在宅特化型薬局が開局~処方箋調剤依存から脱却【ハスク薬局】
介護事業を主力とする「HASC事業団」は今月、横浜市保土ケ谷区に在宅医療特化型薬局「ハスク薬局」を開局した。人口減と薬局の乱立を背景に、処方箋調剤に依存した薬局の事業モデルがいずれ頭打ちになると予測。近隣に医療機関がなく外来患者が少ない立地で敢えて開局し、介護事業での基盤を生かして在宅特化型薬局の新たなスタイルに挑む。機械化やICT化、非薬剤師の活用で薬剤師の対物業務比率を20%以内にとどめ、薬剤師による在宅訪問サービスを中心に現行の診療報酬体系でも黒字化が可能な事業モデル構築を目指す。
対人業務8割で収益化
HASC事業団は2006年に設立し、横浜市内に介護施設や在宅を中心とした訪問鍼灸マッサージ、リハビリ特化のデイサービスを手がけ、13年から訪問歯科診療のサポートを行ってきた。さらに在宅医療特化の保険薬局を開局し、今月2日から営業を開始した。
ハスク薬局は、相鉄線上星川駅から徒歩5分の場所に位置する。従業員数は事務職員を含め5人程度で、近隣には医療機関がなく、外来患者からの処方箋応需がほぼ見込めない立地に開局した。
同社は新型コロナウイルスの感染拡大が続く中にあっても、厚生労働省がまとめた調査結果で薬剤師による居宅療養管理指導の件数が他の職種に比べても増加していることに着目。薬剤師による在宅訪問サービスに対するニーズが高いと判断し、在宅特化型の新たなスタイルの薬局に挑むことを決断した。
ハスク薬局が標榜しているのは、“訪問薬剤師ステーション”である。既に社会に定着している訪問看護ステーションのように、薬剤師が地域に出て活躍していくことをイメージしている。
薬局内は機械化やICT化、非薬剤師の活用などで対物業務の合理化を図り、薬剤師1人体制の実現を目指す。
それ以外の薬剤師は在宅訪問サービスの提供者となり、対人業務に専念できる環境を作り上げる。
同社では在宅特化型薬局として黒字化するために、薬剤師が1日6件以上の在宅訪問サービスを実施できる体制が必要と試算。利用者を増やすために地域連携の専任者を配置し、介護事業で培ってきた基盤を生かし、ケアマネージャーや在宅クリニック、訪問看護ステーションのニーズも把握して対応する。
地域の医療機関や薬局とも連携しながらサービスを提供する方針で、臨床経験のある病院薬剤師を採用するなど薬剤師の増員を図り、訪問件数も増やす。
ハスク薬局の開業に携わった赤瀬朋秀氏(日本経済大学大学院経営学研究科教授)は、横浜市の人口10万対外来患者数を1薬局当たりの顧客数として換算した場合に、125.7人にとどまる結果を紹介。
「市内のドラッグストアが調剤併設であった場合はさらに減少し、処方箋以外のニーズが大きい住民がドラッグストアの潜在顧客になると薬局の将来顧客は大幅に減少する」と述べ、処方箋調剤に依存した経営ではドラッグストアの台頭によって淘汰されることに警鐘を鳴らす。
報酬獲得のみを目指した最低限の在宅業務では顧客ニーズを満たすことができないのに対し、在宅業務に特化した薬局であれば大手薬局チェーンとの差別化も可能になり、「十分に勝算のある事業形態である」と強調している。調剤報酬体系が対物中心の業務から対人中心の業務へとシフトする中、先手を打って収益化に向けた準備を進めていく。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2006年に設立され、横浜市内に介護施設や在宅を中心とした訪問鍼灸マッサージ、リハビリ特化のデイサービスを手がけ、2013年からは訪問歯科診療のサポートを行っている「HASC事業団」が8月、横浜市保土ケ谷区に在宅医療特化型薬局「ハスク薬局」を開局。人口減と薬局乱立を背景に、処方箋調剤に依存した薬局の事業モデルがいずれ頭打ちになると予測したうえで、近隣に医療機関がなく外来患者が少ない立地で敢えて開局し、介護事業での基盤を生かして在宅特化型薬局の新たなスタイルに挑みます。