医療

「非薬剤師」と協働で質向上~中小病院で病棟業務に注力【日本医療薬学会年会】

薬+読 編集部からのコメント

日本医療薬学会年会は、9月23日から25日まで、群馬県高崎市でタスクシフトやタスクシェアをテーマにシンポジウムを開催しました。各病院の薬剤師が取組事例をもとに議論を行い、薬剤師が病棟業務に注力できるよう、霧島市立医師会医療センターでの非薬剤師との協働事例などが報告されました。

日本医療薬学会年会が23~25の3日間、高崎市のGメッセ群馬で開かれ、タスクシフトやタスクシェアをテーマにしたシンポジウムでは、各病院の薬剤師が取り組み事例をもとに議論した。薬剤師が病棟業務に注力できるように非薬剤師との協働を進めた霧島市立医師会医療センター薬剤部の岸本真氏は「薬剤師の業務の質を向上させつつ、時間的余裕や業務的余裕を確保することにつながった」と報告。業務分担に当たっては「誰に何を、どこまでしてもらうのかを明確にする必要がある」と語った。

 

同院は、鹿児島県にある254床の中小病院。2016年度に薬剤師数が薬剤部の業務維持に必要な6人を下回ったことをきっかけに、非薬剤師2人を新規雇用。従来の助手2人を実務系薬剤部員とし、新たに雇用した看護師1人、事務系薬剤部員1人を加えて機能性薬剤部員と位置づけ、業務分担に取り組んだ。

 

業務の見直しに当たって、▽その業務は必要か▽業務内容は正しいか▽それだけの時間が必要か▽その業務に薬剤師が必要か――を検討。各種業務をリストアップした上で、薬剤師資格が必須の業務、薬剤師が行うべき業務、薬剤師でなくても可能な業務に分けて、タスクシフトやシェアを進めた。

看護師の薬剤部員には薬剤取り揃えや、抗癌剤混合調製時のモニターでのダブルチェックなどを依頼。実務系薬剤部員には調剤前準備や薬品補充、事務系薬剤部員には医薬品発注業務などを担当してもらった。

 

その結果、薬剤師の残業時間が減少。薬剤師が行うべき業務に時間を捻出できるようになり、20年4月から病棟業務の改革を開始した。複数の薬剤師で病棟を担当し、病棟ごとの薬剤管理指導業務実施率で評価するようにしたところ、全病棟での実施率は取り組み前の48.5%から65.4%に高まった。その後、採用活動を工夫し、薬剤師数は17人に増加。機能性薬剤部員も増えた。

 

岸本氏は「薬剤部の業務を整理し、機能性薬剤部員を導入したことで、薬剤師でなければ行えない業務に集中することが可能になった」と話した。

 

一方、三豊総合病院薬剤部の篠永浩氏は、プロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM)の枠組みを活用し、薬剤師が医師の処方オーダ入力を支援していると報告した。

 

同院は香川県にある462床の急性期病院で、薬剤師数は26人。16年から全病棟への薬剤師常駐を開始するなど病棟業務に力を入れている。薬剤師による医師の処方オーダ入力支援に当たって、プロトコール合意文書を作成した。薬剤師がその都度医師に事前確認せずオーダ入力できる項目として、定期服用薬の継続処方や調剤形態の変更、投与日数修正などを設定したほか、医師への事前確認が必要な項目も定めた。

 

21年度に薬剤師がオーダ入力を支援した件数は年間1万8000件以上。総件数に占める薬剤師の入力率は35%に達している。

 

この業務に対する医師や看護師の満足度は高い。入力支援や持参薬鑑別など薬剤師の病棟業務によって医師の業務がどれだけ削減できたかを聞いたところ、1週間のうち医師1人につき4時間の業務削減につながったという。

 

篠永氏は「医師は処方入力や疑義照会対応の負担が軽減される。看護師では処方漏れの確認や医師への処方依頼の負担が軽減する。薬剤師は疑義照会の負担が大幅に軽減し、薬剤業務の効率化につながる」と各職種の利点を提示。「処方漏れによる内服薬中断が減少し、患者に適切な薬物治療を提供できる」と強調した。

 

眞野成康氏(東北大学病院薬剤部)は、プロトコールに基づいて医師の処方の範囲内で薬剤師が投与量や投与期間の変更を行うことは可能と言及。ある病院で、プロトコールをもとに薬剤師がワルファリンの投与量を調整したところ、出血リスクのある患者の割合が減ったことを提示した。

 

その要因として「それまでは個々の医師が自分の考えで調整していたが、医師と薬剤師が協働でプロトコールを作成したことで標準化が図られた」と指摘。薬剤師が主体的に薬物療法を調整する業務を各病院で推進するよう呼びかけた。

 

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出典:薬事日報

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