【薬価調査速報】市場価格との乖離率7.0%~昨年から0.6ポイント縮小
厚生労働省は2日、医療用医薬品の現行薬価と市場取引価格の開きを示す平均乖離率が、今年9月分で7.0%だったとする薬価調査結果の速報値を、中央社会保険医療協議会薬価専門部会に示した。昨年調査分から乖離率が0.6ポイント縮小した。後発品数量シェアは約79.0%となり、昨年の調査結果から横ばいとなった。
今回の調査は、今年9月取引分を対象に販売サイドから11月4日までに報告があった取引価格を集計。市場規模の大きい主な薬効群別の乖離率を取引金額上位で見ると、内用薬は「高脂血症用剤」が12.7%で最大の乖離率となり、「消化性潰瘍用剤」「血圧降下剤」が11.3%と続き、内用薬全体で8.2%と昨年調査から0.6ポイント縮小した。
注射薬については、「その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)」が7.2%、「他に分類されない代謝性医薬品」が6.3%、「その他の腫瘍用薬」が4.7%となり、注射薬全体では5.0%と0.6ポイント縮小した。
外用薬を見ると、「鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤 」が9.1%、「眼科用剤」が8.7%、「その他呼吸器官用薬」が7.2%となった。外用薬全体では8.0%となり、0.1ポイント拡大した。
薬価調査結果について、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「平均乖離率は前回より低くなっているが、投与経路別、薬効別で見ても極端に変化はない。後発品のシェアも少なくとも後退していない」と適切に行われたとした上で、「新薬、後発品、長期収載品の乖離率がそれぞれどのような分布になっているか丁寧に見ていく必要がある」と述べた。
安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も「平均乖離率、回収率、妥結率などは例年並みと感じている。通常通りの薬価改定が可能とのデータが示されたのではないか」との考えを示した。
物価高騰などによる医薬品の安定供給不安が生じていることについては、「調査結果を踏まえると、診療報酬改定以外の形で何らかの財政的支援を講じる必要はあるとは考えるが、今回の薬価改定で特別に配慮すべき事情があるとまでは言えない」と語った。
一方、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「前回の中間年改定と比較して新たな課題も露呈している。安定供給に支障が生じる中で、一律に6年連続で薬価が引き下げられると、医薬品の供給に致命的な打撃となり、国民の命と健康に重大な影響を与える懸念がある」と主張。「前回2021年度改定の対象範囲をそのまま踏襲することに合理的な根拠はない」と断じた。
有澤賢二委員(日本薬剤師会理事)は、「後発品の数量シェアが伸びていないのは医薬品の安定供給に支障が生じているから。新規収載の後発品に積極的に転換を図っている現状にあっても伸びていない」とし、中間年改定を実施する場合でも平均乖離率を超えた品目に限って実施するよう要求。不採算となっている医薬品については薬価上の緊急的な対応を要望した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
12月2日、厚生労働省は、医療用医薬品の現行薬価と市場取引価格の開きを示す平均乖離率が今年9月分で7.0%だったとする薬価調査結果の速報値を、中央社会保険医療協議会薬価専門部会に示しました。昨年調査分から乖離率が0.6ポイント縮小しており、後発品数量シェアは約79.0%と、昨年の調査結果から横ばいとなっています。診療側の長島公之委員は「前回2021年度改定の対象範囲をそのまま踏襲することに合理的な根拠はない」と述べており、物価高騰などによる医薬品の安定供給不安などが注視されます。