医薬品の自主回収に歯止め~澤井会長「製造体制の再点検急ぐ」【日本ジェネリック製薬協会】
日本ジェネリック製薬協会の澤井光郎会長は、本紙のインタビューに応じ、病院や薬局で後発品の安定確保ができない状況について、「多品目の自主回収が起きた場合に即座の多品目の増産は困難である」と短期的視点で対処方法を探るのは難しいとの認識を示した。その上で、「今回のように大量の品目が自主回収となる事態を二度と引き起こさないことが重要」と指摘。現在、会員企業39社で製造販売承認書と製造実態に齟齬がないか再点検を行っており、「年内には全社が完了する見込みで、医薬品医療機器等法違反による自主回収はゼロにできる」と見通した。
規制強化は「粛々と対応」
小林化工や日医工による薬機法違反で多くの品目で自主回収となり、病院や薬局では必要な医薬品が調達できないとの問題が続いている。医療関係団体からはGE薬協に対し、「供給調整を実施し、医薬品が届くようにしてほしい」との要望が出ているという。
澤井氏は、「供給に支障を来す医薬品が発生した場合は、供給の見通しも含め情報提供を徹底している」とした一方、安定供給への対応については「法令上(独占禁止法)の問題もあり、踏み込んだ対応が難しい」との認識を示す。
また、多品目の自主回収が起きると、業界の努力だけでは短期的視点で問題解決を図るのは難しいと説明する。「1品目の自主回収なら何とか対応できるが、200品目超が一度に回収となると供給不足になってしまう。供給不足をカバーするのに残された企業が増産体制を組んではいるが対応に限界がある」と指摘。有効な対処方法がないことから、「供給が止まっている企業の一日も早い供給再開を待っていただくしかない」と話す。
その上で「今回のように大量の品目が自主回収となる事態を二度と引き起こさないことが重要」と強調する。会員企業39社では承認書と製造実態に齟齬がないか点検を行い、実施状況と実施結果については協会の特設サイトと自社ホームページで公開している。
既に会員企業の7割弱の企業が公開しており、年内には全ての企業が点検を終える予定だ。澤井氏は「しばらくの間は自主回収が出てくる可能性を否定できない期間だと捉えている。しかし、点検が完了すれば薬機法違反による自主回収に歯止めはかけられる」と話す。
後発品に対する規制強化も進められている。全体の3分の1を占める後発品の共同開発品については承認審査が厳格化されることになった。
澤井氏は「元会員企業で死亡例を含む多数の健康被害を出してしまったことは忘れてはならない。当該企業のガバナンス・コンプライアンスの問題があったにしろ、共同開発を行った企業が不正を見抜けなかった」との反省の弁を述べ、「われわれとしては粛々と対応していきたい」と語る。
一方、収載後5年間で安定供給に対応できなかった製品があった場合、以後2回の収載見送りとするルール変更については「このルールの運用を恐れるあまり、薬価収載直前に発売を取りやめる企業が出てきて、余計に安定供給に支障を来すことになりかねない厳しい面がある」と疑問を呈した。
「経済財政運営と改革の基本方針2021」で、23年度末に全都道府県で数量シェア80%以上との目標が掲げられたことについては、「市場に流通するジェネリック医薬品の品質がしっかりと保証されたものと社会的に認識されれば目標達成は決して難しくないのではないか」との見通しを示した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
小林化工や日医工による薬機法違反で多くの品目が自主回収となり、病院や薬局では必要な医薬品が調達できないとの問題が続いています。日本ジェネリック製薬協会にも「供給調整を実施し、医薬品が届くようにしてほしい」との要望が出ているといいます。そんな中、同協会の澤井会長は「多品目の自主回収が起きた場合に即座の多品目の増産は困難である」と短期的視点で対処方法を探るのは難しいとの認識を提示。また安定供給への対応については「法令上(独占禁止法)の問題もあり、踏み込んだ対応が難しい」と語りました。