さんやご家族だけでなく、薬剤師をはじめとする医療関係者にも誤った認識をもたれがちだという精神疾患。線引きが難しく、専門性の高い領域だけに、「精神科薬物療法認定薬剤師」に求められる役割とはどのようなものなのか、ゆう薬局の中田先生にお話を伺いました。

中田祐介(なかだ・ゆうすけ):2002年、水野薬局(東京都)に入局。その後サカエ薬局(青森県)を経て現在に至る。大学病院、総合病院、開業医の近隣をはじめ、面分業、 24時間営業などさまざまな形態の薬局を経験。「精神科薬物療法認定薬剤師」「認定実務実習指導薬剤師」として活動中。

 

本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医療情報おまとめ便サービス」特集2019年8月号P.25-26「第一線で活躍する認定薬剤師に聞くvol.3 精神科薬物療法認定薬剤師」を再構成したものです。

 

精神科薬物療法認定を取得し、精神疾患への専門性を追求

私は現在、岐阜県高山市内の「ゆう薬局」にて薬剤師兼経営者として勤務しています。精神科には以前から興味を持っていたのですが、そもそも精神科では、本当に精神疾患なのかどうか、治療の対象になるのかどうか……線引きが難しい場合もありますよね。時には「気持ちの問題」などと精神論で片付けられてしまうこともありますし、精神疾患というだけで、偏見の目で見られたりすることもあり、周囲の人間に勘違いされてしまうこともあります。医師によって診断が変わることも珍しくなく、「本当にこの薬で良いのだろうか?」という疑問や捉え難さも加わり、高度な専門知識が求められる分野だと考えるようになりました。そんな時、薬局薬剤師でも取得できるように認定制度が改正されたと聞き、精神科薬物療法認定の取得を目指そうと決意しました。

自分のスキルがどの程度なのか、それを知る客観的な基準として

当薬局は精神科や心療内科のある須田病院の近隣に立地しています。精神科に対する経験値が多いため必然的に精神疾患に詳しいと思われがちですが、経験値があるからといって詳しいということにはなりません。もちろん、私自身も精神科の近隣の薬局として最低限のスキルを持っているべきとの思いから、自分なりに日々勉強したり研修会に参加してきたつもりですが、それが実際にどの程度のレベルのものなのか、単なる自己満足なのか判断がつかないでいました。ですから客観的に評価されるスキルを持たなければという思いが重なったのも認定取得を考えたきっかけでした。

失敗や学びを経たことで認定取得後の責任の重さを実感

実は私は一度認定試験に落ちているんです。少なからず経験値もあり、自分なりに勉強してきた自負もありましたが、いかに表面的な知識にしか目を向けていなかったのか痛感させられました。病院薬剤師の方々は、より専門性が高い領域で日々研鑽を積んでいらっしゃることを考えると自分はまだまだ未熟だということも再認識し、勉強の進め方や薬局薬剤師としての在り方などを見直すことができましたので、そうした過去の失敗経験も今の自分に活かされているのだと思います。

 

認定を取得したとはいえ、基本的な業務内容が変わるわけではありませんが、過去の反省もあり、責任感は以前よりも強くなったと感じます。認定を名乗っている以上、それに見合った仕事をしなければいけませんし、薬剤師からも相談される立場になり自分の資格に対する責任を意識するようになりました。

精神疾患への偏見や勘違いを啓蒙活動によって正していく

患者さんやご家族の中には、自宅の近所の薬局には行きたくないという声もあります。精神疾患で通院しているという事実を知られたくないからだそうです。

 

その意味においても、精神疾患における啓蒙活動は私たちの仕事だと考えています。市の健康教室などで講義をする際は、精神疾患は内科疾患等と同様、あくまでも病気なので適切な治療(薬)が必要であること、引け目を感じる必要のないことなどを理解してもらえるように努めています。

 

我々がやらずして誰がやるんだという思いで、患者さんに対しても、ご家族に対しても、薬剤師に対しても、もっと当たり前の病気として理解してもらえるよう努めていければと思っています。

資格ではなく、質で評価される薬剤師に

認定資格を持つことが凄いということではなく、認定を取得した人がその資格に恥じない働き方をすることこそが大切だと思います。そうすることで「あの認定を受けている薬剤師はやっぱり違う」と、資格自体が評価されることにつながるはずです。それは薬剤師という資格も同様で、薬剤師だから薬に精通していて凄いということではなく、一生懸命に努力し実績を重ねる薬剤師が多く出てくることで、薬剤師の存在が評価され、信頼されることにつながるのではないでしょうか。

 

■「症time」の取り組み

 

高山市では、精神科の処方箋は当薬局を含む一部の薬局に集中しており、認定薬剤師としてここで得た経験や知識を還元していかなければと考えています。また医療機関の近隣の薬局の役割として、患者さんを囲い込むことではなく、患者さんがどこの薬局にいても困らないようフォローしていくことが大切だと思い、地域の薬剤師会へ事例紹介の取り組みをはじめました。

 

忙しい薬剤師の皆さんが手軽に読めるように、シンプルな内容にまとめて、メールに添付して薬剤師会経由でお送りしています(※)。この取り組みが、地域医療ネットワークの強化にもなるのではないかと期待しています。

 

※ 2018年に高山市薬剤師会へ。2019年に下呂市薬剤師会と飛騨市薬剤師会にも拡大。

 

出典:株式会社ネクスウェイ「医療情報おまとめ便サービス」特集2019年8月号

 

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