処方せん

リフィル処方箋発行率低く~医師の信頼獲得がカギに

薬+読 編集部からのコメント

リフィル処方箋の発行が進まない要因として、医療機関の収入減となることに加え、医師側には次回診察までの患者マネジメントを薬剤師に任せられないとの考えがあることが、リフィル処方箋をテーマにしたシンポジウム(2月4~5日=近畿薬剤師合同学術大会)において現場の薬剤師から指摘されました。さらに薬剤師が患者の状態を把握しやすくなる規制の緩和や整備、医師の診察後に薬剤師が行える専任事項の創設を求める声も挙がっています――。

近畿薬剤師合同学術大会が4、5の両日、オンラインで開かれた。リフィル処方箋をテーマにしたシンポジウムで現場の薬剤師は、リフィル処方箋の発行が進まない要因として、医療機関の収入減となることに加え、医師側には次回診察までの患者マネジメントを薬剤師に任せられないとの考えがあると指摘。「薬剤師には医師の懸念を払拭する業務が求められる」と語った。薬剤師が患者の状態を把握しやすくなる規制の緩和や整備、医師の診察後に薬剤師が行える専任事項の創設を求める声もあった。

 

細谷治氏(日本赤十字社医療センター薬剤部長)は、自施設のリフィル処方箋発行割合は全体の0.27%にとどまり、全国的な調査と同様に低い発行率になっていると報告した。

 

リフィル処方箋をめぐって各所から様々な声が聞こえてくるとして、受診頻度の減少は医療機関の経営にマイナスになることや、症状悪化を見逃すことへの医師の懸念は根強いことを提示。医師は、診察のない期間の患者マネジメントは薬剤師の役割の範疇を脱していると思っており、「薬剤師には任せられないという感覚が強い」と指摘した。

 

細谷氏は、こうした懸念に対して、「薬剤師側が薬物治療中の患者モニタリング、受診勧奨、トレーシングレポートなどについてしっかりできていないと、患者からも医師からも信頼されない」と強調。

 

患者のモニタリングを行うため、薬剤師が低侵襲、低コストで患者の状態を把握できる手段は増えつつあるものの、「一部、法的なハードルがある。ここを何とかしなければならない」とし、規制の緩和や整備を呼びかけた。

 

多田耕三氏(グリーンメディック薬局)は、リフィル処方箋の発行が進まない本当の理由は「医療機関の収入低下ではないか」としつつ、医師の懸念として、診療間隔の長期化による状態悪化の見逃しや副作用発見の遅れ、患者状態に応じた用量調整ができなくなるとの声があると報告した。

 

医師の懸念に対し「医師の診察後の情報管理と情報解析は薬剤師の役割」と述べ、「リフィル処方箋制度を軸に、医師の診断後に薬剤師が行える専任事項を設けるべき」と提案した。

 

米国アリゾナ州の病院で働く薬剤師の山田昭子氏(チャンドラー地域医療センター)は米国のリフィル処方箋制度の概要を紹介した。米国の処方箋の有効期限は1年間。30日処方でリフィル11回、90日処方でリフィル4回などの形で処方箋が発行される。

 

精神的依存性が高い医薬品は5クラスに分類され、処方箋の有効期限やリフィル回数が制限される。クラスIIに位置するモルヒネ、オキシコドン、メサドンなどの処方箋の有効期限は90日間で、リフィルは不可。クラスIII以下の医薬品の処方箋有効期限は6カ月で、リフィルは5回まで。クラスIIの医薬品でも、薬剤師が依頼し医師が承認すれば、診察を受けなくても処方を更新できるという。

 

山田氏は、リフィル処方箋のメリットを「患者の時間やコストの削減になる。診察の一部負担金が20~50ドルかかるが、その削減は患者にとって嬉しい」と言及。米国の医師はリフィル処方箋制度が収入減につながるとは捉えておらず、「リフィル処方箋がないと仕事が回らない。リフィルを頼りにスケジュールを立てている」(山田氏)状況だ。

 

薬局にとっても、薬剤師が次回診察までの間に深く関わることで、かかりつけ薬局の位置づけが明確になる。リフィル処方箋は急な対応を必要とせず、状況によって後回しにできるため、業務効率も高まる。

 

山田氏は、医師の定期診察がなく患者の精神的不安が大きくなる可能性があるとし、「薬剤師ができることは患者の頼れる医療相談者になること。自身の知識や経験を深め、より鋭い勘が働くようにトレーニングするのが重要」と語った。

 

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出典:薬事日報

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