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創薬研究に患者の声反映~潜在的なニーズ発掘【中外製薬】

薬+読 編集部からのコメント

中外製薬は、11月より患者さんの声を取り入れた創薬研究を試行的に始めると公表しました。研究開発が進行してからでは剤形や投与法を変更するのは難しく、研究開発早期から患者さんのニーズを反映していく必要があると判断したとしています。

中外製薬は今月から、患者の声を取り入れた創薬研究を試行的に始めた。これまでも臨床開発、市販後に患者視点を取り入れてきたが、研究開発が進行してからでは、患者が望む剤形や投与法を変更するのは難しいことから、研究開発早期から患者ニーズを反映していく必要があると判断した。8日に開催したESG説明会で執行役員の大内香メディカルアフェアーズ本部長は、「研究早期の段階から患者視点の情報も踏まえて創薬を進めることがイノベーティブな創薬である」と取り組みの意義を説明した。

新薬研究開発の早期段階から患者の声を生かす取り組みは、製薬業界で広がり始めている。武田薬品と第一三共は9月、「非臨床研究段階からの創薬活動におけるペイシェント・エンゲージメントのためのガイドブック(改訂第2版)」を作成し、一般公開した。他の企業でも患者との対話を事業に生かす動きがある。

 

同社が進める取り組みは、「患者中心の事業活動」の一環。これまでの患者団体との対話をきっかけに生まれた。「PHARMONY(ファーモニー)」と名付けられ、既に実際のプロジェクトにおいて対象疾患の患者団体と共に試行されている。対象疾患は研究戦略に関わるとして開示していない。

 

同社は、▽医療者視点の疾患にフォーカスした情報は入手できる一方で、患者視点の情報は現状十分得られていない▽患者視点と医療者視点とでニーズに対する認識に乖離があり、顕在化していないニーズも存在すると考えられる▽既にモダリティや剤形が決まっている段階では患者の声は反映されづらい――と課題を指摘し、早期から患者の声を取り入れる必要性を説明している。

 

今回の取り組みにはメディカルアフェアーズが研究開発の早期から関与し、市販後の育薬まで見据えてエビデンスなどの創出を支援していく。

 

「ファーモニー」の今後の取り組み方針について、同社は、「対象疾患領域は限定していない。われわれの創薬研究のアプローチとして、疾患領域を制限せずにアイデアを追求しており、このような活動と患者団体の考えが協調できるところを見出しながら、取り組みを進めていきたいと考えている。(どの程度の団体と行うのかという)数について目標は設定していない。目指す協働は簡単なものと捉えておらず、一つひとつ増やすことができれば」としている。

 

同社では、市販後において患者中心の取り組みが本格化している。血友病A治療薬「ヘムライブラ皮下注」では、患者の求めるエンドポイントは運動や制限のない生活などにあると定め、ウェアラブルデバイスを活用し、出血を防ぎながらどの程度の運動が可能かの検証を進めている。

 

抗癌剤「テセントリク点滴静注」では、副作用管理方法の改善に向け、患者自身に症状などを入力、報告してもらうePROを活用した前向き観察研究が行われている。

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出典:薬事日報

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