入学定員抑制「検討すべき」~国試合格者数減には慎重【厚生労働省】
取りまとめ骨子案示す
厚生労働省は4日、「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」に取りまとめ骨子案を示した。将来的に薬剤師数が過剰になるとの需給調査結果を踏まえ、大学薬学部の入学定員抑制については検討すべきとした一方、薬剤師国家試験の合格者数引き下げは「慎重な検討が必要」と踏み込まなかった。臨床実践能力を持った薬剤師を育成するため、国家試験の見直しにも言及。必須問題などの基礎知識分野を軽減し、臨床に関する問題を増やすよう提案した。
骨子案では、検討会での議論内容を踏まえ、薬剤師の養成、薬剤師業務と資質向上に関する提言を盛り込んだ。
薬剤師の養成を見ると、将来的に薬剤師が過剰になると予想した需給推計結果を踏まえ、「薬学部の入学定員を抑制する必要性を検討すべき」と明記。その際は、大学だけでなく薬剤師会、国公私立大の関係団体でも検討することが必要とした。
薬剤師国家試験の合格者数については、近年9000~1万人で推移している。今後、合格者数を抑制していく方向性については、不合格者を増やすことになり、薬剤師を養成する教育機関としての役割を考慮すると「望ましい方向とは言えない」として、慎重な検討が必要とした。
構成員からは、「入学定員の抑制は必至で、早急に検討が必要との旨を記載すべき」「抑制か否かを議論していては遅い。速やかに実行できるよう入学定員をコントロールする仕組みの整備を明記してはどうか」など、確実な実施を求める声が相次いだ。
さらに、「入学者数に対して国家試験合格者数が半数程度の大学など、資質の低い学生がいることが問題。少なくとも入学定員を全体で1万人程度にし、9割くらいを合格させる教育体制が必要」と具体的な数字に踏み込む声も上がった。
また、国試の合格率が低い大学があることは改善すべき課題として指摘。一部の私立大学では、見かけ上の合格率を維持するため、受験者の絞り込みを行っている実態があることから、大学側が都合が良い数字に限らず、進級率や標準修業年限内での合格率といった情報も示すよう求めた。
国家試験の出題については、医療実態や薬剤師業務の変化に対応した内容にするため、定期的に合格や出題に関する基準の見直しを行うべきとした。物理・化学・生物などの薬剤師として不可欠な基礎科目については、4年次の薬学共用試験のCBTで、国家試験の必須問題レベルの理解度まで達成させ、代わりに国家試験時には基礎知識分野の問題を軽減し、臨床に関する問題を増やすことも提案した。
薬学教育では、薬学教育モデル・コアカリキュラムの見直しに関する検討に、今後の実務実習のあり方も加えるよう求めた。最新の臨床現場を理解した教員の確保が必要になるとし、薬剤師としての実務経験を持つ専任教員は、医療現場との交流を進めるべきと提言した。
カリキュラムとしては、実務実習以外でも臨床現場の実態が学べるほか、薬科大学が他の医療系学部を持つ大学との連携を前提としたものを構築する必要があるとした。
さらに、薬剤師の資質向上のためには、臨床実践能力を担保するには薬剤師免許の取得だけでは不十分とし、卒前・卒後で医療機関や薬局での一貫した卒後研修の検討が必要とした。臨床実践能力の向上には、学会等による専門性の認定取得も望ましいとの考え方も示した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
厚労省では「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」に取りまとめ骨子案を提示(6月4日)。検討会での議論内容を踏まえ、骨子案には「薬剤師の養成」「薬剤師業務と資質向上」に関する提言が盛り込まれています。将来的に薬剤師数が過剰になるという需給調査結果を踏まえ、大学薬学部の入学定員抑制については検討すべきとした一方、薬剤師国家試験の合格者数引き下げに関しては「慎重な検討が必要」と踏み込まれませんでした。薬剤師の資質向上に向け、臨床実践能力を担保するためには薬剤師免許の取得だけでは不十分とし、卒前・卒後で医療機関や薬局での一貫した卒後研修の検討が必要とされています。